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深圳の無人コンビニも色々種類がある。その種類と、役割とは?

深圳で営業している無人小売には、複数の種類があり、WellGoや未来商店の他に自販機型の無人コンビニ百鮮Go、Alibabaが出資している無人スーパー盒馬鮮生等がある。

本稿では無人コンビニとして、WellGoと未来商店について扱う。この二つは、全く別の会社が運営している別のブランドだ。共通点は、両者とも実験店舗であり、未だ量産体制に入ってない点。

WellGoは、AmazonGoに近いもので、商品を店舗外に持ち出すと、口座からお金が引き落とされる仕組みを採用した典型的「無人コンビニ」。一方で、未来商店は、店内のタブレットで注文した食べ物やドリンクがロボットによって調理され、配膳、下膳される機能がメイン。これに日用品を販売する機能が追加されて「ロボットコンビニ」だ。

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① WellGo **

米国で実験店舗として展開するAmazonGoの無人スーパーでは、壁や天井が無数のカメラで覆われており、これらが顧客の販売行動を認知することで、顧客が商品を店外に持ち出した時点で、口座から代金が引き落とされ、決済が完了する。販売としては、無人店舗であるが、セキュリティには人間を採用しており、ガードマンが常駐しているのは、皮肉だ笑。しかし、店外へ持ち出すだけで、決済が完了するのは、ネクストレベルのユーザー体験と言っていいだろう。

一方で、 深圳に1店舗のみあるWellGoも、AmazonGo同様に実験店舗であり、天虹商場(Rainbow Department)が実験的に展開する無人コンビニである。天虹商場は、百貨店経営のほか百貨店内の高級スーパー事業を主たる事業としており、無人レジの導入など、当初から無人かへの関心が強い企業だ。彼らが、提供するWellGoとAmazonGoの最大の違いは、決済方法の顧客体験だろう。AmazonGoでは顧客が店外に持ち出すことで、決済をする。一方、WellGoではロックのかかった店舗に入る際、WeChatで入口のロック解除をすることで、Wechatが登録される。退出の際にも、出口のロック解除は、WeChatで行い、この瞬間にWeChatから出口まで運んだ商品分の代金が引き落とされる。出口では書品をスキャナーの前でかざす必要があるが、これは従来のレジのような読み込みよりも圧倒的に早いプロセスで行われた。WellGoでは、このような決済方法を取っているので、入口と出口が別設置されていて、一つのWeChatアカウントごとにしか入店できないという不便さは残る。(三人で、一人のWeChatで支払う場合は、三人入店できる。しかし、一人一人のWeChatで支払う別会計の場合は、一人ごとに入室、退出の必要がある。)

このため、手順は以下の通り

1. WeChat起動
2. 入り口のQRコードをWeChatでスキャン。店舗に、自分のWeChatアカウントが登録される。
3. 入り口のドアが自動に開く。
4. 欲しい商品を取る。各商品には、少し厚めの紙でできたタグがあり、これが商品スキャンを助ける。
5. 出口の箱に入り、天井にあるセンサーに商品を見せる。
6. ほぼ一瞬で、センサーが持っている商品を特定
7. WeChatでスキャンすると、出口が開く。

このように、書くとWellGoの使用は面倒なように感じるが、そんなことはなく、明らかなる「未来体験」である。筆者も、体験してみたが、非常にスムーズに買い物ができた。ただ、WeChatでドアを開閉するシステムのため、途中で電池切れになってしまうと、閉じ込められて、最悪の思いをしそうだなと思った。

退出時に、商品を認識するために、RFIDという技術を使っているが、これに5円ほどコストがかかるため、WellGoの商品は、割高に設定されているかもしれない。しかし、WellGoは高級スーパーのブランドである上、設置場所も深圳の丸の内として形容できる南山というビジネス街だ。そのため、商品単価が少し割高でも売り上げにはさほど大きい影響はないのではないか?

