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不動産流通実務検定“スコア”に挑戦<今週の一問>2021.11.10「消費者契約法」

企画推進課の奥田です。不動産流通実務検定“スコア”に挑戦!
不動産業界で働く方向けのFacebookページからの転載です。

さて、問題です。

Q. 消費者契約法に関する次の記述のうち、不適切なものを一つ選びなさい。

【選択肢】
1.
消費者契約法は、個人間の取引でも適用される場合がある。

2.
株式会社が保有するマンションを個人のサラリーマンに自宅用として売却する契約において、売主が契約違反をしても(たとえば、移転登記をしない場合)、買主である消費者は損害賠償請求を一切できないとする旨の特約は無効である。

3.
宅地建物取引業者ではない株式会社が保有するマンションを個人のサラリーマンに自宅用として売却する契約において、売主が種類又は品質において契約不適合が発生する場合(たとえば、雨漏りがある場合)でも、買主である消費者は損害賠償請求を一切できないとする旨の特約は、たとえ修補請求又は代金減額請求を認めているときでも無効である。

4.
消費者契約法が適用される賃貸借契約において、借主である消費者に成年後見人が選任されたことのみを理由にして、貸主である事業者が当該賃貸借契約を解除できる旨の条項は無効である。

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あなたのご解答は、いかがでしたか?

「正解」の番号と解説

スコア<今週の一問> 2021年11月10日 Facebookの投稿

不動産流通実務検定“スコア”<今週の一問>、正解と解説です。 

【答え】3

【出題のねらい】
平成30(2018)年消費者契約法の改正内容および令和2(2020)年民法改正に伴う改正内容を問う問題である。

【解説】 
1.適切
消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される消費者契約に適用される法律です(消費者契約法第2条第3項)。
事業者とは、法人のみならず、「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」も含まれるため(消費者契約法第2条第2項)、個人であっても「事業者」になる場合があります。法人化していない個人の宅地建物取引業者は、「事業者」となります。
たとえば、個人の宅地建物取引業者が、自宅を購入するサラリーマンと売買契約をすると、個人の宅地建物取引業者が「事業者」、サラリーマンが「消費者」となるため、消費者契約法が適用されることになります(もちろん宅地建物取引業法も適用されます)。

2.適切
消費者契約法第8条第1項第1号では、「事業者(売主の株式会社)の債務不履行(契約違反)により消費者(買主のサラリーマン)に生じた損害を賠償する責任の全部を免除」する条項は無効であると定めています。要するに、事業者側に余りに有利な契約内容で契約を締結することを阻止しています。
したがって、売主である事業者に移転登記をしない等の契約違反があった場合に、消費者である買主から、売主である事業者に損害賠償請求を一切できないとする特約は無効となります。
なお、消費者契約法第8条第1項第1号のほか、消費者契約法第10条では、包括的に、消費者の利益を一方的に害する不当な条項は無効になると定めています。

3.不適切
消費者契約法第8条第1項では、「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除」する条項は無効と定めているため、債務不履行の一種である種類又は品質に関する契約不適合(雨漏り等)を理由とした損害賠償義務を、事業者から免責する条項は原則として無効となります。
しかし、種類又は品質に関する契約不適合が発生した場合に、事業者が履行の追完をする責任(修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しをする責任)又は代金減額の責任等を負うとの定めがあるときは、例外的に、契約不適合を理由とする損害賠償義務を免責する条項は有効となります(消費者契約法第8条第2項第1号)。
また、売主である事業者の代わりに、契約不適合が生じた場合に、売主と同様の賠償義務若しくは履行を追完する責任を負う旨の保険に加入しているような場合には、例外的に、契約不適合を理由とする損害賠償義務を免責する条項は有効となります(消費者契約法第8条第2項第2号)。
したがって、消費者契約法が適用される売買契約において、売主である事業者側の契約不適合を理由とした損害賠償を免除する旨の条項は常に無効とは限らず、有効になる場合もあります。

4.適切
平成30(2018)年の消費者契約法の改正により、事業者に対し、消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する消費者契約(消費者が事業者に対し物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとされているものを除く)の条項は無効となる旨が追加されました(消費者契約法第8条の3)。借主が老人で、判断能力がなくなったために成年後見が開始したとしても、それだけでは家賃の支払い能力がなくなったと言えないからです。
消費者が借主である賃貸借契約は、「消費者が事業者に対し物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとされているもの」には該当しないため、借主である消費者に成年後見人が選任されたことのみを理由にして、貸主である事業者が当該賃貸借契約を解除できる旨の条項は無効です。

<実務のポイント>

契約書の案文を作成するときにも、一方当事者の意向を反映するときには、他方に過度に不利益な条項にならないようにする必要があります。
消費者契約法では、消費者の利益を守るため、以下の条項は無効とされています。
  ・事業者の損害賠償の責任を免除する条項
  ・消費者の解除権を放棄させる条項
  ・事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項
  ・消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項
  ・消費者の利益を一方的に害する条項

 売買契約や賃貸借契約が消費者契約である場合には、特約を設ける際には、消費者契約法によって効力が否定されるようなことがないかどうか、慎重に検討を加えるべきです。
(参考「不動産流通実務必読テキスト第三版」P225)

©The Real Estate Transaction Promotion Center

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💁‍♀️第9回検定は11/18(木)~ 25(木)実施 (申込みは11/11まで)
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