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82.雪の日の電話は空のあなたと。

おじいちゃんが亡くなったのは
雪の降る晩のことでした。
せっかちなおじいちゃんのことだから
49日を待たずして、おばあちゃんも連れて行ってしまった。

おばあちゃんを送り出す時に
雪を降らせたのは、おじいちゃんでしょ。
雪雲に乗って、迎えに来たのでしょ。

だから、雪の日には、
きっとおじいちゃんがこちらに来ているのだと思う。
雪雲に乗って、会いに来ているのだと思う。
大好きなおばあちゃんもきっと一緒だ。

見えていますか、聞こえていますか。
どこかで。見えないけれど側で。

ふっと時折、アドレス帳の中に消せないままのあなたの名前を見つけると、
当たり前のようにまだ、電話が繋がるのではないかと
そんな空想をします。

コールは3回。

もしもし、おじいちゃん。
おばあちゃんも、聞こえる?

久しぶり。元気にしてた?
うん、わたしも、ぼちぼち元気。

時折、お話したくなる。でも、普段はだめね、周りが賑やかで繋がらない。
雪の日だけ。雪の日だけ、まわりの音が静かになるから
やっと特別に、お話ができるの。

ねぇ、いつも見守ってくれていてありがとう。
なかなかお墓参りに行けなくてごめんね。
今年もなんとか、無事に年を越せそうだよ。
親戚みんなで集まっていたお正月が懐かしい。
当たり前に、2人がいた日々が懐かしい。
できるならもう一度手を握りたい。握れないのは分かってるんだけど。
来年も無事に過ごせるように、どうかお力お貸しください。


神様に祈るように、何も聞こえやしないけど
電話の向こうで、聞いてくれているはずのあなたに祈る。

全部真似っこ。分かってる。
でも、言いたいのです。当たり前に、あなたが生きているように。

あぁ、もう、やっと繋がった。って。

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82/100 「やっと繋がった」
なかなか電話出てくれないから、どうしたのかと思ったよ。って、あなたがいない日々の方が嘘だったみたいに、話ができたならいいのにね。


「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦中。
http://kuusouya.web.fc2.com/Story2/h_100.htm

一人称替え、部分抜粋、アドリブOKです。


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