虚 離
継続は力なりと言う言葉がある。
確かにそうなのかもしれない。
でも私という怠け者の人間に、その言葉は
不向きだと思っていた。
続けなきゃ!とか続けるぞ!とばかりに
意気込んだ時ほど続いた試しがなかった。
よくよく自分を振り返ってみると
どうやら自分で自分にプレッシャーをかけ
気負いし過ぎてしまったあまりに息切れしまっていた様だった。
それから続けようと思う事を辞めて、辛いとかキツイとか思うよりも、たとえ小さな事だったとしても出来るようになった時の楽しさを集めていったら、気がついたら続く様になっていた。
多分…私には継続は力なりと言う言葉より
探究心は継続力だったと言う言葉の方が
どうもシックリとくる様に思う。
それまでの私は何かにつけて怒鳴られて育ってきたせいか、間違う事は限りなく悪い事よりの、いけない事と思っていた。
罪悪感が全くもって分からないと言うのも困りものだけれど、何処か果てしない罪悪感と
自暴自棄だけに苛まれている様な感覚を持っていた。
でもある日、思春期真っ只中だった私に転機が訪れた。
エレクトーンを習い始めて何年目だっただろう。ランクが上がるにつれて指導してくれる先生が何人か変わっていった。
私が通っていた楽器店で最高ランクのライセンスを持っている先生から指導を受けられる様になってからだったのだけれど、ある日
レッスン中に先生から「堂々と間違ってくれてありがとう。」と言われて、頭に雷が落ちてきたかの様なカルチャーショックを受けた。
それまで、自分のレッスンの順番を待合室で待っていると、防音室にはなっているけれど
先にレッスンをしている別室でのドアから金切り声が微かに聞こえ、レッスンを受け終わ生徒さんは、泣きべそをかい出てくる。
当時、特にピアノを習っていた子はスパルタが当たり前の様な所があったのは否めなかったけれど、流石に私が教わった先生に、そこまでスパルタな先生には当たらなかった。
だからと言って、それまで間違えれば怒られるのが普通と思っていた私にとって、「堂々と間違ってくれてありがとう。」といわれた時には面を食らってしまって、どんな顔していいか分からなかった。
別に先生も嫌味で言っている訳ではない事も
顔の表情や口調から理解できる。
すると先生は、こう話してくれた。
「何人も生徒さんがいるけれど、間違いを隠しちゃう生徒さんが結構いてね、間違いを正してあげるのが先生の役目なのに、本来ならまずは譜面どおりに弾ける様になる事が先決で表現力は二の次なんだけれど、うろ覚えだったり自分でも怪しいと思っていたり、どうやっても指が回っていなかったりする所になると、あたかも表現力があるかの様に装って隠しちゃうものだから、出来るだけ早い段階で修正ができれば変な癖とか伸び止まる事もないんだけれど、バレなきゃいいやで、そのまま身体が覚えてしまうと、後から修正や矯正をしようと思っても、直す事の方が難しくなってしまって先生も困ってるんだよね。」
と教えてくださった。
昔の言葉でいうのであれば虚仮威しと言うのだろう。
その話しを先生がしてくださったお陰で
私の中で間違わない方がいいのは確かだけれど悪い事ではなく、隠してしまう事の方がよっぽど良くない事に至った。
勿論、発表回やランクテストの時は、
一度、演奏を初めてしまったら途中でトチってしまっても最後まで何があっても止まらずに演奏をし切らなくてはならなのがルール。
もしその先生に出会っていなかったら、
今でも私は間違える事は悪い事と思って、
どこか怯えて生きていたかもしれない。
よく、量をこなさなければ質は上がらないと言われたりする。あながち間違いではないけれど、質を上げるための課題が見つからないままでの同じ繰り返しなら意味はなく、
確かに自分がかけたいだけ時間をかけて仕上げるならプライベートでやってくれよと言う話しになる。
仕事となれば期日があるのは当然だけれど、
だからと言って先にスピードを求めるやり方を教える人もいます。
それも間違いとは言い切れないのは確かだけれど、それはすでにある程度のレスポンスがある人を集めなければならない場合や、集まる様なイベンテーターとかイノベーターと言われる様な人達には適応すると思うけれど、
まだ右も左も何処から手をつけていいのか分からない様なビギナーさんにスピードから教えてしまうのは、10人いて1人か、良くて2人生き残れば良い方で、伸びる人と潰れてしまう人が極端になり過ぎてしまう所があり、個人的には百害あって一利なしと言い切りたくなる気持ちになるくらい迷惑な話しです。
有名人が言っているのなら、あの人が言っているのなら間違いないとばかりに、どの段階で適切なのか自分で見極めも出来ないままスピード重視からの指導はあらゆる面での損失も大きく危険行為でしかないので、腹立たしささえ覚えるほどです。
ビギナーさんには、まずは1つ1つの作業や業務を丁寧な仕上げをする事を覚えて几帳面さが身についてくるにしたがってスピードも上がってきて、タイムトライアルもできる様になるのが自然です。
慌てさせてミスや失敗を誘発させてしまう様なスピードありきで挑発する様な真似はやめて頂きたいです。
虚仮威しに乗ってしまうのも頂けない。
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