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卒業式の朝、藤井風「満ちてゆく」MVを見て泣いた息子

満ちてゆく。
なんとも美しい日本語のタイトル。
藤井風の新曲「満ちてゆく」のMVが、3月15日0時、解禁となった。
0時まで起きててもよかったんだけど、なにしろ我が家は15日にスペシャルイベントを抱えていた。
息子の中学校卒業式。
なのでとりあえずしっかり寝て体力つけて、翌朝、朝食をとりながら、家族全員でyoutubeに見入った。
そう、実はうちの子、すでに進路が決まっている。
第一志望校に合格したお祝いに、初めて風さんグッズ(my flower's here と書かれた帽子と、ミッチャムの付箋)を買い、情報系の学校なのでお高いPCも買わされ、さらに勢いに乗ってchromecastも買っちゃったため、リビングのTV でyoutubeを見られるようになったのである。
さてさて。ドキドキ。
こちらです↓

見終わり、ふと息子を見やると、
「泣いちゃう……」
え!?!?!?
涙をこぼしている。
あららららら………。あんたどうすんの、卒業式で泣く分の涙、ここで全部使い切っちゃったよ💦
私なんてひたすら「はぁーーー………」と見とれてるだけだった。
わが子の感受性の強さに感心しつつ、卒業式に臨んだ。
卒業式の合唱で「旅路」を歌うという夢は叶わなかったわが子だが、立派に卒業証書をもらって帰った。
その卒業証書を義父に見せるため、夫と息子は施設に出かけて行った。
さてその間に、もう一度またもう一度、じっくりこのMVを見てみようか。

(以下はあくまで私の解釈です)
若くして亡くなった母親の面影を追い求めて生きた一人の男性の生涯。
母と暮らした街(NYかな?)で、ビジネスマンとして働く若き日の男性。
しかし仕事は上手くいかず、断られたり叱られたり、酒場でやけ酒飲んで酔いつぶれ、客と小競り合いになったりもする(この場面の演技が秀逸。ちなみに風さんはお酒を飲みません)。
疲れ果てて帰りの地下鉄の中、ふと母親に似た女性を見かける。「いるはずないよな」と思いつつも、やっぱり気になって追いかけてしまう。
母に連れてってもらった思い出の楽器店。母と弾いたピアノを弾きに、今でも一人で訪れたりする。
そんな暮らしを送っていた彼だが、教会を訪れ、ふと気づく。
母は自分の中にいる。ずっと見守ってくれている。何もかも与えてくれている。
別れは避けられない。避けがたくすべて終わりが来る。 
手放そう。悪い意味での執着を。
解き放たれ、再び走り出す青年。
やがてそんな彼にも人生の最終章が訪れる。
老人施設のような所で穏やかに暮らす彼(特殊メイクで老人に扮した風さん! 仕草や表情はいつもの風さんだが、ふとした動作に老人らしい緩やかさが。演技派だなあ)。
自叙伝か何かをノートに書き連ねていた彼は、ついに力尽きる。
彼に優しくストールをかけてくれるのは、亡くなったはずの母親。息子を迎えに来たかのよう。
やがて二人ともいなくなった部屋。

この曲は、3月22日公開の映画「四月になれば彼女は」の主題歌であり、監督を務める山田智和氏がこの曲のMVも手掛けている。
だからというわけでもないだろうが、「四月に……」のアナザーストーリーかのような、本当に短編映画のような作品だ。
このMVもそうだが、藤井風のMVって、歌ったり演奏したりというシーンが意外と少ない。
おそらく「MVとは歌ったり演奏したりという姿をパッケージングするものではない。その曲の世界観をアーティスト自身の身体で、演技で、ダンスで、演出で、衣装で、表現するものなのだ」という姿勢のもとに作られているのではないだろうか。
前作「花」で、これ以上ないだろうというほどの憑依型演者っぷりを見せつけてくれたはずの風さん。これまた違うベクトルの、「俳優さんじゃないよね?」と見まがうほどの演技で我々を魅了してくれた。
淡々と呟くようなAメロから、本当にゆっくりと静かに盛り上がっていく曲も素晴らしい。
並のクリエイターなら、プロデューサーなら、もっと仰々しい盛り上げ方をしてしまうはずだ。
歌の主人公、聴いている我々、映画の登場人物たち、すべてにそっと寄り添うような、誰をも置いて行かないような…………まさに静かに「満ちてゆく」一曲。
手を放す、軽くなる、満ちてゆく。
春先の青空に心が解放されていくように。

冒頭に、義父が施設に……と書いたが、実は義父はもう長くない。
脳梗塞で倒れたのが10年前。
5年ほど前から腎不全も併発し、人工透析を受けていたのだけれど、それにも耐えられる体力がなくなり、人工透析を中止したのが一週間ほど前。
人工透析をやめるということは、人生の終わりへの、そう長くないカウントダウンが始まったということだ。
ほとんど昏睡状態といってもいい状態なんだけれど、耳ははっきりしていて、特に息子(義父にとっては孫だ)が話しかけると明らかにリアクションが違うのだ。
息子にとっても大切なおじいちゃん。
そんなおじいちゃんを想い、「満ちてゆく」のMVに自分の心情を重ねたのだろうか。
「にしな」さんの曲を車中で聴きながら涙ぐむ風さんの写真がインスタグラムに上がってたけど、同じような表情でぽろぽろ涙を流してる息子を見て、胸がいっぱいになってしまった。
元気だった頃は、畑で採れた野菜や果物をうちまで持ってきてくれた義父。素朴で武骨で優しかった義父。
ありがとうございました。
できれば、志望校に入学した息子の姿を見てもらいたいけど……。

(追記)
FM802「FRIDAY CRUISIN' MAP」(3月16日)にゲスト出演した、山田智和監督の言葉↓
「とにかく藤井さんの演技力がすごすぎて、今回脚本を書いて臨んだんですけど、明らかに僕の想像をはるかに超えるような表情だったりお芝居をその場で風さんが表現してくれたので、そこにはほんとに、映像監督としてもびっくりしました。演技であり表現力であり」
やっぱりね……😊 うれしいコメントだなぁ。
山田監督といえば「”青春病”」のMVの監督であるわけだけど、あの頃の風さんとはあらゆる面で段違いの成長を遂げてたんだろうな。
「”青春病”」のMV撮影がすべて終了した途端、誰よりも真っ先に泣き出してしまった風さん😢
あんな可愛かった彼が、全方位的に頼もしい表現者に成長し、山田監督もおののいたんだろうな。
そんなMVを享受できる私たちファンは幸せだ。さて、もう一回見てこよーっと🎵

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