看護師になって1ヶ月

国家試験を終え、引っ越しをし、せっかく上京したのにコロナのせいで引きこもり生活をしていたらいつの間にか4月1日になっていた。

大学病院の講堂で、私はICUだったよ〜、希望通りオペ室だったよ〜、など名前も知らない同期が楽しそうに会話をしている中、「消化器外科病棟に配属」と書かれた辞令を眺めて、どこか他人事でぼーっとしていた。

しかし、他人事精神は病棟に出た瞬間崩れ去った。今日から配属になった新人さんです、と師長が病棟のメンバーに紹介し始めて、後戻りできないんだなと実感した。本当に看護師になってしまったんだ、と。

そもそも私は看護師になりたかったのだろうか。ほぼ母子家庭みたいな家庭環境で、看護師である母親が女一人で私たち3人兄弟を育てているのを見て、これなら金に困らないのかと思った。理由はそれだけだった。あとは何となくかっこいいから。仕事何しているの?と質問された時、OLというより、看護師だよって言った方が、なんかかっこいいじゃん。

最初の動機はそれくらいだった。そのまま時は進み、高校では数学なんてアレルギーになりそうなほど苦手なのに理系生物コースを選択(医療系希望の人は大体ここを選ぶ)し、大学の看護学部に進学し、とトントン拍子できてしまっていた。

看護師になりたい意欲が周囲に比べて低いのは目に見えていた。だから大学の実習を経験して看護師になることを諦めるのではないかと思っていたけれど、幸か不幸か、昔から勉強するということが嫌いではなかったので、コミュニケーション面では苦労することがあったが、実習そのものは割とすんなり乗り越えてきてしまった。

そして就職先なんて特に興味がなかったため、恋人が東京にいるし、電車の時刻表見ないで生活できるから自称ADHDにはもってこいだと思って、適当に東京の大学病院の就職試験を受けた。インターンはおろか就職説明会すら行ってないのに受かってしまった。

国家試験も、落ちたらミスドでバイトしようとか軽く考えてたけど、しっかりとストレスで体調を崩し、それなりに点数を取って合格した。

こんな感じでやりたくないなあ、全部どうでもいいなあとか思っていたのに物事はうまく進んでくれて、気付いたら本当に看護師になっていた。


師長に紹介されながら病棟の顔ぶれを見ると、眉毛が細くて夜会巻きの人、マツエクバッサバサでまつげにペン乗せられそうな人、目つきやばい中年女性等、今までの実習で接してきた、いわゆる「地雷」っぽい見た目の人たちばかりで、話してもいないのに「終わった。」と思った。

教育担当者2人もその場で発表された。どっちも10年目以上の大ベテラン。アホか。10年も働いてたら新人の頃の気持ちなんて皆無だし、自分たちより10倍の経験値を持ってる人に指導されるのか、とゲンナリだった。(予想通り13年目の主任補佐の教育担当は大地雷)

そこから先は光の速さで毎日が過ぎていった。右も左も分からないまま病棟で1日を過ごして、クタクタになって帰宅。ご飯作って入浴して、秒速で寝た。寝て起きて出勤するだけで精一杯。お弁当作って出勤しているだけで超偉い!と思ってたし、今もそう思う。

でも、さすがに1ヶ月病棟にいれば、できることが増えてきた。患者さんを受け持ったり、ナースコール対応したり… 実習で見てきた看護師っぽいことを自分がしているのが少し違和感だが、ちょっとずつ板についきた、と思う。無論わからないことが9割で、毎日何かしらで怒られるが、想像していたより辛くはない。この世にしんどくない仕事なんてないし、学生時代のバイト先で、元恋人にパワハラされてた時よりだいぶマシな労働環境だと思う。初任給もバイト代3ヶ月分くらいもらえてホクホクだしね。

お母さんみたいに患者さんのことを第一に考えて行動できる看護師にはまだまだ及ばないけど、なんとか働いていけそうです。

自分は負けず嫌いなくせに不器用だから、同期に比べて手技が下手くそだなあとかここうまくできたらなあと落ち込むこともあるけど、人は人精神で自分のペースで頑張っていこう。


来月の目標:「挨拶・報告・連絡・相談・確認」4月でなんとなく流れは掴めたから、来月はこの5つを漏れなく実施できるようにしよう!特に報告。まだ一年目でなんもわからないんだから、少しの変化、疑問点、自信がない事柄については全部報告。報告しないで後から怒られるより先に言っといた方が身のため。



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