枕詞論

枕詞論
虚喩に似ている枕詞は、暗喩の後に位置し、和歌が自在な表現と意識された後にでてきた、効果的表現と考えられる。枕詞は喩的表現の象徴が濃密になったもの、虚喩は拡散したものと受け取れる。象徴性とみると虚喩が押し縮められたものとみてよい。
むしろ上の句が叙景、下の句が叙心の全体の歌謡の背後には、全体喩が心情的に息づいていると読み取るべきではないか。特に枕詞の初源は、地域的空間分布と、時代的時間分布が序列によって基準をたてられる。

①常陸風土記にみられる枕詞は地域の即落の人々の使っていた上った俗謡が、枕詞と受けの地名の組にまで固定化したものと推定できる。無時間的できわめて古い時代に固定化され、まさに風土記編纂時に行われた俗称とみてよい。

②出雲風土記は枕詞と受けの言葉の組は、かなり異質の言語的な要素が、せめぎ合って作られた多様性のように受け止められる。畳み重ねの語法は上代語ではかなり本質的に用法で、声調を整えたり、意味を強調するだけではなく、呪意を加味するとも考えられているり自在に造語が可能でもあった。また宗教的に関連の深い語彙や地名をひとくくりにして表現するなどもあった。
沖縄語は本土に比べて和語の基礎構造をより多く保存し、古語と新語が混融している点で初源性を多く含んでいることが分かる。