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84.ねぇ、もしもこの電車の行く先が世界の終焉だとしたら


ねぇ、もしも
この電車の行き先が世界の終焉だとしたら
それでもあなた、わたしと一緒に
行ってくれる?

気がつくと乗り合わせてた電車には
どうしてか君と僕しかいなくて
君の被る麦わら帽子の影が
その表情をより曖昧に
大人びたものにする。

車窓から見える景色は
いつの間にか夕焼けに変わっていて
橙色が海に眩しいくらい反射していた。
この美しい景色の果てには
本当に、世界の終焉があるのではいかと
そんなような気さえした。

こないだまで一緒に影踏みをして遊んでた
もうひとりは、もういない。
二人して踏んだあの子の影に
飲まれそうになったからだ。

だから、逃げるように走って
それで、この電車に乗ったのかもしれない。

君が心に負った傷に
似た傷をたぶん僕も負っていて
お互い直接言葉にはしないけど、
いたわりあう空気がそこにはあって。
けれど、触れてはいけない、何かもあって。

もう大丈夫だよ。
もう、あの子への追悼は終えたことにしよう。
この美しい世界の果てに終焉があるのなら
そこに着いたとき僕ら
もう一度生まれなおそうよ。

だから

ねぇ、もしも
この電車の行き先が世界の終焉だとしても
それでも僕は、君と一緒に
行きたいんだ。

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84/100 「影」

3人で仲良しだったはずがいつの間にかひとりの闇に当てられ壊れ、2人して逃げた。なのに、2人してどこか罪悪感に飲まれていた。



「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦中。

http://kuusouya.web.fc2.com/Story2/h_100.htm

一人称替え、部分抜粋、アドリブOKです。

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