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「涙に意味を、与えてあげて。」 泣いて戦うARPG「CRYSTAR」のお話


※某所のアドベントカレンダーに寄稿したものです


こんにちは。Reliefです。こういった記事を書くのは初めての経験です。企画して下さったcigareさんに感謝ですね。
本日12月21日ということで、今年も残り約10日。皆さんは今年の厄は払い終えましたか?私は払いました。


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この記事ではCRYSTARというゲームについて個人の主観でレビューしていきます。
ゲーム本編のネタバレを含むため、これからプレイしようという覚悟が決まっている方がもしいらっしゃいましたら、「ARPGの強みと〜」の段落は読み飛ばして下さい。


「CRYSTAR」とは

メーカー:フリュー(開発:ジェムドロップ)
機種:PS4専用ソフト
ジャンル:泣いて戦うアクションRPG
発売日:2018/10/18
価格:7980円(税抜)

私がプレイしたのはこの約1年後に発売されたSteam版です。こちらも発売から2年ほど経ったこともあり、セールで70%オフの2000円ぐらいで購入しました。

フリューといえば「Caligula -カリギュラ-」が有名ですね。最近「モナーク/Monark」というRPGも発売されました。基本的にコマンドバトルRPGであるこれらの作品とは違い、「CRYSTAR」はアクションRPGです。

ゲームについて話す前に、是非こちらを。

凄くカッコ良いですよね。

私は本編をクリアするまで起動するたびにOPを見てからゲームを開始していました。それぐらい好きです。

OP曲「can cry」は作詞作曲歌唱ともにやなぎなぎ氏、アニメーション制作は「魔法少女まどか☆マギカ」でお馴染みシャフトです。
初めてご覧になった方も多少なりとも惹かれるものがある映像ではないでしょうか?


要素別レビュー

では、ここからは一般的にゲームをレビューする際に挙げられる要素を順番に見ていきます。

・キャラクターデザイン

このゲームのキャラデザはほぼリウイチ先生(@riuichi35)が担当しており、どのキャラも個性があり、かつ魅力に溢れています。
リウイチ先生はキャラデザについてこう語っています。

――『CRYSTAR -クライスタ-』のキャラクターデザインのポイントはどこですか?

リウイチ 瞳ですね!磨き上げられた宝石や原石の綺麗さを瞳の描写で表現する事を強く意識しました

https://www.clipstudio.net/oekaki/archives/153258
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CRYSTAR 公式アートブック表紙

宝石のような瞳、という言葉がとても似合いますね。
この魅力的なキャラクターデザインが私が「CRYSTAR」をプレイした理由でもあります。

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主人公・幡田零(左)とその妹・幡田みらい(右)


・シナリオ

久弥直樹さんが担当しています。Keyの名作「Kanon」や、アニメ「天体のメソッド」など、感動に特化したシナリオを手掛けた方ですね。


・UI

デザインがとても良いです。コンセプトである涙の要素を取り入れつつ、煩雑になりすぎないシンプルながらお洒落な構造はゲームの雰囲気を損ねません。

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いわゆるメニュー画面。必要な情報とデザインが両立されている
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こちらはステージ内。かなりシンプル

①操作中のキャラ
②交代可能キャラとそのHP
③操作中キャラのレベル、HP、SP(スキルポイント)
④涙ゲージ(必殺技ゲージのようなもの)
⑤ミニマップ

分かりやすくていいですね。

少し話が逸れますが、上の画像の左上のように四角が斜めに並んでるデザインが個人的に好きなんですよね。なんかオシャレ。

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ガスト「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」 より


・音楽

ゲーム内で流れるBGMは 削除/Sakuzyo さん(@sakuzyo_skz)が担当しています。音楽ゲームを嗜む方ならよくご存知ですよね。ゲームの世界観を表現しつつ、バトルやイベントを彩ってくれる素敵な音楽です。各種ストリーミングサービス等にてサウンドトラックが配信されていますので是非。



・声優

近藤玲奈、千本木彩花、井澤詩織、立花理香、井口裕香、井上ほの花、井上喜久子、諸星すみれ、中田譲治、田中あいみ(敬称略)

私は声優さんに明るい方ではないですがそれでも名前を聞いたことのある方ばかりです。
特に立花理香さん演じるフェレスは普段とはかなり毛色の違う演技をされていますので一見の価値ありです。分かる人にだけ分かる例えですがキャルがちょっと元気な覇瞳皇帝の演技してる感じ。


・犬

零ちゃんの飼い犬、サモエド犬のセレマです。かわいいので星5つです。

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自室のメニューからセレマを撫でることができます。わしゃわしゃー。




あれ?神ゲーじゃね?





