【VRChat用】ジャンル別、ストリートダンスイベント選曲覚書

要約

  • Breakはオールドスクールヒップホップのサンプリング元を掘るか専用のバトルビートでOK

  • Lockはファンク・ソウルなら大体踊れる。ただしFuture Funkは以外と現場ではかかってない

  • Popはスネアの音がバカでかい西海岸のファンクを探せ

  • Hiphopはよく分からない、けど安定は90~00年代のブーンバップ

  • Houseは大体のVRDJが多分いける、ビッグルームのEDMだけはやめろ


始めに

「たまLab等のVRのダンスサイファー・ダンスバトルイベントでDJをやりたいけど、どんな曲をかけたらいいのか分からない」という方向けに、各ダンスジャンルで流れる曲の特徴をざっくり紹介します。

※自分が関西のストリートダンスの現場にいた頃の記憶を頼りに書いてるので人によっては間違ってると思われるかもしれません。特に海外のシーンは流れる曲がまったく違うのであんまりアテにならないかも。

※この記事ではBreak、Lock、Pop、Hiphop、Houseの5つのジャンルに絞って紹介します。それ以外のジャンルは需要があればまた別の機会に。


Break

まずはブレイクダンス、くるくる回ってるアレです。

ブレイクダンスで使われる曲は名前の由来にもなっている通りブレイクビーツです。

ブレイクビーツというのは本来ジャンルではなく手法の名前ですが、B-boy/B-girl(ブレイクダンサーの呼称)がブレイクビーツと言う場合は基本的に以下の3つのどれかです。

  1. 1970~1980年代の、ファンクやソウル、R&B等を使ったヒップホップ

  2. 上記のヒップホップのビートをさらにサンプリングしたヒップホップ

  3. DJ、トラックメーカーが作ったブレイクダンサー向けのバトルビート

代表的な曲としてはIncredible Bongo Bandの『Apache』が有名です。これを2枚使って間奏(ブレイク)部分を無限にループさせたのがブレイクダンスとヒップホップの始まりです。上の中では1に該当します。

言い忘れていましたが個人的にBPMは110~120くらいがベストだと思います。

ヒップホップの国歌と言われてるこの曲ですが、アパッチをサンプリングしているBPM110以上のヒップホップ楽曲はそのほとんどがブレイクダンスで踊ることができる曲です。上でいうと2に該当する曲たちですね。

例えばライムスターの『B-BOYイズム』は日本のブレイクダンサーにとってはアンセムですが、これも1970年代にブロンクスで踊っていたB-boyたちにとってのアンセム、The Jimmy Castor Bunch『It's Just Begun』の冒頭部分をサンプリングしたヒップホップです。

こういう感じで、特定のブレイクビーツが他のブレイクビーツと繋がっていることがこのジャンルでは多々あります。ブレイクビーツもラップと同じでサンプリング文化が根強いジャンルなので、BPM110前後で気に入ったヒップホップの曲があればそのサンプリング元もディグってみるのをおススメします。

また、ファンクやR&Bの音源を2デッキに読み込んで疑似的な「2枚使い」をすることで、自分でブレイクビーツを生み出すこともできます。渋いDJを目指したいならこっちの方法がおススメです(レコードだとさらにアツいです)。

現場ではこのオールドスクール全開の方法でやってるDJが多かったですが、そんな面倒なことしたくない方は後述の「ブレイクダンス用の曲」を探すのが手っ取り早いと思います。

曲の集め方

ヒップホップが好きな方は先ほど説明したディグっていく方法がありますが、そんなに興味ない方は「ブレイクダンス用の曲」を探した方が手っ取り早いです。上だと3に該当します。

ブレイクダンスは競技人口がぶっちぎりで多く、それに伴ってブレイクダンスをするためだけの専用の曲がめちゃくちゃ多いです。少々ニッチなジャンルですが、ブレイクビーツを専門にしているトラックメーカーやDJを探していくとかなりの曲が集まるんじゃないかなと思います。

他にも、例えば有名なブレイクダンスの世界大会、『Battle of the year』や「『RedBull BC ONE』は大会のたびにミックスアルバムを出しています。ブレイクダンスのために作られているので踊りやすさも抜群です。

ブレイクビーツを流せるだけでヒップホップDJとしての幅も広がるので、ヒップホップをメインにしているDJの方はぜひブレイクダンスシーンにも興味を持ってみてください。

Lock

お次はロックダンス、ブレイクダンスよりも古いジャンルです。

ロックダンスで使われる曲は基本的にファンク・ソウル・ディスコですが、その中でもファンクが根強い人気を持っています。一部の例外を除いてFunkと付くジャンルなら大体の曲はLockで踊ることができます(たまにエレクトロスウィングなんかもかかります)。

Lockは踊れるBPMの範囲が90後半から130前後までと非常に広く、ファンク・ソウルであれば曲調やドラムパターンの制約もあんまりないので、ファンクを得意とするDJの方は特段気にすることなくそのままロックダンスのDJもできます。

