<不動産仲介ヒヤリハット!>(5)コンクリートガラで杭打ち工事が中断
10/4発売『ヒヤリハット! 不動産仲介トラブル事例集』から、トラブル事例を紹介します。noteの記事タイトルの事例番号は書籍にあわせています。
トラブルの要点
トラブル発生の概要
売主X(個人)は、所有する土地(PDFファイル内 資料①参照)を売却するために、建物(鉄骨造3階建て)の解体を解体業者に自ら依頼して行いました。仲介会社Aの媒介により、2020年5月に買主Yとの間で更地(PDFファイル内 資料②参照)の土地売買契約を締結し、2か月後に引渡しが完了しました。
引渡しから4か月を経過して、買主Yから新築住宅の建築を依頼された建築会社が「杭打ち作業」にかかったところ、旧建物のものと思われるコンクリートガラや鉄骨等が大量に残存していることが判明しました。
「このままでは工事が進められない!」。買主Yは、ガラ等の撤去費用と工事遅延に伴う費用等の増加等について、原因は売主Xの告知説明義務違反及び仲介会社の調査説明義務這反であるとして、損害賠償を求めてきました。
この取引では、売買契約時に売主Xから「旧建物基礎、建築廃材、浄化槽、井戸等の敷地内残存物は発見していない」旨を記載した「物件状況確認書」が交付されていました。
また、この契約では、「契約不適合責任の通知期間」を引渡し後3か月とする特約が付されていました。
トラブルの原因
この土地の地中には、旧建物のものと思われるコンクリートガラや鉄骨等が大量に残置されており、買主Yが建物を建築する際に障害となったことから、取引における「契約の内容に適合しない目的物」に当たり、売主Xに契約不適合責任があるといえます。
ところが、この売買契約には契約不適合責任の免責特約が付されていました。この特約は、売主Xが地中の残置物の存在や地盤改良工事等の必要性を認識していない限り有効と考えられます。
売主Xは、この取引において旧建物の解体及び整地を自ら解体業者に依頼して行っており、解体工事の遂行状況を確認し、埋設物の残置を把握(認識)できる立場にいたにもかかわらず、「物件状況確認書」の作成において、埋設物の残置を認識せずに、土地の正確な状況を告知説明する義務を怠った点が間題となりました。
売主Xが、残置物の存在等を知りながら正確な状況を伝えなかったとすれば、特約による免責は認められず、告知説明義務違反について責任を間われる事態は避けられないこととなります。
一方、仲介会社Aには、売買の目的物である士地の状況を調査説明する義務、重要事項説明義務がありますが、この取引においては、旧建物の解体及び整地作業に関し、売主Xが自ら売買契約前に解体業者に発注して行った上で、更地の土地売買として契約していたことから、仲介会社として残置物の存在を認識することは不可能であり、調査説明義務を怠ったとは言えない状況でした。
トラブル対応および再発防止対策
本件トラブルの解決に当たって、仲介会社Aは、売主に告知義務と「物件状況確認書」の告知内容の不整合について理解を得た上で、売主・買主の主張を調整し、売主Xが地中残置物の撤去費用を負担し、仲介会社としても売主・買主の仲介手数料の一部を減額することで解決することとなりました。
本事例では、解体業者の発注に関して仲介会社の関与はなく、調査説明義務を怠ったとは言えない状況でしたが、仲介会社として、売主に「物件状況確認書」の重要性と売主としての告知説明義務について十分に説明し、理解してもらう点に不足があったためトラブルにつながったといえます。
契約において契約不適合責任の免責を特約にして付したとしても、売主が知っていた情報を伝えなかったのであれば、免責条項は認められないことから、仲介会社としては、取引におけるリスクの存在を十分に売主・買主へ伝えることが重要です。
また、本事例と異なり、取引において仲介業者が解体業者を紹介し、更地渡しの条件で士地売買契約を行う取引は少なからず存在します。その際は、仲介会社として必要に応じて紹介した解体業者と連絡を取り、解体作業の内容を確認するなどして、トラブルを未然に防ぐ手立てを講じる必要があるといえます。
本件トラブルの原因となった地中埋設物は、作業が終了し整地になってしまうと直接確認できるものではないため、引渡し後に買主が建築等を行う際に存在が明らかになることが多く、大きなトラブルや紛争になりやすいものです。地中埋設物が原因でトラブルに発展するケースは、仲介各社の取引において少なからず発生しています。
仲介会社としては、取引の際にトラブルを未然に防ぎ、取引の安全を確保するために、売主が告知した情報以外の埋設物が存在する可能性を認識して、売主及び買主の間で、当該リスクが顕在化した場合のリスク分担(負担者、負担期間、負担範囲、負担金額の上限等)を明確に合意し、その内容を売買契約に明記することが重要となります。
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