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電波ジャック

人生初のMV監督をしました。

もう本当に大変だった。見返すと「もっとやれたよね?」「作画量少なすぎ、甘い」「アニメのクリンナップが!!」と自分自身を叱りたくなりますが(なんせ大槻美奈ちゃんの曲が本当に素晴らしいので、もっとクオリティを上げなくてはという焦りに毎秒苛まれる)、連日3時間睡眠を続けてイベント当日の昼にようやく完成したので、これがきっと現時点の実力なのでしょう。絵コンテを書き上げるまでに何度も没を重ね、初めて使用するソフトウェアのクラッシュ祭りに涙をのんだりとドタバタ続きの1か月でしたが、本当にやらせていただいて嬉しかったです。

小さい頃からミュージックビデオを作るのは憧れでしたが、なにぶん飽き性のため一度も制作したことはなく、普段描かせていただいているイラストからこんな素晴らしいお話をくれた美奈ちゃんには頭が上がりません。本当に普段からインスピレーション諸々、お世話になってます…!!そしてイベントに出演してくれた映画監督の川北ゆめきくんもありがとうございます。今回、彼のファインプレーに二度も救われてなんとか皆様にこの映像をお届けできています。ムーラボの登壇の時といい、本当にありがとうございました…!


MVを制作したことにあたって、キャラクターや世界観についてたびたび質問を頂くので、ここに私なりの解釈などをまとめさせて頂きます。
「電波ジャック」の軸として、どんなに本当のことを言っても誰も聞く耳を持ってくれない"都会の孤独"のようなものがあると思っています。それは東京に生まれ育った私が幼少期から感じてきたものでした。私は幼稚園から私立に通わせてもらっていたため地元に友人が全くおらず、帰属意識もほとんどないのですが、それ故に"帰る場所がない"という空虚感をずっと抱えている気がします。少年がいくら声を上げても誰も相手にしないのは、正しく努力すればするほど孤立していった昔の自分を思い出すようで、ちょっと切なくなりながら今回のコンテを描きました。

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冒頭の街中のシーンは架空の四谷を描いているのですが、新宿から四谷までの国道20号線(通称・新宿通り)を見ていると、本当に誰もが無関心だなあ、って思うんですよね。四谷ってACTがあったり未確認スタジオがあったり(どちらもギャラリーの名前)デッサン会毎週やってたりと結構アートのイメージが強いんですが、それもあってかすごい人がのんびりしてる。一回四谷のスタバに5万のシンセサイザーを置き忘れたことあるんですが、半日くらい同じ場所にあったそうです。いい街だ~。
新宿は行ったことある人はわかると思うんですが、本当にせわしない。さすが乗降人数世界一の駅ですね。人が多くて華やかで、明るくて音も色もうるさい。情報の洪水なんです。みんなが生き急いでいて、きらきらしていて、誰にも興味なんてないんです。でもそんな人たちの目に留まるように、必死で広告して、光り輝いている。空しい街だ。
新宿と四谷って一見相反するようで、すごーく似てると思います。その無関心さが。四谷でシンセ盗まれなかったのも治安がいいからが一番だろうけど、それ以前に人に関心がないから目に入らないんだと思う。アートとしてパッケージされたものには興味を示すけど、街中で絵描いてる人間には見向きもしないみたいな…あれ、そういう意味だと新宿って寛容なのかな。人の多さの違いかな…

話が長くなりましたが、それもあって私はすごく新宿という街が苦手で。というか新宿に限らず都会が嫌いでした。中心部に住んだことがないゆえの憧れはあったけど、同時に物凄く息がつまる。誰も助けてくれないなあって。昔池袋の駅前で死体が
放置されていたのに皆興味なさ過ぎて半日近く発見されなかったみたいな都市伝説を聞いたことがありますが、それを聞いて「いやホントかもよ」と返したくなってしまうくらいには私は都会って冷たいと思う。

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でもその冷たさが救いの時もあるんです。泣いても叫んでも誰も見ていない。高校生のころ池袋でサカナクションを聴きながら夜景を眺めることが多かったんですが、あの時の街はきれいでした。そして私は、圧倒的に、蚊帳の外でした。それは幸福なことでした。

MV「電波ジャック」、楽しんでいただければ幸いです。

もし絵コンテが見たい人がいましたら、コメントなどください。



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