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ボルシアMGは空間を使って時間を支配する

ブンデスリーガで今季、1番注目を浴びているのはやはりボルシア ドルトムントだろう。しかし、彼等にも決して劣らないサッカーを見せるチームが存在する。ボルシア メンヘン グラードバッハ(以下ボルシアMG)だ。かつてヴォルフスブルクを2位躍進とDFBカップ優勝に導いたディーター ヘッキングに導かれ、10節終了時点で6勝2分2敗で2位に位置している。ここでは好調を維持する彼等の戦いについて少し紹介していきたいと思う。

今季のスカッド

基本フォーメーションは4-3-3。スターティングメンバーはこれで固定と言う訳では無く、特に人材が豊富な前線は複数の組み合わせを見せる。


自陣からのビルドアップ

基本はボールを丁寧に繋いでビルドアップを進める。GKのヤン ゾマーは足下の技術に秀でており、ビルドアップにも問題無く参加し、ロングフィードの精度も高いため、相手からのプレッシャーの強さ次第では直接前線に正確なボールを送り届けることが出来る。ビルドアップの際自陣では2-3-4-1の様なフォーメーションを取る事が青い。最優先事項は2ライン間のハーフスペースで待つ左右のウイングにボールを送り届ける事であり、道筋に関してはほぼ確実にSBを1度は経由するのが特徴だ。SBに入れた時に、ウイング、ボールサイドのインサイドハーフ(以下IH)と三角形を形成出来ればベスト。また、左右でも若干の違いがあり、右のアザールは左のプレアに比べ、比較的低い位置まで落ちてくる傾向にある。一方、左のプレアは落ちてこない場合が多いが、ヴェントの高いキック精度によってプレッシャーを回避するシーンが少なくない。手詰まりの場合はアンカーやCBから直接ロングボールを蹴り込む場面も。

敵陣内への侵入成功時

敵陣内でのボール保持時も、基本は片方のサイドに寄ってボールを回す事が多い。これには相手の守備ブロックをじわじわと広げられると言った利点がある。ここで、IHの2枚のどちらかにボールが入れられる状況を作る事に成功すれば、2枚のどちらかにパスorウイングがドリブルで仕掛けるのが基本的なパターン。ここでIHに渡った場合、前述のサイドでのボール保持によって得られた中央のスペースが重要となる。この段階で相手の守備ブロックの距離感が広がっている事が多々ある為、IHは簡単にドリブルで前方に仕掛けられるのだ。CFに入るシュティンドルとラファエウのどちら共に2ライン間に落ちる動きは得意としている為、ここでワンツーを駆使して一気に相手ゴールまで迫ろうとするケースも数多く見られる。ここで、突破が困難な場合には、再び上記の手順の繰り返しorSBをスペースに走らせてクロスを上げる。

守備の局面

まずはネガティブトランジションから。ボールを失った時のポジショニングと位置にもよるが、基本は味方の帰陣が終了するまでは縦パスのコースを消しながらじわじわとプレッシング。そこまで即時奪回の意思は見られない。相手のビルドアップに対する守備も同様で、サイドへのパスコースを限定しながらじわじわとプレスを掛けるのが基本原則。決して深追いはせず、中央への縦パスが出た場合にはラインを下げながら近くの選手がホルダーに寄せミスを誘う。相手のミスが無ければ、ボールの奪取するエリアはハーフェイラインより後ろになる事が多い。ハーフェイラインを超えると、4-1-4-1のブロックを形成。ブロックの隙間で相手選手がボールを受けると、近くの選手が最低3人以上で局所的に選手間の距離を縮め、プレッシャーを掛けてボールを奪取する。ここでアンカーはバイタルのケアより、プレッシングに参加する。課題としてはここで取りきれなかった時のバイタルのスペースのケア。ハーフスペースを使われた際のマークの受け渡し等が挙げられる。

ポジティブトランジション

ここがボルシアMGの1つの武器である。基本、自陣でのボール奪取が多くなる為、ロングカウンターを仕掛ける場面が多く見られる。3トップとIHの一枚が一気に相手ゴールへと迫るのだが、決して雑なロングボールを送る訳では無く、ボールホルダーがスペースがある限りはドリブルで持ち上がりながら、相手を引き付けてから他のアタッカーへとショートパスを繋いでゴールまで辿り着くのだ。IHに入るホフマン、ノイハウス、ザカリアはいずれもロングスプリント能力が高い選手達だが、ボルシアMGの選手達の優れている所は別にある。ビルドアップからの攻撃にも通じる所だが、チームとして前方にスペースがあればドリブルで持ち運ぶと言う原則が徹底されているのだ。これが非常に良い影響を及ぼしており、パスで急いで前にボールを運ぶのでは無く、ドリブルでタメを作りながらボールを持ち運ぶ事により、味方のサポートを受ける時間、チームとしてラインを押し上げる時間を確保する事が出来るのだ。まさに、空間を使って時間をコントロールしている。これを実践出来ているからこそ1人でカウンターを完結させてしまう圧倒的な個が不在、ましてやトランジションに重きを置くブンデスリーガの舞台で質の高いカウンター攻撃を繰り出せるのだ。


王者バイエルンが苦しむ今季のタイトルレースを牽引するのはドルトムントで間違いは無い。だが、ボルシアMGは十分ドルトムントの脅威になり得るだろう。ここ数シーズンは思うように行かなかったボルシアMGが、今季終了後、ブンデスリーガで成功を収めていても何ら不思議では無いだろう。ファーレンエルフの挑戦に、これからも注目したい。





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