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警察手帳の真贋鑑定は不可能

 ホンモノの警察手帳を初めて見たのは、2023年4月14日のことだった。
 
 つまり、民間人として大阪府警外事課の協力者だった頃(2006-2018)には、ホンモノの警察手帳を見たことがない。拙著のどちらかには、「神奈川県警のホンモノの名刺」を登場させていると思うが、「ホンモノ」だと大阪府警のカウンターパートの口から「ホンモノ」と告げられたから、「ホンモノ」であるにすぎない。

 
 識別する箇所を拙稿の中に書いてしまうと「警察官が差し出す『名刺』がホンモノなのか、筆者は知っている」などという誤報を広めてしまう。そうなっては防犯啓発(たとえば、特殊詐欺撲滅)という本稿の目的を毀損しかねないので、下記2点の拙著に書かれているのであれば、「見つけた」と個人的な場でひそかに笑みをうかべるにしておいてほしい。
「警察官の名刺」をつくることは、おそらく、読者のあなたにもできる。
小学生くらいであれば、学校で学ぶ知識を使うだけでできる。
警察官ゴッコをするのであれば、ソレっぽいデザインで、でもそれを大人がみたら偽物だとわかるようにつくってあげてほしい。
筆者は大阪府警の警察官に憧れていたので、大阪府警の1980年代の(おそらく)啓発イベントで写真いりの「自転車運転免許」をつくってもらった。「大阪府警」と書かれたハンコもおされていたかもしれない。しかし、本日(2024年5月)ならば、それは偽物だとわかる。たとえば筆者はホンモノの普通自動車運転免許証をもっているが、しるされているハンコは、「東京都公安委員会」だ。
 



 東京都内の場合、警視庁のイメージキャラクターのピーポ君が登場するイベントが行われていると想像する。かくいう筆者も、1月10日が休日となった日に小田急町田駅前をブラブラしていたらピーポ君が登場した場面に遭遇した。周囲にいた若い女性が、
 
「あっ、ピーポ君だ」
 
 とつぶやくほどには、警視庁は市井に浸透している。
 ドコモショップに行けばセキュリティーソフトのインストール販売ポスターに「警視庁推薦」と書かれていたし(2019年)、スーパーに行けば「万引きをすれば、すべてが終わる」というインパクトのあるポスターが掲載されているなど、地道な活動がうかがわれる。
 
 ある日のこと。
 三菱東京UFJ銀行(当時)のATMで忘れ物を拾得したことがあった。
 ATM横の電話で問い合わせると、
 
「交番に届けてください」
 
 と回答された。
 最寄りの交番に届ける。中身を確認する警察官。もう一人の警察官は拾得物に関する権利をどのようにするのかを筆者に尋ねた。筆者は「一切の権利を放棄する」(たとえば拾得物のバッグの中に現金100万円が入っていたとしても「御礼」はいらない)という趣旨の該当欄にマークをした(気がする)上で、直筆で署名した。
 
署名をしている時に女性が交番にかけこんできた。
 
「『三菱銀行』でバッグを置き忘れました!」
 
 正確にいえば「三菱東京UFJ銀行」(当時)なのだけれど、それはさておくとして。筆者が届けた拾得物が、交番にかけこんできた女性のもので間違いがないかどうかや、拾得物の処理に関する警察内部での書類のやり取りは、筆者が去った後のことなので、よく知らないし、知る必要もない。
 
 さて、このあいだで、「『警察官』が『警察官』であることを証明する」必要は、あっただろうか。
筆者が外事警察のカウンターパートと会食・情報提供・議論をする際。
 
「警察手帳を見せてください」
 
 と尋ねることはできただろう。しかし、「警察」に必要以上の好奇心を示していれば、初めて会った2006年のうちに何度かアイスレモンティーをごちそうになった程度で、「異動したのでお別れ」ということになっていたと思う。
 警察が必要性を感じるほどの情報・見識等を筆者がもっているから、勤務時間中に筆者に会うわけであって、その必要性がなければ、会う必要がない(これはどこの会社や役所などでも同じだろう)。ましてや、関心を示すということは、筆者がそれに応じるだけの「警察としての価値」があるわけであるから、たとえば筆者の背後にある「敵対勢力」のスパイとして警察情報に接することも考えられる、という程度には、「警察」は警戒心をもっていると思う。
 
というわけで、冒頭のような書き出しとなった。
 
「ホンモノの警察手帳を初めて見たのは、2023年4月14日のことだった」。
 
 特殊詐欺の一環として迷惑メールがきたので、テキトーに応対して、「お会いしたい」というセリフがでてきたところで、「『ロマンス特殊詐欺』の事案として、町田警察署に捜査協力を申し出ようとした」のである。
なんだかんだいいながら、私は、警察が好きなのだな。
 
 応対した若い警察官は、町田警察署の構内で、突然、「警察手帳」を筆者に提示した。
 
「『警察手帳』を見たのは、初めてだ」。
 
 そのことに思い当たった瞬間には、彼の警察手帳に書かれていたかもしれない所属・階級・名前などは、一文字も見えなかった(筆者の裸眼視力は0.05未満。自動車を運転する際には0.7以上になるように眼鏡を着用している)。
 
 彼は、メンドくさそうに、筆者が持参した「証拠メール」を、筆者が回答するままに、淡々と削除して対応した。
 どうやら、本当に、お時間をとらせるだけの、招かざる客だったらしい。
あの時は、ごめんなさい。
 
 ただ、あの時間をいただいたことで、筆者は声を大にしてnoteというサイバー空間で訴えることができる。
 
「私服刑事を名乗る人物が、『警察手帳』を提示しても、それはホンモノなのかどうかは、わからない」。
 
特殊詐欺の撲滅にはお役には立てないが、市井の民間人の防犯活動としてはお役に立ててるなら嬉しい。

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