国富の流出を止めるには上ではなく下を見るしかない

田中角栄の日本列島改造政策によって投機ブームが起き日本の地価は上がったと言われます。地下高騰対策として国土法などが制定されるもうまく機能せず、1980年代後半のバブル景気の素地となったとも言われます。バブル景気です「地下は決して下がらず上がり続ける」という土地神話によって地価の高騰が続きました。このバブルが弾けたのは1990年8月当時の「公定歩合」という現在で言う「政策金利」を6%に引き上げたことで、借り入れに頼っていた不動産投棄者の支払い可能額が下がったこと、そして旧大蔵省が金融機関に対して不動産向け融資に対する総量規制を行ったこと、地価税が導入されたことで不動産価格は高騰から一転して下落を始め、株価とともにバブルが崩壊した。このように政府は無制限に高騰していく地価になんとか歯止めをかけようと様々な手を打っていたようですが、金利が上昇するまで投機熱が冷めることはなく、民間の方で自爆したような格好となっています。

政府としても物価高騰=インフレが続くとそれを抑制せざるを得ず金利を上げますが、そうすると今度は住宅ローンなど借り入れのある者の支払いが厳しくなるという問題があり、また日本は長年経済成長が止まったままでありゼロ金利が続いてきました。そこへ来て世界的なインフレですが、これは明らかにコロナ禍によって欧米を中心として政府が給付金をばら撒いた結果であり、コロナ禍はワクチン薬害の問題が取り沙汰されますが、今後は円安などの為替によって政府も金利を上げざるを得なくなり、住宅ローンの支払い困難者が増えることが考えられます。

ではどうすれば良かったのかと考えると、日本も欧米並みに給付金をばら撒けば自ずとそれに見合った景気上昇、インフレが起きただろうと思いますが、ばら撒く先を住宅ローンの支払い世帯などにしておけばソフトランディングする効果はあったのかもしれません。しかしそんなことがモラル上も可能かというとそれは難しく、つまり長期の経済低迷とそこへ来ての世界的なインフレはもろに日本の住宅ローン支払い者を直撃することになりそうです。

儲けた者勝ち、ばら撒いた者勝ちの世界の様相を呈していますが、私は経済を世界的に考えるなら各国で歩調を合わせた給付をするべきだったと思いますが、もちろん背後に何らかの意図があるとするならそのような共同歩調は取らないでしょう。

失われた30年の間に多くの人がマイホームを手放さざるを得なくなったようであり、もう10年も前から債務整理や任意売却の問題が取り沙汰され、その生々しい生活の様子がドキュメント番組となってYoutubeでも多く見られました。ローンを組んだ当初は仕事も順調で生活にも余裕があったことから旅行やスキーへ出かけるなどの充実した生活が続いていたところ、不況の波がついに会社にも波及し、賃金が上がらなくなる。次第に充実した生活を送れなくなり、最後は経営難によって賃金が下がるなど次第にローン支払いが苦しくなっていく生々しい様子で、そういったことから多くの教訓を得られるだけに多くが消されてしまっていることは残念です。旅行へ行ったりスキーをすることがステータスを競うものかどうかは微妙でが、一旦住宅ローンを組むと、それを手放さざるを得なくなる時は何重にも苦しむことになり、なるべく倹約してローンの繰り上げ返済に全力を尽くしていれば或いは破綻を回避できたのかもしれない。

日本のGDPは世界で三位でしたが、今年はドイツに抜かれて4位になるとIMFは予測しているようです。いよいよ人口8300万人のドイツに抜かれる時がやってきそうですが、私はこれにもステータスを競い合ったことが関係していると見ており、ネット上ではあまり詳しい品目の情報は見当たりませんが、対ドイツの貿易収支は長い間赤字となっているようです。2018年には現在のレートで7500億円の赤字、さすがに2020年以降漸減してますが、それでも2022年の赤字は現在のレートで4800億円となっています。日本はステータスを競い合う間に国富を流失させ続けたということかもしれません。

そのステータス競争の総本山のような芸能界ですが、NHKの受信料収入はほぼ公共料金となっていますが、昭和の時代の紅白歌合戦では受信料を支払う人からの人気が概ね出演者として反映されていたと考えるならそれほど違和感はありませんけど、価値観が多様化した現在では法律によって定められた受信料で、特に何らの選挙的過程を経ずに特定の芸能人が出演することに違和感を抱かずにはいられません。民放は受信料を支払う必要こそないものの、結局消費者の支出によって支えられた企業からのスポンサー収入で成り立っており、これも価値観の多様化した現代では違和感を覚えることが多々あります。複数のテレビ局を出入りする、しょーもないにこにこ駄洒落プロデューサーなどが幅をきかせていそうであり、私は放送業界全体に日本人を逆差別する意志を見てとる。一時期は本当に酷いものがあった。

私はブランドの価値というものは丈夫だとかデザインが良いといった実利面の他に多くの人から支持される故にステータスを争う効果も大きいと考えており、これは土地が高騰する理由とも似ており、だからこそ一部地域は人気や将来性があることが前提としても投機対象となり、ブランド品では一般的には高価な値付けがされていることから投機対象とはなりにくいですが、それでも一部のものではプレミアが付いたりプレミアを狙ったりすることがあるそうで、こういったことも土地と同様に投機と見なせるでしょう。

尤も土地にしてもブランド品にしても良い土地や良い品物に良い印象を持つことは自然なことでもあり、また土地やブランド品の所有者が高い値を付けられれば売却することも自然なことではあります。ではどこに問題があるかと考えると、バブル崩壊の例でもそうですが、借り入れをしてまで投機対象としようとすることが社会全体の崩壊を招くということではないでしょうか。上がり続ける地価に誰かが借り入れてでも投機しようとするなら、それに続く者が現れるのは必然で、だからこそ再現なく価格が上昇して最後は政府による規制によって相場が暴落し、破綻者が続出する。お金を貸す側も貸す側であり、もちろん金利を取れて利益を上げられるから貸し出すのであり、それが結局投機にしか向かないのであれば、根本的な原因は金利を取ることにあるのではないでしょうか。

我々は高価なもの、高級なものを嗜好して物質的に上昇しようとするのではなく、廉価なものを嗜好して余った資金で現在なら環境問題へアプローチしてみたり、むしろ自分よりも経済的に余裕のない人達に「無利子」で経済的支援をすることが、利子を取る金融業界のトップに君臨する勢力の力を削ぎ、それこそが我々が全体として経済的困窮から抜け出すための唯一の方法ではないかということが私の結論です。ただ、それはもの凄く難しいことなのは事実でしょう。しかし少なくとも我々は少しずつでもそのような方向を目指さなければ永久に金融業界からの支配を受けることになるでしょう。