見出し画像

麻薬の売人(自称)とバンドを組んだことがある。

昔々、22,23歳くらいの頃、麻薬の売人(自称)とバンドを組んだことがある。
バンドといっても売人の彼がエレキギターと、ぼくがドラムの二人のユニットだ。

確か、三軒茶屋のライヴハウスHeaven’s Doorに他のバンドで出演したときに、ぼくのドラムが良いと思って声をかけてくれたんだと思う。

年齢はぼくよりも少し上くらいだったか。
彼はぼくを本名の下の名前で呼び、ぼくは彼を名字で○○さんと呼んだ。
「○○さんじゃ遠い感じするから俺も名前で呼んで、あとタメ口でいいから」と言われた。
タクヤ、みたいな名前だった気がする。
なんだか恥ずかしくて、名前で呼べなかった。

練習のために入ったスタジオのあとに、
少し話そう、とスタジオのエントランスで缶ビールを飲みながら、
彼が今後の構想などを話してくれた。
ベースレスの二人編成でライブをやりたいとか、こんな音でのレコーディングしたいとか、よくある話だ。
そんな中で彼がふと「おれ、麻薬売ったりしてお金稼いでるんだよね。」と言った。
「え?」
そんな人間に出会ったのは初めてだった。
「歌舞伎町とかでね。」
「へ、へえ。。」
「何か欲しかったらあげるよ。○○(ぼくの本名の下の名前)はやったことある?」
「いや、なにもやったことないっす。」
「じゃあ、これ、ジョイントあげるよ。家で吸うだけなら問題ないから。」
と、マールボロのたばこの箱を手渡してくれた。
「でも、どうやったらいいの?」
「普通にたばこみたいに吸えばいいんだよ。でも、深くまで吸って5秒数えるとよく酔えるよ。」
「へえ、ありがとうっす。」
「他にも欲しいものがあったらあげるから。でも、覚せい剤だけはやっちゃダメだよ。○○はマトモな人だから。あれだけはダメ。」
「そうなんすか?」
「あれやっちゃうと、縄でしばって家から出られないようにしなきゃいけなくなる。相当面倒だし、相当苦しいから。覚せい剤だけは絶対にダメだよ。」

麻薬の売人という「悪い商売」をしているのに、中学で見させられる麻薬ダメ絶対ビデオと同じ、すごく真面目なことを言うんだな、と思った。

家に帰って、友達を呼んで、見た目は煙草と変わらないジョイントに火をつけて吸ってみたけれど、なぜか何も効果がなかった。本物だったのかわからない。

何回かスタジオに入ったりしたけれど、彼の要求に僕が応えられなかったのか、ぼくが飽きてしまったのか、売人というのが怖くて連絡をとらなくなったのだったか、1ヶ月後にはスタジオに入らなくなっていた。
そのままもう会っていないし名前すらも覚えていない。
ただ、彼のギターの音が妙にハイな不思議な音色だったのと、「覚せい剤だけは絶対にダメ」という言葉だけが強烈に残っている。

==============

先月から無収入になりました。よかったらサポートお願いします。

https://magicaldoughnut.stores.jp/
にてグッヅの販売もしております。

お返事はこちらまで。
adcr3o@gmail.com

=====================

こちら再生いただくだけでも、励みになります。

あだち麗三郎集大成4th アルバム『アルビレオ』。

Apple Music
https://music.apple.com/jp/artist/%E3%81%82%E3%81%A0%E3%81%A1%E9%BA%97%E4%B8%89%E9%83%8E/731892793


Spotify
https://open.spotify.com/artist/03lyogJ68lBASFzxRFVXuc

=================================


.+゜*。:゜+*☆○o。 。o○☆* +゜:。*゜+

http://www.reisaburo.info

=====================================

.+゜*。:゜+*☆○o。サポートいただけると励みになります。o○☆* +゜:。*゜+