ストーミング+ダイレクトプレーは何を齎すのか

Bundesligaで、話題にこそ取り上げられないがここ数試合を破竹の勢いで勝ち点を積み重ねているチームがある。ドルトムント?ボルシアMG?バイエルン?等と言う声が上がりそうだが違う。ヴォルフスブルクだ。このチームはリーグ戦の直近5試合で4勝1分と好成績を残しており、リーグでも欧州カップ戦圏内を十分狙える位置に付けている。しかし、このチームは開幕2連勝こそしたものの、一時は6戦勝ちなしの状況に陥る等、決して平坦な道のりを歩んできた訳では無い。この5試合での好成績。これも単なる偶然では無く、理に適った、新たなゲームモデルがチームに根付いてるからこそである。ここではそれについて深く掘り下げたい。

ショートカウンターの鍵は2枚のCF

現在、ヴォルフスブルクは表記上は中盤がダイヤモンドの4-4-2のシステムを採用しており、ゲームモデルはストーミングからの手数を掛けない素早いショートカウンターを得意としている。まず、このチームを語る上で絶対に外せないのが2トップの守備貢献度の高さだ。敵ビルドアップ時には、FW2枚がコースを限定しつつ、相手CBにプレスを掛ける。勿論、そこで取り切ろうと言った事では無く、基本的には相手の中盤でボールを奪取する為に行うと言った物だ。これは一般的なチームでも良く見られる光景だろう。しかし、ヴォルフスブルクのCF2枚に与えられた守備タスクはもう一つある。それは敵チームが自陣内に侵入した局面。ヴォルフスブルクは4-4のブロックを形成して守備を行うのだが、ここで相手からボールを奪取する方法の一つとして非常に重要なのが、CF2枚のプレスバックだ。一度は前線に残り、相手の警戒から外れるが、この後に1枚が猛烈にプレスバックし、相手からボールを奪取してカウンターに移る場面が少なくない。

そして、このカウンター時に2CFに加え、ストライカーとして振る舞えるメーメディ、ボールサイドのインサイドハーフ一枚が相手陣内を強襲し、仕留めるのが一つの攻撃パターンだが、ここで目を惹くのがダイレクトプレーの多さだ。流動的な動きで相手守備を撹乱しながら、フィニッシャーとなれる選手が3枚存在するという優位性を存分に活かしている。

ビルドアップの局面に目を移してみよう。基本的にはSBを経由し、CBから直接ライン間にボールが付けられる事は少なく、無理に繋がずに前線の2枚へロングボールを蹴るシーンも多く見られる。無論、闇雲に蹴っている訳では無い。2トップ2枚は共に空中戦に強く、競り合いで溢れたボールを中盤が奪取して素早く攻めるシーンも多々ある。これは、エヴァートンが行なっているストーミングと共通する部分が大きいと思う。

ブロックを破壊するSB

このチームの課題として挙げるなら、ブロック守備を崩すといった局面での、引き出しの少なさだろう。技巧派のユヌス マッリが出場している場合はまた違うが、そうでないと攻撃がクロス一辺倒になってしまう事も珍しくない。そんなヴォルフスブルクだが、一つだけ単独でブロックを破壊出来る存在が居る事を忘れてはならない。左SBを務める、ジェローム ルシヨンだ。モンペリエから今夏加入し、フランスの世代別代表歴もある同選手だが、身体能力と、1対1の突破力に関しては群を抜いており、単独で相手のブロックに穴を穿つ事が出来る非常に貴重な存在だ。事実上代役不在のルシヨンが、シーズン通して好調を維持出来るかもヴォルフスブルクのシーズンの成否を占う重要なファクターの一つだ。

                                                                     【終】


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