僕と約束の千年樹 #架空ヶ崎高校卒業文集

2019年
3年FF組 天気輪雅楽

卒業を控えて思うことは、ついにここまで来た、という感慨です。
毎日の放課後の行動選択では、必ず、「約束の千年樹の伝説の調査」を選び続けました。途中、一瞬だけ、同じクラスの悪役令嬢の操さんに心が揺らいだことも有りましたが、初志貫徹しました。
その甲斐あって、虚像祭を前に、「千年樹の幽霊」にたどり着いた時は飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。悪友の(実は女子らしい)智也が言うには「このシナリオを開放したのはきみがはじめて」とのことでした。ただ、本家生徒会顧問の浦賀有先生(いつもアロハの飄々とした先生は女子に人気があります)には「《彼女》は存在しないよ。千年樹に夢を見た生徒たちが見た、ただの幻だ」と釘を差されました。でも、存在しない、なんて些細な欠点です。それに、これで、僕にはできることがある、と思うことが出来ました。僕は彼女に、存在をあげたい。
それからの毎日は挫折の連続でした。伊那井原さんと千年樹の下で会話を続けるにつれ、彼女の意思はゆっくりと明確になっていきましたが、この世に存在する方法は全く見当がつきません。僕は、ただ悲しませるために彼女を目覚めさせようとしているのでしょうか。心がなければ、存在するよすがすらないけれど、それを嘆く悲しみもありません。
転機は虚像祭でした。僕は他の誰とも好感度をあげていなかったので、誰に頼ることも出来ません。前夜祭で泊まり込んでいた僕は、何故か誰かに入り口の封印が解かれていた地下図書館の一つに迷い込みました。そこで「調べる」したところ、「千年樹の伝説」の後半、願いを叶える盃のことを知ることが出来ました。でもその代価は、僕の存在が消えることでした。存在には存在を。言われてみればしっくりするロジックです。
僕は盃を手に入れてどうするのか迷いながら、虚像祭の当日、盃の守り手と対決すべく、それまでろくに話をしていなかったみんなに頭を下げて、「信頼の雫」を集めました。最後の最後まで迷いは有りましたが、対決の前に彼女と話して、心が決まりました。対決は一瞬で、盃は手に入れることができましたが、僕は今日まで昏睡状態でした。
いま、卒業式を明日に控え、僕は願いを叶えようと思います。
最高のハッピーエンドのスチルは、もうすぐです。

伊那井原さん視点から見たルートはファンディスクに収録され、そちらでは、このエンドの「その先」が描かれることに。

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