・アクション



💩




「CRYSTAR」というゲームはアクションRPG でありながらアクション部分が残念な出来となっており、評価を著しく下げざるを得ません。

この企画の源流となった某サーバーにもこのゲームをプレイした方が数名いました。Kさん(仮名)はこのゲームを「ゲームじゃない」と評していました。

私も完走こそしましたが言いたいことが山ほどあるので、順番に書いていきます。

  • マップが広すぎる

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こちらは一番最初に訪れるステージのMAP画像です。先程UIを褒めたところなんですがMAPを画面中央に半透明で出すのはやめて欲しかったですね。とても視認性が悪い上に、拡大縮小等もできません。
一度これには目を瞑って、MAP部分を拡大します。

20211205055600_1 - コピー

 画面中央のキャラがいる場所がMAPの一番下、スタート地点にあたり、ここからMAP右上の黄色いゴールを目指していきます。一番最初のステージだけあってほぼ一本道で小さなMAPですね。ただし1ステージにつき3MAPあるのでこのあとにもう2MAPあります。3ステージで1章、8章でようやく1周目が終わります。

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こちらは中盤のMAPです。少し分岐も増えて複雑になってきました。
初めて訪れたMAPではこの画像のように全貌が明らかになっているわけではなく、自分の足で埋めていく形になるため行き止まりや回り道で無駄足を踏むことが多くなってきます。

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いわゆるラスダンです。まあRPGのラスダンなんてそりゃ長いし広いのが当たり前ですが、ここに至った頃の私は早く解放されたいという一心だったのでなかなか堪えました。

ただ広いだけでしょ?と思うかもしれませんが、後述のアクションのつまらなさと敵の硬さ、ワンパターンさが苦痛に拍車をかけているため想像よりもかなりキツいです。

このゲームにはショートカット、ワープポイント、乗り物といった移動が快適になるような要素は最初から最後まで存在しません。一応ダッシュ回避連打が最速ではありますが途方もない回数ボタンを押すことになるので基本的にただただ走ります。
この広大なMAPを隅から隅まで探索するメリットがあれば文句はありませんが、残念なことに行き止まりの奥には何もない、もしくは武器の強化素材か回復アイテムがひとつふたつ。どちらもショップで気軽に買えるものです。
 
視覚的にジャンプで越えられそうな隙間なども当然越えられません。これは近頃のオープンワールドのゲームに慣れてしまった弊害かもしれませんが、目的の場所がとても遠く感じ、苦しい思いをしました。

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こんな小さな隙間も見えない壁があるので越えられません


  • 目に優しくない


ある意味このゲームをプレイする上で最も辛かった要因です。

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眩しくない?
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眩しくない?
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プレイ中の私

とこのように様々な要素が目に尋常ではないダメージを与えてきます。私はプレイ中何度も頭痛や吐き気に襲われゲームを中断するほど苦しんでいたのですが、原因はおそらくこの殺意を感じるほどの光源です。もしあなたの友人がこのゲームをプレイしようとしていたらサングラスの購入を勧めるか、もしくはプレイすること自体を止めてあげてください。

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背景自体は凄くオシャレなんですけどね



  • モーションがいまいち

攻撃モーションがどれもぎこちなく、全体的に硬い上に単調です。
具体的に言うと主人公の通常攻撃が5段コンボなのですが1,3段目と2,4段目は同じモーションです。SPを消費して発動するスキルにもエフェクトを追加しただけの使い回しが見られ、スキルによっては発動中に恐ろしいほどの硬直があるため、敵の攻撃を見てからダッシュでモーションキャンセルなんてこともできません。ゲームを通してアクションの爽快感はあまり得られなかったように思います。
このゲームの後に原◯をプレイするといつもの3倍楽しいです

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4人のキャラを切り替えながら戦うアクションRPG…?


