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<不動産仲介ヒヤリハット!>(17)液状化危険度の高い地域に立地

10/4発売『ヒヤリハット! 不動産仲介トラブル事例集』から、トラブル事例を紹介します。noteの記事タイトルの事例番号は書籍にあわせています。

トラブルの要点

購入した既存住宅の立地が「液状化危険度マップ」のエリア内ではないかと買主からクレームが発生

トラブル発生の概要

買主Yは、仲介会社Aの媒介により、売主Xから既存住宅(PDFファイル内 資料①参照)を購入しました。
引っ越してからしばらくして、親しくなった近隣の住民との間で地震災害などの話題が出た際に、「このあたりも液状化が心配ですね」と言われ、「液状化危険度マップ」(PDFファイル内 資料②参照)の存在を知らされました。
買主Yは気になって市役所に行き、備えられていたマップを自ら確認しました。すると、自宅の位間が、地震発生時に液状化の危険性が高い地域にあることが判明しました。
買主Yは、「契約時には液状化のことは何も聞いていない。「液状化危険度マップ」の存在も説明されなかったのは問題ではないか。」と仲介会社Aにクレームを申し立ててきました。

トラブルの原因

仲介会社Aの担当者Bは、「液状化危険度マップ」の存在を認識しており、役所調査において、対象土地の立地場所を確認したのですが、250m四方単位で線引きされたメッシュで区分された液状化想定の地域内にありました。

また、「液状化危険度マップ」については、行政庁等から重要事項として説明を必要とする旨の通達や指導がなかったこともあり、あえて同マップに関する説明を加えていませんでした。

確かに、「液状化危険度マップ」に関する説明は、宅建業法上の重要事項説明(PDFファイル内 資料③参照)の対象として明記されてはいませんが、液状化に関する問題は地盤の土質性状に関わる事項であり、買主にとって、建物の安全性の観点からは重要な事項であるといえます。

この取引において、媒介契約を締結した仲介会社Aとしては、善管注意義務をもって取引にあたる必要があり、液状化想定の地域に立地している事実を認識していたわけですから、買主Yに重大な不利益をもたらす可能性があり、契約締結の可否の判断に影響を及ぽす事項として、その事実を説明すべきであったといえます。

トラブル対応および再発防止対策

トラブルの解決に当たっては、担当者Bの上長から「液状化危険度マップ」の説明が不足していたことを謝罪した上で、「このマップは、南関東地震(震度6強)が発生した際、液状化の危険性が極めて高いとされているものの、250m四方をメッシュに線引きして示したもので、この土地は、危険度が高い地域に立地しています。

ただし、メッシュ内のすべての土地が本来の地盤の強度を反映しているわけではありません。また、このマップに注意事項として記載されているとおり、権利及び義務に関わる事項の資料とすることはできないとされています。」と説明しました。

しかし、買主Yとしては、契約時にこのマップの存在を事前に説明しなかったことへの不信感が強かったことから、最終的には、買主の手数料の一部を減額することで納得していただくことになりました。

「液状化危険度マップ」の有無、内容等について調査説明義務があるとまでは言えません。しかし、仲介会社としては、取引物件について危険度マップ等で危険性等が示されていたときには、客観的正確性には限界があると断ったうえで、公表されている情報について、トラブルの未然防止のために、買主に説明しておくことが必要です。

購入の意思決定にかかわる情報を正しく伝えることは、重要事項説明事項であるかどうかにかかわらず、仲介業者として重要な責務であり、買主の不安材料を取り除くことが無用なクレームを防止することにつながります。

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トラブル事例17 液状化危険度の高い地域に立地

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