ただ一点だけ、時代が偏るのだけは注意したいです。

VRCのDJで言えば、特にファンクを得意としている方などはあまりFuture Funk一辺倒にならないように注意したいところです。

ファンクは若い世代にも根強い人気があるので『ビビデバ』やシティーポップのリミックスをかけまくりたくなるのは分かりますが、時にはEarth, Wind & FireやJ,Bなどのクラシックにも目を向けてみるといいかもしれません。実際現場で流れているのはそういった古いファンクですし、ロックダンサーもそちらの方が踊り慣れています。

逆に、古いファンクやディスコばっかりだと若いダンサーにはウケが悪いときもあります。時代を問わずファンクを見渡してみて、いい感じに散らせるとGoodかなと思います。

曲の集め方

ファンクは正直ディグ命ですが、詳しくない方はとりあえず『September』とかから有名どころを聴いていくといいです。

有名曲に飽きてきたら、ファンク・ソウル専門レーベルなどがBandCampに無数にあるのでそちらをディグっていくのをおススメします。NYに拠点を置いてるレーベルなんかは今風でめっちゃカッコいいです。

VRCにはファンクに強いDJさんが多いのでそういった方が出演してるイベントに遊びに行ってみるのが一番いいかなと思います。
いずれにせよ、ファンクは無限に曲があるので自分が踊りたくなるような理想のファンクを探してみてくださいね。


Pop

ポップダンス、筋肉をはじいてパンパンいってるアレです。

ポップダンスで使われる曲もファンクですが、ロックダンスのファンクとは若干曲のテイストが違います。違いはビートの偶数拍(アップビート)で見分けます。Lockと同様踊れるBPM帯が広いジャンルですが、自分は110以下の遅いのが好きです。

ポップで使われる曲はスネアドラム(あるいはクラップ)の部分が非常に特徴的なのでかなり分かりやすいです。裏の拍に大音量で「パン!!」って鳴ってるファンクは大体がポップダンス用の曲です。ポップダンス、特にブガルーはこの「パン!!」があらゆる技の基礎なので、ポップダンスには必須の音です。

G-funk等のトラックもこの要素が強いのでよく使われます。

今のメジャーではほとんど聴かないような曲調なので珍しく思うかもしれませんが、80年代あたりのファンクでは結構ポピュラーなビートでした。なのでその年代のファンク、あるいはそこに音楽的ルーツがある西海岸のアーティストを漁れば結構見つかります。トークボックス(チューブを咥えて声変えるアレ)を使ってるファンクなどは特に要チェックです。

↑実はこれも立派なPop曲。

また、これとは別に、グリッチホップやダブステップなどのエレクトロミュージックもたまに流れます。BPMがあまり高くなく、重低音が激しい曲が特に好まれる印象です。

曲の集め方

先ほど紹介したブレイクビーツ同様、ポップダンスも熱狂的なプロデューサーたちによって「それ用」の曲が多く作られています。
代表的なところで言うとBeatslaya、Fingazz、AaronEVOが有名です。彼らは曲の「パン!!」の部分をハチャメチャにでかくしたりバスドラムの音をえぐい重低音にしたり、ポップダンサーが欲しい感じの曲を多く出しているので、ポップダンスの曲を探すときの入り口にしてみてください。

若いポッパーは下の曲みたいな電子音多めの方が好きかもしれません。

個人的に、ポップダンスの曲が一番探すのが難しいと思います。何が良いか分からなくなったらとりあえず次の2点を基準に探してみるといいかもしれません。

  • スネアドラムがクソでかい、裏拍で何かしら目立つ音が鳴ってる

  • トークボックスが使われている、シンセの音がうにょうにょ言ってる


Hiphop

ヒップホップダンス、VRCの中でも特に人気なジャンルです。
正直ヒップホップダンスは自分でも最適解が分かりません。というのも、ヒップホップダンスは踊り方によってはほとんどすべての曲に対応可能だからです。

曲のジャンルはもちろんヒップホップなんですが、ダンサーによってマジで踊りたい曲調が違うので、自分の勘とダンサーの反応が全てです。それだけじゃ参考にならないのでここではいくつかのポイントを挙げていきます。

まず、曲のスピードはここまでのジャンルに比べてかなり遅いです。BPM100~90台が大体平均値ぐらい、早いところで110後半、低いところで70後半くらいまで使われます。

遅めのヒップホップなら大体の曲がこのBPM帯に収まると思いますが、最近のドリルやトラップで踊れるかと言われるとVRのストリートダンサー的には「うーん……」という感じかなと思います。

なので、1990~2000年代あたりのブーンバップやミドルテンポが無難かなと思います。「俺ヒップホップDJだからダンスDJもいけるぜ」と言っていたDJのほとんどがトラップやドリル流して失敗するのを見てきました。

また、場合によってはラップが無いタイプビートでもいい場合があります。日本にも海外にもヒップホップ系のトラックメーカーは無数にいるので気に入った人を探してみると良いかもしれません。個人的なお気に入りはスロベニアのGramatikです。

日本だとHIFANAとかいいかもしれません(ちょい古いけど)。

曲の集め方

ぶっちゃけ「ヒップホッパーならどんな曲でも踊れるっしょ」精神で好きなヒップホップを集めてかけてもいいんですが、無茶したくないなら無難にブーンバップを漁りましょう。日本語ラップだと歌詞ハメもできるのでお得です。

