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ボリビア戦の魅力は主導権の攻防にあり

先日行われたキリンチャレンジカップ ボリビア戦。結果から言わせて頂くと日本代表が1-0で勝利した。とは言え、内容に関しては賛否が分かれ、面白くないと言った手厳しい声も各方面から聴こえてきている。と前述してみたが、筆者の感覚では先日行われた同試合は非常に面白かったと言う感想なのだ。正確には奥が深いと言った方が正しいのかもしれない。サッカーは表面の事象だけでは判断出来ないという事を改めて思い知らされた。

ここでは試合中の主導権の攻防に着眼して簡単に試合を振り返ってみたいと思う。

塩漬けにされた?それともさせた?

前半開始から、試合は日本がボールを握る展開となった。対するボリビアは4-4-2のブロックを形成し耐久。ボリビアの選手は試合に入るまでに多少時間を要し、立ち上がりの展開だけを見れば今日の試合はいける!と思ったのが率直な感想だ。

無論、そうは問屋が卸さない。ボリビアの4-4-2ブロックはバイタルの守りにプライオリティを置いているように見えた。捨てるエリアがハッキリしていると言う言い方も出来るだろう。実際、日本の攻め手として1つ見られたのが、右サイドから左の乾へのサイドチェンジ。そこから安西も含めた2人でのブロックの攻略だったのだが、ボリビアはここを意図的に開けている(構造上カバーが不可能)ように見えた。勿論代表チームと言う事もあり戦術レベルが高い訳では無い為、ハーフスペースでサイドチェンジを受ける事が出来た場合には、日本もチャンスを創り出すことは出来ていたが、アウトレーンでサイドチェンジを受け取った場合にはほぼ有効打に成り得なかった。攻撃陣に高さも無い日本は攻め手を徐々に失っていく事となり、ボリビアに塩漬けにされてしまったのだ。

何故、ボリビアは日本を塩漬けにする事に成功したのか?筆者は3つの要因があると考えた。

まず、ボリビアが日本のプレーに対して付き合わなかった事が挙げられる。前述したように、バイタルを最優先でケアし、それ以外のスペースは使われる事を厭わない。日本はブロックを攻略しようと揺さぶりをかけるが、ボリビアはそれに対して何もアクションを起こさない為、大局に変化が生じないのである。

2つ目の要因としては、守備ブロックの微妙な変化が挙げられる。具体的には4-4-2のブロックの前線の2人のうち、14番が少し下がり気味で小林祐希を監視するようになった。恐らく、高い位置からの大きな展開をストップしたかったのであろう。実際、小林が高い位置から大胆な展開をするシーンは徐々に少なくなっていった。ここからの展開をストップする利点としては、前半の序盤に見られたシンプルに裏のスペースを活用する攻撃をさせないように出来る事だろう。更に、副次的な効果として、日本の攻撃陣のライン間での怖さを半減出来る事も見逃せない。小林を封鎖された事で香川が3列目まで落ちてレジスタ的に振る舞うシーンが増加し、ライン間に位置を取る選手の枚数が減ったからだ。

3つ目の要因としては、ボリビアの19番、レオナルドのドリブル突破をチラつかせた事だろう。ボリビアのカウンターに怖さをほぼ感じない前半だった中でも、右サイドハーフとして先発したレオナルドは推進力のあるドリブルで唯一怖さを発揮した選手だと言えるだろう。これによって割りを食ったのが安西だ。試合展開的にももっと大胆なポジションを取って良かったはずの安西が、レオナルドのドリブルのケアに回らざるを得なくなったのは日本側からしたら痛かったのではないか。

この膠着状況を打破する手段として、ボランチの片方の位置を上げるといった方法があるのだが、日本のアクションをスイッチにボリビアがアクションを起こし、ボランチが上がる事で手薄になった後方にカウンターを繰り出してくる可能性もこの段階では否定出来なかった為に、ここに関しては致し方なかっただろう。

上記の要因等もあり、日本がボールを支配しながら前半を0-0で終える展開に。

引き込み、突き放す。コロンビア戦とは同じ轍は踏まない森保監督

後半が開始し、ボリビアはFWの選手を交代。プレッシングの強度も前半とは一転して上昇し、後半で一気に勝負を決めに来ているように見えた。

一方、日本も早い段階で両サイドハーフを交代。中島翔哉と堂安律を投入し、攻勢に出ようとする。しかし、ボリビアに押し込まれる時間帯も続き、このままだとコロンビア戦の二の舞いも脳裏によぎる。ここで、森保監督は安西を下げ、佐々木翔を投入。正直に言うと、筆者はこの交代時、この展開で何故佐々木なんだ⁇と疑問が拭えなかった。しかし、投入して間もなく、日本はカウンターから先制する事に成功。ここで点と線が繋がる。後半、ボリビアが攻勢に出てくる事を見越して、一旦ボリビアを自陣に引き込み、攻撃陣が活躍する基盤となるスペースを創り出す。そして、攻撃面でトップクラスの能力を持つ中島翔哉の投入でカウンターで刺せる陣容を整えた一方、守備の安定の為に佐々木も投入。試合の流れに意思決定の基盤を持っていかれず確実に自らのチームに益となる采配を見せた森保監督は賞賛されても良いと筆者は思っている(つまらないと言うのはまた別問題)

コロンビア戦からメンバーを総取っ替えし、テストの意味合いがかなり強かった同試合。準備期間の少なさとサブ組といった人選的にもチームのメカニズム的な話を求めるのは酷だろう。だが、試合を90分の流れとして見た時に、主導権の攻防において森保監督は確実にボリビアを上回ったのは事実であり、相手とスタメンの違いこそあれそれが出来なかったコロンビア戦を踏まえると、大きな収穫であったのではないかと筆者は考える。そして、この主導権の攻防の魅力がより多くの人に理解される日が来れば、より森保ジャパンを楽しめるのでは無いかと思う


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