「保護責任者」とはどういうものだろう

障害児を持つ親として、昔からよく考えることの1つだ。
　
◆コトバンクには
　
老年者・幼年者・身体障害者・病者など
保護を必要とする者の生命・身体を危険から守る責任。
刑法218条で保護責任者に課せられている法律上の義務。
要保護者を遺棄したり必要な保護を行わなかった場合、
3か月以上、5年以下の懲役に処される。
　
とある。
親ではなく、兄弟や親戚が、
「一人で暮らせないだろうな」と思うレベルの弱者を、
放置したら罪に問われるのかどうか。
ケースバイケースなのだろうけど、よくわからないでいる。
　
　
以下は、今日の出来事です。（長いです）

恵比寿にいるホームレスの話

恵比寿に、裸足の若いホームレスがいる。
25歳〜35歳ぐらい。175〜178cmぐらいで痩せ型。
私自身が見かけるようになったのは今年4月ごろからだが、
「裸足」「恵比寿」でツイ検索すると、
彼のことだと思われる目撃情報は去年の6月からすでにある。
　

寒い日も暑い日も裸足で、汚れたカーキ色の上下で、
髪は伸び放題で、ぼさぼさでひどく絡まっている。
明らかにお風呂に入っていない黒ずんだ顔と手足。
公園の水飲み場で顔や足を洗ったりしていて、
私は次に見かけたら、声をかけようと思っていた。
様子や表情からして、おそらく知的障害があり、
捜索願とかが出てるかもしれないと思っていたから。
でもいつも、遭遇するときは仕事に行く途中だったりして、
なかなか手を出せずにいた。
　
今日、夕方郵便物を出しにでたら、
うちのマンションの前で、彼が自転車を盗もうとしていた。
自転車の鍵をがちゃがちゃといじり、開けようとしている。
彼の自転車じゃないことは明白だった。
エリア担当の佐川の配達員と、ヤマトの配達員が、
それぞれちょっと離れた場所からその様子を見ていた。
地域では、みんな見かけてるんだろう。
　
私は時間があったので、警察を呼んだ。
警察が来れば、保護してもらえることも期待できるからだ。
通報すると、最低でも30分は拘束される。
今日はたまたま時間があるから対応することができた。
佐川さんのほうに「警察を呼びました」と伝えると
「見てましたので私も証言できます」と答えてくれた。
「私もよく見かけるやつなんです」と。
　
「おそらく知的障害があると思われるホームレスが、
目の前で自転車を盗もうとしています」
と通報すると、すぐに向かわせますと返答があった。
　
しかし、警察が向かってる間に、
なんと彼は3桁の数字を合わせる鍵を開けてしまった。
逃げちゃうと保護できないと思い、咄嗟に
「ねえ、あなたのじゃないでしょう？」と声をかけたら
ふらふらと立ち去ろうとしたので、
佐川さんと２人で服を掴むなどしてつかまえた。
「保護してもらおう？」「助けてもらおう？」と
声をかけたけど、事態がよくわかってなさそうだった。
　
そうこうしてるうちに警官3人が到着し、事情聴取が始まった。
彼は一言も話さない。たぶん、話せない。

「名前は？」
「何歳？」
「どこからきたの？」
　
警官たちがちょっと強めに怒るように聞くので、
私は「怖がらせないでください」と言わずにいられなかった。
「自閉症があるなら、筆談なら答えるかも」と言ってみた。
すると、
彼は警官の1人が渡したノートとペンを使い、
名前、生年月日、住所、電話番号をちゃんと書けた。
27歳だった。
　
そのタイミングで、運良く自転車の持ち主が現れた。
その方が「事件にしない」と答えてくれたから、
彼は逮捕されずにすんだ。
　
逮捕されないけど、身元不明の、おそらく障害者なので、
警察は署に連れ帰り、彼の身元を詳しく調べるとのことだった。
かれこれ1時間ほどで、私も解放された。
　
　
「この住所に親はいるの？」という質問に、
彼は小さく首を振っていた。
捜索願も出てなかった。
住所はすぐ近くだった。寝起きは家でしているらしい。
電気と水が止まっているから、公園の水を使っているのだとしたら、
親が死ぬなりし、親戚が放置したのではと推測された。
　
　
彼は誰か身元引き受け人が見つかるのだろうか。
見つからない場合、どこかの施設に入れるだろうか。
　
もし遠い親戚などが連絡をもらったとして、
その人に「保護責任」などあるんだろうか。
いまの苦しい生活の人が多いこの国で、
親戚の面倒を見ろというのは酷なように思えた。
それはもちろん兄弟でもそうだ。
　
帰宅してからも、やはり色んなことを考える。
全然、まったく、ひとごとじゃないので…。
　
　
ホームレスの半分以上が、
知的障害・精神障害・認知症の人だということは
もっと広まって欲しいことの1つです。
 
もしうまく保護されず、また彼を見かけるようなことがあったら、
そのときはホームレスの支援団体と繋げられるように
連絡先などを準備しておこうと思っています。

彼がどこかの施設に入れて、馴染めるように祈るばかりです。。