見出し画像

最高到達点(前編)

富士山。
それは日本一の山。
初めて登ったのは中学3年生。
当時は14歳。
訳分からんまま富士山に登った。
めっちゃ狭かった山小屋。
カレーは美味しかった。
ただ全然寝れなかった。
朝早くに叩き起こされる。
朝4時くらいから再び山頂を目指して歩く。
めっちゃ雨が降っていた。
お陰でご来光は見れなかった。
死にそうになりながら頂上を目指した。
学校指定の体操服で。
当時運動なんて殆どできなかった。
体育の授業は1番嫌いだった。
体力もみんなと比べて全然ない方だった。
途中何回もリタイアしそうになったけど。
最後尾で担任の先生が荷物を持ってくれた。
友達や先生にも励まされながら。
無事なんとか頂上に辿り着いた。
下山もしんどかった。
全身筋肉痛になった。
死にそうになりながら富士登山が終わった。
もう登ることはないと思っていた。

当時のしおり

あれから15年経った。
高校、大学、社会人。
大学受験、就活、公務員試験、世界一周。
富士山のことなんてすっかり忘れていた。

今年の2月に大学時代の友達と集まった。
その中の1人が突然口を開く。

「30歳になるまでに富士山に登りたい。」

久々に富士山のことを思い出した。
15年前の記憶。
15年前は確かにしんどかった。
でも、この15年で何もかも変わった。
1日10時間勉強した大学受験も乗り切った。
夢だった世界一周もやった。
世界遺産の知識も増えた。
学校で1番運動出来なかったあの頃とは違う。
確実に体力もついてるはず。
それに変わったのは僕だけじゃない。
富士山もだ。
富士山は、8年前に世界遺産になった。
恐らく観光地としてパワーアップしている。
昔よりもより登りやすいかもしれない。
今ならいけるかも。
もう1度登りたいという気持ちが湧いてきた。
これを逃すともう登らないかもしれない。
よし、登ろう。

富士山

そう思った20代ラストイヤー。
15年ぶりに富士山に凱旋する。
ただ今の自分らに登れるのだろうか。
よし、登山の練習をしよう。

4月。
桜を見に吉野山へ。
吉野駅から奥千本までは、6km。
往復で12km。
うん、これは歩くでしょう。
ここを歩かないと富士山は越えられる訳がない。
そして吉野山を登った。
桜が綺麗だった。
そして思ったより余裕だった。

吉野山


5月。
吉野山は物足りなかった。
次は六甲山にしよう。
そう思い、朝10時半に芦屋駅に集合する。
ここから有馬温泉まで歩く。
とんでもない距離だった。
途中岩場も多かった。
階段もしんどかった。
自販機がないのも辛かった。
結局有馬温泉に着いたのは17時半。
トータル7時間くらい歩いた。
めっちゃ暑かったし、足もフラフラだった。
でも、登り切れた。
富士山も見えてきた。

六甲山

6月。
富士山も近づいてきたので、最後の調整。
選んだのは金剛山。
大阪で1番の山。
六甲山を超えてきた俺たちには余裕だった。

金剛山

そしていよいよ本番。
7月13日。
富士山初日。
朝6時に難波に集合する。
周りを見ると服装も荷物もガチ勢ばかり。
対して僕はレンタルするとはいえ職場用の鞄。
ん?ここにいていいのか、、、?
さらに、バスに乗ってからのガイドからの一言。

今から日本一の山に登る。
貴方達は日本一の練習をしてきてると思います。

日本一の練習?
日本一の練習って何?
阪神の神8のこと?
どゆこと?

日本一の神8打線

日本一の練習をしていただろうか。
周りのガチ勢と比べて明らかに浮いている。
富士山の頂上でやりたい事はいっぱい考えてた。
びっくらぽんを頂上の郵便局から送ろかな。
葉書でおもろい事書きたいな。
頂上からシャボン玉を飛ばしたいな。
そんな事ばっかり考えてた。
肝心の登る事に関しては何も考えてなかった。
一気に緊張感が走る。
さらにガイドは続ける。

山小屋での睡眠時間はせいぜい3時間です。
今のうちに寝といてください。

3時間?
ほぼオールやん。
あのクソ狭い山小屋で3時間?
死ぬ死ぬ死ぬ。
中学の時でも6時間はおったぞ。
今日も5時起きやったのに。

ツアー

バスの中めっちゃうるさかった我々。
ただ少し怖気ついたのか、寝ることにした。
そして富士の湯に辿り着く。
ここで荷物を預けて、登山具をレンタルする。
登山に必要な荷物を選別する。
ここでの目的はできるだけ荷物を軽くすること。
そしてバスに乗り込む。

荷物何持ってきた?
なんで私はレターパックを持ってるんだろうか。
俺もシャボン玉入れてきたわ。
ひーはお菓子いっぱい入れてきた!
富士山関係ないの多ない?
スパッツ入れた?
何それ?
前日話してたやん!レンタルされたやろ?
ああ、それいらんと思って置いてきてもうた。
レンタルしたやつは基本全部いるやろ。
靴紐の止め方むずすぎるわ。

そんな意味不明な会話を繰り返す。
そして富士山の麓に辿り着いた。

5合目

現在夕方17時。
ガイドからの注意事項だ。

安全第一で行きます。
今年は既に死者も出ています。
これ以上死人を出したくありません。
本当に気をつけてください。
危ないと思ったら僕らも止めます。
あと、体力に自信のない人は前に来てください。
自信のある人は後ろでも構いません。

僕らは富士山を舐めていたのかもしれない。
これは真剣に登らないとえらい事になりそう。
そしてチーム名は、チームハッピー。
一緒に登るメンバーは25人。
富士山経験者も何人かいた。
ガイドは2人。
ガイドの掛け声で気合を入れる。

絶対富士山登るぞ!
おー!!!!!

15年ぶりの最高到達点への挑戦が始まった。

登山道入り口

後編へ続く。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?