SHINee'OddEye'の楽曲構造・宇宙編
前回の記事では、SHINeeの'Odd Eye'について、ジャズ的なアプローチが可能な和声構造について分析をしてみました。
この記事で言及したジャズ的なII→V→Iを軸とした和声は、機能和声法と呼ばれる理論体系にのっとって理解できますが、Odd Eyeはもうひとつの隠された和声法の方向からも理解できます。
その裏和声法とは私ぱんちゃが勝手に名づけ、似非カルト音楽理論として布教を試みている「宇宙和声」です(笑)。
あらためてOdd Eyeを聴いてみましょう。
冒頭のストリングスの奏でるハーモニーからして、何とも言えない宇宙を漂うような浮遊感がありますね。II→V→Iの連鎖として機能和声的に解釈したモダンジャズバージョンでは、この浮遊感が完全に消えてしまいます。
宇宙的な浮遊感がなくなる代わりに、地上でうごめく人間の感情のひだのようなものが前面に出てくる感じになっていますね。
逆に宇宙和声的な特徴をより拡大解釈していくと、どんなアレンジができるでしょうか。例えば、60年代後半に展開したサイケデリックムーブメントのあたりのロックの世界に近づけると、こんな感じになります。
今度はモダンジャズバージョンとは逆に、原曲の持つエレガントさや洒落た情感のようなものが消えてしまい、あっけらかんとした明るい浮遊感・スケール感が漂っています。
アルバム『サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド』のあたりのビートルズ、あるいは『ペット・サウンズ』あたりのビーチボーイズといった感じ。アルバムOdd Eyeでの紫を基調とするヴィジュアルイメージにもぴったりですね。
和声はかなり原曲と異なっていますが、CメジャースケールとCマイナースケール(あるいはEbメジャースケール)を行き来するような「転調」そのものの効果が曲を支配している点で、実は原曲と似た構造です(このようにコンパクトな転調によってスケール感を得る和声的手法を「宇宙和声」と私は表現しています)。
ひとつの楽曲なのに、このように複数の理論枠組みで説明できるのというは、とても面白いですね。Odd Eyeはそのような意味でとても奥深い曲です。