私の介護日誌 母の存在

 先日某番組で、犬がもたらした奇跡というのを見ました。

 ある介護施設に、認知症状が重く、息子さんのことも分からなくなり、話しかけてもほとんど反応がない女性が入居したのですが、そこで飼っているイヌを見て、昔飼っていたイヌの名前を呼んでは楽しそうに戯れるようになり、別人のように回復されたんです。

 そして驚くべきことに、息子さんを見て、「あら、〇〇来てくれたの?』と息子さんのことも認識して名前を呼んで…。

 イヌってすごいな-。そして、息子さんはどんなに嬉しかったことでしょう。もう2度と自分の名前を呼ぶことは無いだろうと覚悟していた息子さん。その時の気持ちを考えたら涙せずにはいられませんでした。

 私、思い出したんです。母に初めて「あんた誰?」って言われた時のこと。
 ものすごくショックで、「私のこと、わからなくなったー!」 と号泣しながら姉に電話したので、心配して姉が駆けつけてきたほどでした。
 母がいなくなってしまった…。うまく表現できませんがそんな気持ちだったと思います。今思うと、あの頃の私は、まだ母に母でいて欲しくて、現実を受け止めたくなかった。

 あの日からだいぶ月日はたちましたが、幸い、今でも母は私の名前を呼んでくれてます。自分の娘という認識はないようだし、先生って呼ばれたり、「あんた誰?」って言われる時もありますが、完全には忘れていないのか、私の名前、呼んでくれます。でもいつかは忘れてしまう日がくるのかもしれません。

 今日ベッドに寝ている母に添い寝をしたら、「よしよし」って言いながら私の頭を撫でてくれて、何だか嬉しかった。いつもはそんな事しないのに。

 母も自分が母だということを、時々思い出すのかな。


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