3.「わたし」いつの日か電車に揺られて。
嵐が来るらしい。
昨日の夜から雨が降りだしたけど
朝家を出るときにはやんでいた。
今日は電車でちょっと遠出。
もちろん、現実の「わたし」として。
電車では本を読むのが好きだ。
でも昔からそうだった訳じゃない。
一生懸命小さな画面の小さな世界で
迷子になったみたいに時間を潰さなくていいから、なんだか安心するのだ。
本がないと、ちょっと不安になる。
ふっと本の世界から目を上げると
雨に濡れた知らない町に出会った。
連なる家々の屋根。
すっと伸びた坂道。
遠くの方まで見えて、ドキドキした。
あぁ、わたしいつか電車で
もっともっと遠くの町まで旅をしたい。
知らない景色に出会いたい。
本だけを鞄に数冊つめて
行きたい。行ってみたい。
今年の夏はどこかへ行こう。
時間があったら、勇気を出して1人で。
気がつけば、外はまた雨が強くなったみたいだ。窓が濡れてる。
川が怖いくらいごうごう流れてる。
本当の夏はもう少し先。
でもきっともう、すぐそこにいる。
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