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どこに進むべきなのか 見えない終着点 マルセイユ×スタッド ランス

2月3日 日本時間4:00キックオフで行われた Ligue 1第23節 オリンピック マルセイユとスタッド ランスの一戦。結果から言うと、2-1というスコアでスタッド ランスが勝利し、マルセイユは10位と順位を落とす事になった。今季のマルセイユは23節を消化した時点で9勝4分9敗の勝ち点31と昨季のリーグ戦4位、EL準優勝という成績が嘘のように低迷。移籍市場で効果的な動きを見せられなかった事も響き、復調の糸口を見つけられずにいる。当記事ではこの試合を基に、マルセイユの問題点と可能性に焦点を当てて考察したい。

攻撃的なプレッシングは諸刃の剣

この試合の両者のスタメンはこちら

試合序盤からマルセイユはランスのビルドアップに対し4-4-2の形に変形しプレッシングを仕掛ける。基本的にはコンパクト陣形を保ちつつボールサイドに圧力をかける。この時前線で4対5(5対6)の形を作り、片方のCBからのパスを局面での数的同数を形成する事で奪取する、というアプローチを取っていた。

恐らく、高い位置でボールを奪取しつつ素早くショートカウンターに移るという事がこの試合においてリュディ ガルシア監督が定めたゲームプランだったと考察している。しかし、その夢は儚く砕かれる事となる。何故なのか?それはスタッド ランスのGK、エドゥアール メンディの存在だ。

かつてマルセイユのBチームでのプレー経験もある同選手。彼の最大の特徴はビルドアップ能力の高さにある。ランスは彼をビルドアップ時に有効活用する事で、ビルドアップ時に2人もの数的優位を確保。こうなると、マルセイユの前線の守備ユニットは出て行かざるを得ない為、ボールサイドと逆のSBへのマークを放棄する事となる。するとランスは試合中盤辺りからSBをプレッシングの出口として活用。マルセイユは一気にライン間へ侵される場面を度々創り出され、完全に試合の主導権を明け渡す事となってしまった。

相手ビルドアップの妨害を失敗するシーンが度々増えた事で、マルセイユに浮かび上がった1つの問題点がある。中盤における防波堤の不在だ。この試合で中盤に入ったストロートマンは良くも悪くも攻撃的なプレッシングの象徴のように筆者の目に映った。高い位置を取って相手のビルドアップの阻害に貢献しようという気概こそ見えたものの、本来自分が居るべきポジションを放棄し、マルセイユのCB陣を無防備にしてしまった。無論、彼に責任の所在が全てあるのかと言われるとそううではなく、チーム全体としてこの戦術を選択してしまった事に問題があるのだが。

度々、左SBで起用されたブバカル カマラが気を利かせ、中央に絞って相手の攻撃に対応するシーンは見られたものの、カマラ1人に中盤に空いたスペースのケアを任せるのは無理があるのは言うまでもない。ここはガルシアが戦術的修正を加えなければならない部分の1つだ。

ここまではネガティブな事を書いてきたが、光明もある。ビルドアップの阻害こそ失敗したものの、相手のボール保持からアタッキングサードに侵入する局面では何度か高い位置でボールを奪取し、ランスのゴールを強襲する場面が見られたのは好材料だ(プレーの精度に問題はあったが)

目的の無いボール保持

ここまではビルドアップの攻防等、主にマルセイユの非ボール保持時について取り上げて来たが、ここからはマルセイユのボール保持時について取り取り上げたい。

この試合、ランスは2トップでプレッシングに来た為、マルセイユはマキシム ロペスがCBの横に落ちて3バック気味で、数的優位を保ちつつビルドアップする形を取った。しかし、ここで2つの問題が見受けられた。1つは起点となれる選手の少なさだ。元々、右SBのブナ サールはインテリジェンスに欠け、2ボランチのストロートマンに関してもパスコースを作る動きが見られない。見兼ねたモルガン サンソンが落ちてボールを引き出そうとするが、本来なら裏のスペースをアタックするタスクを与えられているサンソンが低い位置に落ちる為、前線で奥行きが作れない、バロテッリに当てた時のボール回収がスムーズにいかないといった事態に陥る事となる。仮にバロテッリに収まったとしても、ランスの統率されたCB陣を独力で突破する事は困難だった。

また、2つ目の問題点として、そもそもボール保持に明確な目的が存在しない事が挙げられる。この試合でマルセイユを打ち破ったランスには、ウイングがフリーで前を向ける状況を創り出すと言う、ボール保持の明確な目的を持っていた。一方、マルセイユは終始、再現性の無いパス回しを繰り返す。ウイング2枚は効果的な位置でボールを受けられず、スペースを創り出す為のフリーランも見られない。67分にラドニッチを下げ、ヌジェを投入したくなるガルシアの気持ちも分からなくは無い(元はと言えばプランニングの問題だが)

結果的には試合終盤にマキシム ロペスが右サイドで高い位置を取り、シンプルにクロスを配給する戦術で1点を返したものの時既に遅し。無論、フロリアン トヴァンとディミトリ パイェの欠場の影響が大きかったのは事実だ。2人とも、0からチャンスを創造出来るクオリティを持った選手であるのは間違いない。だが、2人が居ても上手くいくとは限らないのは今季のマルセイユの順位が示している通りだろう。

ここまではこのようにピッチ内の部分に焦点を当てて書いてきたが、そもそもスカッドに問題があると言うのも事実。左ラテラル、CB、防波堤となれるMF、補強ポイントを挙げるとキリがない。しかし、ガルシアがピッチ内で最善のアプローチを取っているのかと言われると疑問符が付くのではないか。ビルドアップ時のマキシム ロペスとストロートマンの位置を入れ替える、3バックを採用したロランドのリベロ起用、まだまだ打てる手はあるはずだ。ピッチに終着点を見つけなければ、名門は終着点の無い低迷へと発進してしまうだろう。

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