② 未来商店


未来商店は、名前こそが未来商店だが、コンビによりも無人レストランの意味合いが強いと言っても間違っていないと思う。未来商店の特徴は、店舗に設置されたタブレットで欲しい商品を注文すると、ロボットが調理してくれる点だ。ただ、タブレットからはタピオカや、ココナッツジュースなどの飲み物や、小籠包や中華弁当などの食事のオーダーのほか、一般的なお菓子やペットボトル飲料や日用品も変える。イートインもあり、食事のオーダーが多いため、「無人のレストラン」とも形容できるだろう。特に注目したいのは、その下膳システムだ。イートインには、食事をするスペースは4つくらいある。なんと、食べ終わるとこれまでテーブルとして使っていた表面部が引っ込み、流しが登場するのだ。ここに放り投げられた食器は一気にロボットによって洗浄される。この店舗において、人が直接関わっているのは、清掃のみ。しかし将来的には、この領域についても、ルンバのような自動清掃機にリプレイスされているかもしれない。

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2店舗を利用しての考察。
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・ユーザーとしての、満足度、利便性は有人でも無人でもあまり変わらないように感じた。

→一方で、無人だからといってユーザーに特別準備が必要な訳ではないため、将来的に、無人コンビニが"New Normal"(新たな主流)になる心象的ハードルは低いはず。

→無人であっても、決済端末(WeChat)を使う端末は、一人ずつの利用なので、あまりにもたくさんの人が一度に利用すると、並ぶ必要があるのは、WellGoと未来商店では、従来の有人店舗とあまり変わらない。

・無人コンビニがどれだけ混んでいるかという感覚的情報で、無人コンビニ自体を成功でないと位置付けるのは、避けたい。

→そもそもコンビニは、長い時間空いており、少ない数の商品を購入する場所である。したがって、長期滞在客は少い。さらに、有人・無人関係なく、通常商品の選択から決済まで短時間で起きるので、混みにくい。このため、人が少ないことを判断基準として、無人コンビニが劣っているという批判は、無効だと思う。

・無人店舗は、未だ実験店舗。

WellGoや、未来商店もそうだが、無人コンビニを本業として、開業した事業会社が運営している訳ではなく、二者とも、新規事業の実験店舗だ。スタートアップのリーン開発ー短い時間で爆速で作った必要最低限の機能を搭載したプロダクト(MVP)を市場に放出することで、フィードバックを得て、ユーザーの反応を反映した改善を加えることで、完成品に近づけるーにおける、MVPがこれら実験店舗だ。そのため、未だ不完全であったとしても、批判しすぎるのはナンセンスであり、挑戦し続ける二社は企業の手本だと思いたい。無人コンビニの領域においては、一番最初に駆け出したAmazonGoも、未だ実験段階で、現在の利用で得られるデータを分析することで、より良いオペーレーション、knowhowを獲得しているはずだ。AmazonGoの量産は、まだ始まっていないが、有人店舗で発生する人件費や、無人店舗の利用者数や、メインテナンス費用などを考慮したエコノミクスがあって、ユーザーにとって最も良い選択肢が生き残り、メインストリームになることを願いたい。

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・既存店舗の無人化こそ重要?**

新たに無人店舗を作る企業もあるが、既存店舗の無人化こそが重要と考える意見もある。私も、この意見には賛成だ。既存店舗は、地域によっては、人件費の高さや働き手の少なさから、有人店舗としての営業継続が難しいケースが増えている。これは、特に賃金が上がる夜間営業において言えるだろう。すでに顧客網があり良いロケーションにある既存店舗であれば、夜間のみでも無人化すれば、オーナーの負担軽減にもつながり良いはずだ。実際、ファミリーマートは、無人販売しない商品にカーテンをかけたり、セルフレジやロックのかかる自動ドアなどの導入で、既存店舗を夜間だけ無人店舗にする取り組みを一部店舗で実験的に始めた。この程度であれば、少ない設備投資で無人化できるため、オーナーの負担も小さいはずだ。24時間営業を巡って、コンビニオーナーが苦労する今、日本で最も求められているのは、既存店舗の少額設備投資での無人店舗化かもしれない。


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