現代の「ナイト」に出会う
これは、私が英国に留学していたころのお話。
Holidayにはよく庭園巡りをしていた。当然、お屋敷にガーデンはくっついてるので、お屋敷もセットである。
お屋敷と言えば広大な土地。
大体私有地か、ナショナルトラストの管轄になってるわけだが、とにかく広い。そして、英国は何故かそういう場所は、駅からとてもとても遠い。
バス停からも、かなり、遠い。
そして、そのバスはなかなか、来ない。
その日もどこぞの庭園を巡り、バス停から最寄り駅に戻るために、私はベンチに座っていた。
着いた時に帰りの時間見とけよと思われるかもしれないが、行きと帰りだと確かバス停がかなり離れていたんだ、確か。とりあえず、見てなかったから、次のバスまで一時間弱だった。
諦めて座って待っていると、中学生くらいだろうか、数名の「ザ・イングリッシュボーイズ」が自転車で反対車線を通って行った。
学校帰りだろうか。さわやかだし映画みたいだ。
数名がちらっと、私を見たような気がした。
(こんな僻地にアジア人割と珍しいよね)
と、少しナナメにさしこむ爽やかな穏やかかな光の中、そう思っていた。
当時の英国はロンドンなら人種が様々だけれど、それ以外の普通の田舎だとそうでもなかった。昔から住んでる人だけが住んでるエリア。明らかに余所者というか、ザ・観光客だな、と考えてしばらくぼんやりしていた。
そしたら、なんとさっきのボーイズがまた戻ってきた。
視線が私で固定されていた。
「Are you OK?」
ひょっとしたらMay I help you?だったかもしれない。
びっくりした。
ただ単に、バスを待っていただけだし、それは見れば分かるだろう。
しかし彼らは、
”異国の女性(多分彼らにはわりと珍しいジャパニーズ)が、ポツンとベンチに座り、あまり本数の無いバスを待っている=なんか困ってないかな?!”
って感じで、わざわざターンして戻ってきてくれたのだ。
なんだコレ、なんだこの紳士予備軍。
時代が時代なら、君たち馬に乗ってるんだろいや私には見える、自転車に乗ったナイトたちが!!!
「大丈夫よ、ありがとう」
そう伝えると、ヨシ、と彼らはまた踵を返した。
明らかに、私を気にして戻ってきてくれたってことである。
ちなみにすでにこの時一年以上英国に住んでたから、漂う迷子感とかはもう無かったと思う。
むしろふてぶてしい位だったし。
結論。
英国は、紳士の国である。
オマケ。
他にも
①ロンドンで重い荷物持って階段ぴっぱりあげてたら、急に軽くなって「?!」って振り返ったら「やあ、重いね!」ってそのまま一緒に荷物を上がり切るまで運ぶの手伝ってくれて、着いたらさっさとその場を離れていくスーツのお兄さん
②邸宅のお庭で、おじいちゃんと小学生くらいの男の子(トラディショナルスタイルファッション)がいたので「カワイイ!」ってニコニコ見てたら、視線に気づいた彼が”いきなり姿勢を正して、気取った風に歩き出し、こちらをチラチラ見ながらはにかんで笑う”
③タクシーに乗っていたら、隣に自転車が止まったのでほげえこの人かっこいい、ってつい見てしまったら、ウイングして去っていった
④バスで車いすで乗車する人がいたら、その場にいたメンズ4名くらいで普通に当たり前のようにえっさほいさと持ち上げて乗車を手伝っていた
という、なんか文化違うんだな、というのを目の当たりにしてる。
日本だって大分変ってきているけれど、それはあくまで「西洋化」なのであって、なんか……「すでに持っている」のとは違うんだなって思ったものだ。
今やオンラインでいろいろな人と会えるし、VRなどで様々な空間体験もできる。しかし、こう「目の当たりにする」っていうのは記憶への焼きこみがハンパない。鮮烈だ。
もう私は日本から出ることないかもしれない。(飛行機実は苦手お腹張って苦しい)
それでも、あの鮮烈な何かを味わいたいし、若い人たちには味わってほしい。
前みたいに気軽に行けるようになることを、切に願う。
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