見出し画像

「見せ菓子」よ永遠に

見せ菓子

それは

今日は配らないが机の上に置いておくことで
明日以降に配ることを仄めかすお菓子

のことである

わたしはこの言葉がだいすきだ
いや正しくは
こういう言葉がだいすきだ

あるちっぽけな界隈であるちっぽけなことを
言い表したいがために生まれた言葉

それに出会うたびに
私はこのために生きているとさえ思う

なんで愛おしいんだろう

見せ菓子
みせがし

この言葉を作ったのは
今の私の主力となる分人を作ったのと同じ
職場のお姉様方だ

お姉様方の逸話はほんとうにたくさんあるが
それはまたゆっくり

さて

見せ菓子よ永遠に
ということは
見せ菓子が永遠ではなくなるということだ

そう

値上げの波が私の職場にも押し寄せたのだ

それは突然だった

「お菓子も値上げしたことだし、
もうお昼にお菓子配る習慣やめにしない?」

お姉様から終菓子宣言が発表された

お菓子を配らないということは

お菓子を配らずに見せるだけという現象もなくなるということだ

見せ菓子という言葉が役目を終えた瞬間だった

私は涙をこらえて残りの焼きうどんを啜った

ダシの風味が鼻を通り抜けていった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?