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瑠璃の部屋79

カラスが、苛立つように鳴いていた。
美鶴さんが墓へのお供えに群がるカラスを追い払ったら、それ以来、花を筒から抜いたり、筒自体を脇に放ってみたりされるようになった。「バカー・・バカー・・」と聞こえるので、空耳かと思っていたら、遅れてきた旦那さんが「あんた、バカー・・バカーと言われとるやないか」と笑うので、確信したらしい、カラスは頭がいいと。そんなことを思い出していたら電話があった。
 「街でもカラスが出るの?」と不思議がるので「燃えるゴミ、狙ってくるし、朝は鶏の代わりに鳴いてますよ」
「しばらく連絡しなかったけど、最近はどう?」

 昨日、トイレの水桶の中の漏水を部品交換してもらったけど、ギターの修繕をしたものかどうか迷っている話をした。象牙の部分が10cmほどで15,000円。その他にもひび割れやら、傷があるから高くつきそうだと。見積もりをためらっていると。指摘されたら直したくなるに違いない。でも、あちこち傷があったり、それは俺も同じだ。それが表面上か否かの違いだけだ。そこは、飲み込んでおく。

トイレの水を流すと、心地よくキュッと止まる音がするようになった。中の浮球は部品ごと交換されてスマホを大きくしたような四角いケースになった。溜める水量も減った。1リットル以上減ったかな。節水が叫ばれる前のものだったのだろう。

1日に少なくとも3回流すとして、1ヶ月で90リットル・・・などと、考えていたら、中学の自由課題で、口にするものの量と尿の量を測って発表したのを思い出した。トイレに行く都度、尿の量を測る。

「今度は、弟にも協力してもらって複数の結果を出したいと思います」

次の年だったか、その時は、塩と砂糖の溶ける実験を発表した。極めて、つまらなかったらしく「前回のほら、尿のはどうしたの?」と聞かれた。
「弟の協力が得られなかったんです」

そう答えたが、弟は承諾してくれていた。
ただ、こう言われたのだ。
「うん。いいよ、でもカップは、お兄ちゃんが持ってね」