吃音の心理的治療:廣瀬カウンセリング

心理的なアプローチから吃音改善に向けた勉強会を開いている廣瀬カウンセリングの勉強会に参加してきました。

参加背景

廣瀬先生は元北海道の少年刑務所の法務教官で、更生のためにカウンセリングを行っていた時に吃音者が吃音が原因となって犯罪を犯してしまうことがあることを知り、吃音を根本的に改善しないと出所してもまた再犯が起こってしまうと考えカウンセリングを専門で始めた方です。40年ほど前から吃音者講習会を始めており、それが今の廣瀬カウンセリングに繋がっています。残念ながら5年前に逝去されてしまいましたが、今では初期の講習会参加者がカウンセラーとなり言友会の団体として月に2回東京で講習会を開いています。他にも札幌教室と函館教室があります。

参加のきっかけは、VRによる吃音治療に取り組んでいる梅津円さん(梅津さんのFacebookページ)とお話をしている時に、これまで私が試していた流暢性形成法(吃音が出にくい話し方を習得する)や吃音緩和法(楽にどもる方法を習得する)のような吃音に対して向き合う治療ではなく、どもっている自分に向き合うことで根本的に吃音を治療する心理的療法があると聞き、是が非でも参加したいと急遽飛び入りで参加させていただきました。

吃音者は根本的に必ず話せる

勉強会の前に事前に吃音の状態や講習の内容についてお話をするためにカウンセラーの方との面談がありました。吃音でどれくらい困っているのか、どういった場面で吃音が出やすいのかなどの基礎的な事項を話すと、「三浦さんに伝えたい大事なことがあります」とカウンセラーの方が1冊の本を渡してきました。小林秀雄の「美を求める心」という本です。

「今からこの本を1段落読んでください。どれだけ吃っても構いません。」

音読はほとんどの吃音者にとって苦手なものです。例に漏れず私も音読は非常に苦手で、1行に2,3回は吃りながらたった5行の文章を読むのに何分もかけて必死に読みました。

読み終わると、カウンセラーの方はおもむろに「今度は私と一緒に読みましょう」と言い、今読んだところと同じ箇所を斉読しました。スピードはそんなに変わらないにも関わらず、1度も吃る事なく全てを読むことができます。頭の中でそのことは知っていたのですが、そこでカウンセラーの方はこう言いました。

「吃音は身体に何か問題があるわけじゃない、現にこうやってスラスラ読めているから。まずはそのことをちゃんと知ること。あなたはちゃんと流暢に言葉が話せる。話をしようとした時に吃ってしまうのはもっと別な要因がある。」

これが廣瀬カウンセリングの根本的な考え方です。吃っている時に自分に何が起きているのか、何を考えていてどこに力が入っているのかなどを客観的に考えることによって、流暢に話せる状態の自分をいつでも出せるようにするのが廣瀬カウンセリングの特徴になります。

勉強会

勉強会では「美を求める心」(小林 秀雄著)と「春の日冬の日」(岡潔著)を音読し、その内容についてみんなで議論しあう形になります。カウンセラーの方が2-3名と受講者が4,5人くらいで挙手制でディスカッションを行いました。学生は自分だけで、社会人の方や定年した方などかなり幅広い年齢層の方が参加していました。カウンセラーの方も以前吃音者で受講していた方なので部屋の全員が吃音者というかなり稀有な空間だと思います。その中でもやはりカウンセラーの方は「少し吃るのかな?」とすらも思わせない流暢ぶりで、昔どもっていたとは考えられないほどでした。

読む教材も特徴的で、見たり聞いたりといった身体的動作も自覚と練習によって研ぎ澄まされるといった内容を野球選手の選球眼などを例に挙げて述べた内容でした。人によって感じ方は様々ですが、吃音も手足と同じ自分の体の一部であり、練習によって上手く使えるようになると考えられると思いました。

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