  • 敵が硬い、種類が少ない、弱い

ストーリー攻略中の敵はものすごく硬いです。私の場合雑魚をほとんどスルーしていたせいでレベルが低かったというのもありますが、ボス戦は毎回激闘でした。雑魚をすべて倒して回る苦しみかボスで苦戦する苦しみか選べる感じですね。苦戦と言っても難しいわけではないのでただ倒すまでの時間が長くなるだけです。

そして敵の使い回しはかなり激しいです。死者回想録という図鑑のようなものが存在し、そこには99種の敵が登録されます。しかし、雑魚敵は同じ見た目のものが9種(!?)存在するため、実質的には雑魚敵が7種、ボスもバリエーション違いを除くと16種なので合わせて計23種です。4分の1になりましたね…。(雑魚とボスでボーンが流用されているものを除くともっと減ります)
この同じ見た目の雑魚が遠距離から状態異常付きの弾を撃ってくる敵2~3体と突進してくる敵2~3体の組み合わせで一生出てくるのでまあ本当に面白くないです。レベリングを早々に諦め、マラソンに切り替えたのもこのあたりが理由です。

16種のボスのうち、戦っていて楽しかったのはラスボスのみです。私はラスボスと戦っているときに初めてこのゲームを少しだけ楽しいと感じました。ボスによっては攻撃に2~3種しかパターンがないものもいます。それでいて特に避けるのが難しいわけでもないため、作業感が否めません。

もはや名前以外の違いがない雑魚


その他細かいところでは、

・ストーリーにオート再生がない(致命的)
・好きなBGMを再生できる機能があるが音量調整をミスしているのかほぼ聞こえない
・守護者を召喚すると自分や敵の攻撃が見えなくなる
・せっかくの必殺技のSEがダサい
・零ちゃんと777が強いためキャラを使い分ける必要があまりない

など惜しい部分が多いです。


このゲームがこうなってしまった原因のようなものが開発へのインタビュー記事で明かされています。
(参考記事: https://cgworld.jp/feature/201811-crystar-1-2.html )
色々とものは言いよう的な表現がありますが、つまるところ短い開発期間で人員も少数だったため色々削減しました(意訳)ということだそうです。納得せざるを得ないというか...アクション以外の部分のクリエーター陣が豪華なだけに悲しくなりました。


さて、色々文句は書きましたが今回のアドベントカレンダーの趣旨は"好きなことについて"の記事を書こう!とのことなので、私がこのゲームを好きな部分もちゃんと書いていこうと思います。

ARPGの強みとプレイヤーへのメッセージ


・ゲームコンセプトの表現


少しだけストーリーを解説します。

本作の主人公、幡田零ちゃんはとても泣き虫な女の子です。アナムネシスという幽鬼によって妹の幡田みらいと共に辺獄に引きずり込まれてしまった彼女は、辺獄で自分に目覚めた力を制御できずにみらいを自分の手で殺めてしまいます。みらいをヨミガエリさせるために悪魔と契約を結び、辺獄での戦いに身を投じていきます。

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離さないと約束したはずの妹を殺めてしまう。悲しい

悪魔の代行者となった零ちゃんは、同じく代行者である小衣や千、なぜか零に懐く幽鬼の777と出会い、理念(イデア)を集めつつ辺獄の底、輪廻転生の場である再生の歯車へと向かうみらいの魂を追います。辺獄における理念とは、「自意識のある存在が激情をともなって流した体液に極稀に含まれ、結晶化したもの」のこと。つまり、零ちゃんたち代行者や777のような自意識を持つ幽鬼がなにかに悲しみ、涙を流した時、それが理念となります。

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悪魔との契約により、理念と引き換えにみらいをヨミガエリさせるため、零ちゃんは元は人間の幽鬼、幽者を倒していくことになります。

抑圧されていた心理を解放し、鬱積した感情を浄化することにより快感を得る気持ちよさ「カタルシス-catharsis-」をコンセプトに、陰鬱な世界で「涙」し戦う少女を主人公としたダークファンタジー。

公式サイトではこのゲームをこのように紹介しています。幽鬼を倒して得た断末魔の思念によって零ちゃんはその幽鬼の記憶を垣間見ることができ、幽鬼たちの境遇、その無念に涙することで気持ちを整理し、浄化しているという感じです。

