見出し画像

<不動産仲介ヒヤリハット!>(16)浸水被害は過去にもあった

10/4発売『ヒヤリハット! 不動産仲介トラブル事例集』から、トラブル事例を紹介します。noteの記事タイトルの事例番号は書籍にあわせています。

トラブルの要点

リフォーム済みの既存住宅を購入したところ、引渡しから半年後に地下駐車場に雨水が流入する浸水事故が発生

トラブル発生の概要

買主Yは、売主X(宅建業者)が所有する築12年のリフォーム済み既存戸建(PDFファイル内 資料①参照)を仲介会社Aの媒介で取得しました。
当初、問題なく居住していましたが、引渡し後半年を経過した夏に集中豪雨があり、周辺一帯に浸水被害が発生しました。この住宅の地下車庫(PDFファイル内 資料②参照)にも雨水が侵入し、駐車していた車両は完全に水没してしまいました。
水が引いた後、近隣の居住者と話をする中で、買主Yは、以前にも周辺で同様の浸水被害があったと聞かされました。詳しく知りたくなった買主Yが役所に行って周辺の浸水履歴について確認したところ、10年前にも集中豪雨があり、この住宅を含む周辺一帯で浸水被害が発生していたことが判明しました。
買主Yは、案内時はもとより、契約時の重要事項説明においても浸水被害の事実は説明されていなかったことから、売主X及び仲介会社Aに対して、「過去の浸水被害について説明されていない。簡単に浸水するのは欠陥住宅だからではないのか。」とクレームを申し入れてきました。

トラブルの原因

2020年8月には、宅地建物取引業法施行規則の一部改正により、「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明すること」(PDFファイル内 資料③参照)が義務づけられています。
このトラブルは、施行規則改正以前の取引で発生したものですが、買主Yが近隣から過去の浸水被害について知らされ、役所で容易に浸水履歴の事実を知りえた事実から見ても、法令上の根拠にかかわらず、仲介会社Aとして調資・説明義務を果たしていなかったことがトラブルの原因になったといえます。
また、売主Xは宅建業者であるため、業者売主として、買主Yに対する調資・説明義務があります。売主Xは、中古戸建を買い取り、リフォーム済み物件として売却したため、浸水被害の事実について知らなかったと主張していますが、役所に問い合わせることで浸水履歴の情報を入手することは可能であり、仲介会社と同様に調査・説明義務を果たしていないといえます。

トラブル対応および再発防止対策

本件トラブルでは、買主Yが容易に事実を確認できた過去の浸水被害履歴について、仲介会社A及び宅建業者である売主Xに調資・説明義務の債務不履行責任がある可能性が大でした。
あわせて、買主Yからは、欠陥住宅ではないかというクレームがありましたが、浸水被害が通常の降雨の際に発生したものではなく、集中豪雨のような異常な事態による浸水被害であったことを理解してもらった上で、トラブル解決にあたっては、仲介会社及び売主から謝罪し、仲介会社Aは買主Yから受領した仲介手数料を返金し、売主Xが費用を負担して地下駐車場の入り口に仕切り板を設置することで解決に至りました。
近年、記録的集中豪雨によって冠水や浸水被害が多く発生しています。周辺に河川がなく、一見して浸水被害が疑われる地域ではないようなケースでも、集中豪雨の内水氾濫による被害が発生しています。買主にとっては、購入を検討している物件に浸水被害があるか否かは、購入を決定するための重要な判断要素です。
前述のとおり、2020年8月には宅地建物取引業法施行規則の一部改正により、重要事項説明の対象項目が追加され、仲介会社は、不動産取引時に以下のようにして説明することとされました。
①水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
②市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
③ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
④対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること

ヒヤリハット黄色_黒板 (3)

PDFファイルのダウンロード

画像2

トラブル事例16 浸水被害は過去にもあった

新刊書プレゼントキャンペーン

簡単なクイズに答えて新刊書籍をGet!

名称未設定のデザイン (10)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?