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【4月1日】白川前日銀総裁インタビュー(2013年)

 白川前日銀総裁とのオフレコインタビューに成功しました。
 白川前総裁の発言をご紹介します。【2013年4月1日付】
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 私(白川前総裁、以下同)が指揮をとった金融政策は、正しいものではなかったかもしれません。しかし、後世の歴史家が易々と「間違っていた」とは断言できないほどには職責を果たしました。
 
 中央銀行の役割は、物価の安定などを通して通貨の信認を守ることです。
 中央銀行がどれほどその責務をはたそうとも、一国の経済が成長し安泰でいられるとは思ってはいません。そのような傲慢な態度をもって金融政策を行うことは危険だと私は考えます。
 
 たしかに、円安・株高が多くの市場が期待しているのであるということは承知しています。
 しかし、中央銀行はそのような期待や要請に対して禁欲的でなくてはなりません。タガをはめなければ、あたかも大地震がいつか必ず起きるのと同じ蓋然性で、破滅的な事態をひきおこしてしまうでしょう。
 そのような事態にならぬよう微力を尽くす。これが中央銀行の使命です。
 
 私の指揮した金融政策に様々な批判があるのは承知しています。
 「金融緩和をどんどんやればいい」。
 こういうわかりやすい構図で解決できるほど、経済はわかりやすいシステムではありません。極端な例ですが、無期限に国債を発行し、日銀がそれを無制限に買い取るということになれば長期金利はどのようになるでしょうか。
 おそらくイールドカーブは跳ね上がり、日本国の財政が破綻します。
 そうなった時、国民の生活はどうなるでしょうか。日本円が貨幣としての信認を失うということは、あらゆるモノやサービスに値段がつけられないという原始的な状況を現出しかねません。
 
 私は、黒田新総裁を高く評価しています。
 日銀は大したことはできないことを知っていながら、大きなことをできるように思わせて「虚像」を最大限利用しようとしているのではないでしょうか。  
これは「学究肌」といわれる私には真似のできない、良い意味で政治的な振舞いですね。
 
 ところで、一般論としては望ましいことなのかもしれませんが、私の任期の最後の方で日銀を政争の具とした人々は、無邪気なまでに日本円を信認しています。
 日本円が信認を失った時にどのような事態になるか。
 目の前のトイレットペーパーの値段は明日になったらいくらになるかわからない、そうなれば目の前の商品を今のうちに買っておかなければならないという恐怖感に陥ることでしょう。物価の安定を信じることができないというのは、このような恐怖感にさらされることです。おそらく、トイレットペーパーは売り場から姿を消すことでしょう。
 
 日本銀行に過度の期待をするのは危険です。
 日本銀行のその業務内容の多くは、驚くほど事務的で淡々としたものです。日銀の重要な役割である決済業務は、その代表的な例です。
 おそらく、黒田新総裁もその点については熟知されていると思います。
 
 
2013年4月1日

 十年前の今日。mixiにアップした拙稿です。
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