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Kぽ的和声IIIとTWICEのIVm

個人的にK-POPらしいと感じる和声がありまして…

|E|G#|C#m|Am|
|I|III|VIm|IVm|

3,4小節目はやや適当で、重要なのは1,2小節目です。I→IIIという流れを聴くと、どこか胸をぎゅっと締め付けられるような感覚があって、「胸キュン」よりも強い「胸ぎゅぅ~っ」といった感覚に迫られる和声です。

2NE1などYGエンタのバラードでよく用いられているのが印象的ですが、他でもよく耳にします。とくに2012年から13年くらいにかけての音楽番組では、一日に一曲はこの進行の曲を耳にしたような気がします。

なので個人的にこの進行をきくとK-POPらしいな~と思うのです。

管見では、J-POPではあまり使われていない気がするのですが、どうでしょうか。韓国よりも相対的に強い感情表現をさける日本ならではともいえるかもしれません。

古い曲ですが、日本のポップスで私の記憶にあるのは憂歌団の「嫌んなった」とゴダイゴの「銀河鉄道999」です。

憂歌団はいわずと知れた日本屈指のブルースバンド。まさに人生の憂さをや苦味をしゃれっ気とユーモアとともに歌い上げるこの曲のカギは、まさに2小節目のIII。「いなんなった~もぉだめだ~」の「もぉだめだ~」のところ。ここでぐっと人生の辛みが胸にこみ上げてきます。

999の方も、冒頭、「さあゆくんだ、その顔を、あげて」がI→III→VIとつながっていきますが、瞳いっぱいに涙をぐっとためた主人公哲郎の顔が思い浮かぶような感じです。ただ、この曲の場合、この部分は冒頭の「つかみ」のような役割にすぎず、サビにいくにつれてよりポジティブな夢や希望を表現する進行になっています。

ゴダイゴ999の方が、その後のJ-POPにつながっていくような曲想であり、憂歌団の方はやや「おじさんくさい」というか(もちろん私は大好きですが)、あまりその後のJ-POPに引き継がれていかなかった曲想のように思います。

一方でK-POPで使われてきたI→IIIは、憂歌団的な使い方に近い気がします。つまり、K-POPのI→IIIは、韓国社会がもつブルース的感性の表れともいえそうです。よく言われる「恨・ハン」の思想などにもつながるのかもしれません。

しかし、この1,2年ほどK-POPでは、このI→IIIがあまり使われなくなってきたような気もします。

例えば、いま大活躍のTwiceのOOH-AHH。今年大活躍だったブラックアイドピルスン作曲のこの曲の肝になっているのは、I→IVmの進行。

一人夜空を見上げるかような、幻想性と切なさを持った和声。IIIに比べると明らかに情感は弱く、まさに「胸キュン」的。強い情感よりも、洒落た都会的なスマートさがソウルを中心により好まれるようになっていることを反映しているのかもしれませんね。

歴史に「もし」はないと言われますが、もしもTwiceが3年前にデビューしていたらこんな和声の曲になっていたかも…

原曲はI→IVm→I→IVmとなっているところを、I→III→I→IVmに変えてみました。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、原曲よりも強い情感が出ていると思います。胸キュンではなく胸ぎゅ~っに。

あと実は、前にノートで紹介したOh My GirlのCLOSERにもI→IIIが含まれているのですが、こちらはIV→I→III→VIと、微妙にずれた場所で使われていて、これがうまく幻想性と情感とをミックスさせた雰囲気を生み出しています。

この曲の作家は海外のチームですが、恐らく韓国でうけるI→IIIを使いつつ、IVを冒頭に挿入する事で、幻想性を追加することで新しさを出しているのだろうと思います。

IIIをIVmに変えたOOHAHH、IVを冒頭に入れたCLOSER、ともにK-POPのこれまでの流れを継承しつつも、今の韓国の空気に対応させながら曲を作っていることがわかり、とても面白いです。

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