このカタルシスの過程はストーリーにも現れています。零ちゃんが何度も迎えた物語の結末は救われないものばかりでした。みらいを救えたもののみらい以外のことを忘れてしまったり、みらいと共に死んでしまったり、遂には仲間同士で殺し合い…この鬱々しい世界の元凶である悪魔、メフィスとフェレスを打倒し、未来を掴み取ること。これもまたカタルシスです。

カタルシスをプレイヤーが得る過程として、アクションRPGであることが必要だったのかなと思います。ノベルゲームやコマンドバトルよりもやはりプレイヤー自身がキャラを操作するほうが熱が入るものではないでしょうか。あの範馬勇次郎も「力みなくして解放のカタルシスはありえねェ」という名言を残していますしね。

――続いての質問です。「涙をテーマにしたゲームを作るにあたって、ジャンルをアクションRPGにした理由を聞かせてください。(マリオネットさん)」確かに、それこそ“泣きゲー”ならアドベンチャーゲームでも見せられると思いますが……。
 主人公への“感情移入”をしやすいというのが大きいです。というのも、アクションは主人公を自由に動かして敵を倒してその結果によって物語が進んでいきますよね。
 そういった自分の行動が直接物語にかかわっていくことによる没入感で、深みのある世界を描こうと思ったのでアクションRPGというジャンルを採用しました。

https://dengekionline.com/elem/000/001/812/1812011/

完成したもののクオリティは一旦抜きにして、ゲームとして表現したかったコンセプトに適したシステムを起用したその姿勢にはとても好感が持てます。



・「涙」について


このゲームは「涙」をテーマのひとつとして据えています。
林プロデューサーは「CRYSTAR」というタイトルについてこう語っています。

本作のタイトルは“cry=泣く”と“star=星”を組み合わせた造語で、泣いてしまうような暗い出来事があったからこそ得られる、暗闇でこそ輝く星のようなモノを描きたくてつけました。

https://dengekionline.com/elem/000/001/812/1812011/

ゲーム内でも、零ちゃんは泣くことで涙ゲージを蓄積し、ゲージが最大になると守護者を召喚し必殺技を放つことができます。まさに涙が零ちゃんの力となるのです。

零ちゃんの必殺技にも「涙よ、流転し、希望の星へ!」というセリフがあるように、ただ悲しいこと辛いことに涙を流すだけではなく、その涙を糧として未来へ向かうことが大切だと、万物は流転するからこそ、涙の先には笑顔があると、そういったメッセージが込められていると感じました。

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何度も見ることになるこの語りもクリア後だと感動もひとしお


総括

・ストーリーが気になる、テーマに魅力を感じる
・リウイチ先生、削除さん、声優さんのいずれかのファンである
・目に重大な疾患がない
・単調な作業にある程度耐性がある

これらを全て満たすならば、購入を視野に入れてもいいと思います。遊び尽くした人間の正直な感想としてアクション部分をまともに完走できる人は一握りだと思われるためとてもオススメはできません。もし買うならセールを待ちましょう。フルプラで買うのは金のかかる拷問の域です。

とはいえ、最初に述べた通りこれは私個人の感想です。このゲームのsteamでのレビューは私と似たような感想の方が多く見受けられますが、総合的な評価は「非常に好評」となっていますので、参考程度にして頂ければと。


以上、泣いて戦うRPG「CRYSTAR」レビューでした。
今回、この記事を執筆するにあたって、開発のインタビュー記事を読んだり、違う目線からストーリーを再考察することで新たな発見があったように思います。この企画がなければ私はこのゲームを単にクソゲーとして記憶から消していたことでしょう。
ちなみにまだギリギリクソゲーだと思っています。

これはゲームに限らず、何かしらの作品に対して面白かった、感動した、で終わるのではなく、一歩引いた目線で見てみると面白いかもしれませんね。

なんとこのゲーム来年2月24日にSwitch版が発売されます。最初からDLC全部入り(DLC衣装には「アイテム購入価格を安くする」「特殊な敵の出現率変化」等の効果があります)だったりとなんとか最後まで遊んでほしいというメーカーの姿勢も伺えますので、是非同日発売のソフィーのアトリエ2を購入して遊びましょう。私も買います。


最後まで読んで頂いた方、駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
良いお年を。


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来年も笑顔でがんばります











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