タイプビートについては、自分もまだ未知数なのでこれから集め方を考えていきたいです。今のところ現場でShazamした曲を流してるだけです。ただ、ヒップホップメインのDJさんならいろいろ試行錯誤の余地があってDJ的にも楽しいジャンルだと思います。(それがダンサーに気に入られるかは別の話ですが……)。

とにかく注意したいのは一点だけで、ヒップホップという名前につられて安易にドリルを流さないことです(ドリルが好きなダンサーもいますが……)。

結局何が言いたいかと言うと、なんもわからんということです。

House

ハウスダンス、ここまでの中で一番新しくてBPMが早いジャンルです。

ハウスダンスで使われるジャンルはハウスです。以上です。

というのは冗談で、最近ではツーステップやガラージなんかも使われています。一番クラブミュージックに適したジャンルなので、VRDJのほとんどの方はハウスダンサー向けの曲をわざわざ集める必要もないかと思います。実際の話、ストリートダンスを知らないDJさんがサイファーで回したら大体その日はハウス回になるかと思われます。

BPMは120~130台が踊りやすいとされています。ビートがくっきりしている曲や生音が入った曲などが特に好まれます。とりあえずMONDO GROSSOかけとけば問題ないです。

正直これ以上書くこともないのですが一応注意点。

ビッグルーム系のEDMだけは絶対に避けるようにしましょう。

曲の集め方

みんなの好きなクラブミュージックを集めましょう。

Q&A

Q.電子音楽はどこまでOK?

A.
BPMが90~135ぐらいに収まっていて、一定のはっきりしたビートがあるなら大体のダンサーが文句なく踊ってくれると思います。140オーバーのテクノやFuture系統、シャッフル系のEDMもある程度許容範囲ですが、連発されると萎える人が多いんじゃないかなと思います。

これはどこでもよく聞く話ですが、いわゆるクラブDJの言う「ダンスミュージック」とストリートダンサーが思う「ダンスミュージック」はかなり意味合いが異なります。
縦ノリのゴリゴリエレクトロよりも、ワンエンツーエン……と16ビートでしっかりリズムの取れるブラックミュージックを積極的に採用するとダンサーからのウケがいいです。

Q.ブラックミュージックじゃないとダメ?

A.
ここで紹介したのはあくまで一般的に踊られてる曲なので、例外は無数にあります。例えばSkrillexやCapsuleの曲でブレイクダンスしたり、邦ロックでロックダンスしたり、ジャマイカのレゲエでヒップホップを踊ったりもできます。

それ以外にも、有名なダンスポップは基本的に皆アガってくれます。ブラックミュージックに一ミリも興味が無い方はとりあえず適当なダンスポップを漁ってみるのがいいかと思います。結局そのほとんどがブラックミュージックなわけですが……。

それぞれのDJさんで得意なジャンルも違うと思うので、まずは自分の得意なジャンルを流しながら、上の基準に合わせて適宜マッシュアップやBPM調整でそれっぽくしてみてください。2ステップやガラージなども最近ではよく聞くのでそういったジャンルが得意な方はどんどん参入していいと思います。

Q.アニソンやインターネット音楽をかけたいんだけど……

A.
ダンスにはストリートとは別にA-POPという巨大な界隈があります。そちらではアニソンやボカロ、Vtuber楽曲などがメインなので、そういった曲に強い人は重宝されるかと思います。自分はルーツがストリートなのでA-POPについてはあまり詳しくないですが、ストリート・A-POP問わずオタク向けの流行りの曲はVRのユーザー層的にもかなり喜ばれるはずです。
「A-POPやります」と告知すればオタクダンサーたちが喜んでくれると思います。

Q.曲のつなぎ方は?

A.
サイファーであれば好きなつなぎ方で大丈夫ですが、バトルになるとちょっとだけ意識するべきことがあります。
まず、バトルでは基本的にロングミックスはしません。2ラウンドで2曲流す場合は、各サイドのダンサーが踊り終わったタイミングにそのままカットインかフェードインで次の曲を差し込みます。
このとき4小節目の終わり際で差し込めるとノリを壊さず次の曲に移行できるので余裕がある場合はやってみてください。
スクラッチができると雰囲気出てめちゃくちゃ良いですが、バトルでダンサーが踊ってる最中にスクラッチや効果音を鳴らすのは厳禁です。

ちょっとだけテクいことをしたい人は、曲のビートがない部分だけを上手いことミックスで消したり、レコード2枚使いでオリジナルのブレイクビーツを作れたりするとアツいです。
特に後者が出来る人はめっちゃカッコいいと思います。
色々書きましたが、基本的はMCバトルと同じ感じで大丈夫です。

最後に~ゴリ押ししたい人向け~

フリーダウンロードのドラムループを合わせてゴリ押しでブレイクビーツやポップダンス風にすることもできます。荒業ですが緊急の時はぜひ。

需要があれば他ジャンルやジャンル混合バトルでの選曲、ショー音源の選び方など、さらに深い部分についても解説します。

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