とんびへの愛

海辺の地に住み始めてもうじき1年。
トンビの声を聞くことがとても多い。家の中にいても窓が開いてさえいれば
聞こえるその声。

それを聞くと心の深いところから喜びが湧く。

ほっこりするとか、癒されるとか、そんなゆるーい感じじゃなくって、
嬉しくって、さっと居住まいを正す感じの喜び。

ここで暮らす前、
私にとっては、とんびって、江ノ島や鎌倉で観光客の手から食べ物を奪う
ずる賢い鳥ってイメージだった。
そしてその姿は何度も見てきたけれど、鳴き声をちゃんと聞いたことは
なかった気がする。

でも、ここに引っ越す前、その声を聞いて驚いた。
何かの啓示かと思った。

私にとって彼らの声は美しく神聖なものに聴こえる。
空に抜けていくように響いていくことにまだ毎回感動できる。

「ピーヒョロロー、、」ちょっと違うんだけど、
でも、文字で泣き声を表現しようとするとこうなっちゃうのだけれど、

もっと崇高な音なのだ。
この「ピーヒョロロー」の後ろに「カーン」って音が
響くのだ。険しい山の深い谷底に響くようなちょっと乾いた余韻の残る倍音。
そんな音が私には聞こえる。

ここに暮らせてよかった。

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