果実とパティシエ

私の両祖父母は、愛媛県大三島で温州みかん農家を営んでいました。そんな環境下だった事もあり幼い頃より 温州みかんの素晴らしさを祖父から教えられて育って来ました。
高校卒業と同時に麻布十番にあったフランス菓子のお店に務めた時から私のパティシエ歴がスタートしました。
渡仏修行された諸先輩方からフランスには、地域によって受け継がれて来たその地の産物を使ったお菓子があるんだよ!とそしてパリ市内でも近郊の農家さんが朝市に採れたて果実や野菜を売りに来る事を聞きました。シェフやオーナーは、朝一に出向いて季節のお菓子を考えるのだそうです。その事を確かめたくて渡仏 フランスは、農業大国で他国の多彩な果実も揃う夢のような国でした。
当時私は、加工用の果実の流通経路を持っておらず帰国後素材探しの産地訪問を始めました。大した物量をこなせない一パティシェが最初から農家さんと交渉出来るわけもなく仲間を集めて産地ツアーをする様になったのは、15年程前の事でした。今や私にとって産地の素材を送ってもらい使う事は、普通になって来て居ます。銀座ウエストのシェフパティシエとして務める中 冷凍ストックをしないという方針と旬の果実をタイムリーに商品化するというコンセプトが合致して20年間 沢山の農家さんと出会い 一期一会のケーキを作り続ける事が叶いました。両祖父母から学んだ農作物ヘのこだわりが私自身の取り組みのテーマとなっていったんだと思います。
新たな取り組みとして、2024年2月中より山梨県山梨博物館内のミュージアムカフェ葡萄屋にて県内素材を使った提案をさせて頂きます。
山梨には、桃の匠ともいえる久津間さんや堀井さん 葡萄農家の樋口さん その加工に携わる古屋さんと沢山の友人が居ます。そんな友人達から学びを得ながら新たな取り組みにも着手して行こうと思っております。桃の匠・久津間さんからは、果実は、完熟してこそ本来の美味しさが引き出せる だから果実成熟に合わせられなければ出荷は、出来ないと言われた事があって その意味を考えながら毎年久津間さんの桃を食べ続けて来ました。美味しい果実を選ぶのならば 果実が熟すの待つ ごく当たり前の事に気付かず 買い手の都合だけで考えて発言した事に今では、後悔して居ます。土作りや木の管理 環境変化への対応経験値から導き出す事によって結果が得られる事を学ばせて頂きました。 
山梨の地でと考え始めてから新たな素材との出会いも始まりました、今は、干し柿がテーマ 枯露柿 あんぽ柿 ずくし柿とそれらを融合させたデザートを考えてみたいと考えて居るところです。庭木として植えられて居るかりん 柿と同時期に収穫出来る素材として合わせてみたいと思います。
今後は、無力ながらも最大限農家さんとパティシエの繋ぎ役として歩んで行きたいと考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?