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第3話

私のお姉ちゃんは本当に、太陽みたいな人だった。
笑顔が可愛くて、仕草も上品で。姉妹なのに全然私と違う。私は逆に独りきりじゃ何もできなくて、いつも誰かの後ろに隠れているようなそんな人間だった。
私はお姉ちゃんに憧れてた。
だけどお姉ちゃんは、時折悲しそうな顔で笑っていた。どうしてそんな風に笑うのか、私には全然わからなくて、それを知ったのは、

お姉ちゃんが死んでからだった。

私の大好きな笑顔で笑うお姉ちゃんの写真が、色とりどりの花で囲まれているのに、私は真っ黒な服を着てただ茫然とするしかなかった。周りの人の声が、どこか遠くの方で聞こえるような気がして、その場にいるのに、私だけその場にいなかった。
お姉ちゃんの死因は事故だった。数日続いた雨の影響で崖崩れが起こった。お姉ちゃんはそれに巻き込まれた。
お姉ちゃんは病気だった……らしい。これはお姉ちゃんが死んだあとに知った。お父さんとお母さんは知っていて私だけ知らなかった。どうして教えてくれなかったのか問い詰めたら、お姉ちゃんの意思だったらしい。末期のガンだったと言われた。
どこか現実を受け入れきれないまま、お姉ちゃんのお葬式は終わった。

どうして、お葬式の後に食事をするのか、理解できなかった。早く家に帰りたい。だって、家に帰ったらお姉ちゃんがいる気がするから。
死んだことを受け入れるなんて、無理だと思った。

私はお母さんに一言伝えてから、葬儀場を出て家に帰った。
お姉ちゃんが居た頃と何一つ変わっていないお姉ちゃんの部屋がそこにただ存在していて、お姉ちゃんの匂いがするベッドの上で涙が無くなってしまうんじゃないかってくらい泣いた。
泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていたらしく、時計を見ると真夜中だった。
……お風呂入ろう……。
煙臭い服をすぐに脱ぎたくて、煙の臭いが染み込んだ身体を洗い流したくて、いっそ、夢だったらいいのになんて思いながら、いつもよりも時間をかけてシャワーを浴びた。

次の日は、気が滅入るくらいに太陽が輝いていた。
私にとってのお姉ちゃんの代わりを果たそうとしているみたいで、私は太陽が嫌いになった。
元々明るい性格ではなかった私が、さらに暗い性格になったような気がする。お姉ちゃんで辛うじて繋ぎ止められていた私の笑顔はお姉ちゃんの死を境に無くなった。

そして、春から私はお姉ちゃんと同じ大学に通う。

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