モラハラを受けている隣人にあなたができること

質問「モラハラを受けていることに気づいていないAさんに、どういえばいいかわからない。Aさんの話を聞いているとこちらが辛くて、それはモラハラだといいたくなるし、反面、それはショックな内容なので、Aさんには受け入れられないのではないか、このまま黙っておいたほうがいいかとも思う。どうすればいいかわからない。」

モラハラが厄介なのは、そのわかりにくさにあります。

しているほうも、されているほうも、その周りにいる人たちすらも「それも愛情の形なのだからいいじゃないか」という程度に認識していることが多く、それが暴力であることに無自覚なため、暴力に歯止めがかかる余地がないところが、モラハラのもっとも厄介なところです。

そこに「それモラハラじゃないの」と気づいたあなたが居合わせたのは非常に幸運なことです。Aさんにとっても、あなたにとっても、気づきのチャンスがやってきたということです。

モラハラ被害者のAさんにできることは、あなたがまずAさんを尊重することです。

たとえば、次のようにAさんに伝えることができます。

「私はあなたのことを大切に思っています。私は、あなたがどんな選択をし行動をしたとしても、あなたのことが大切です。私から見て、もっとこうしたほうがいいなあと思うことがあれば言うと思いますが、それは、あなたを変えるためにいうのではありません。私は何もあなたに強要しませんから、安心してください。あなたはどんな選択をする自由も権利も持っています。そして、助けが必要なときは、私はできるだけのことをして協力するつもりですから、ぜひ一人で抱え込まず、私を呼んでほしいと思っています。」

こうすることで、あなたとAさんとの間に、なんでも話せる場が出来上がるといいと思います。

そののち、Aさんから助けてほしいという訴えを受けたり、あなたが見かねる状況があったとき、以下のように言うことができます。

「Aさん、私は、あなたが受けているのはモラハラという暴力だと思います。それについて知りたければ、私が知っていることを教えられるし、一緒にもっと調べることもできます。もしあなたが、今までのままが良いと言うならそれを尊重するけれど、私は、本当のことを知ってからそれを選択することもできるから、まずは知るだけでも、してみてはどうかと思いますから、心の準備ができたら言ってください。」


モラハラ環境とは「ある人に対する尊重がない環境」です。

あなたがAさんを大切に思うならば、まずあなたがAさんを尊重することです。それによって、すくなくとも一人は、Aさんを尊重する人ができることになります。

「あなたがAさんを尊重する」とは、「Aさんが、あなたと違う存在だとわかったうえで、Aさんに思いやりを示すことであり、Aさんが自己表現するのに必要なスペースを確保することを認めること」です。

Aさんは、自分で選択する力を持っているはずですが、モラハラを受け続けた人は、一人前として扱われた経験がなく「自由に余裕を持って選択させてもらえた経験」がないはずです。

モラハラにより、Aさんは相手の気に入る行動をとろうとする癖がついているでしょうから、いきなりあなたが「あなたモラハラ受けてると思うよ、逃げる?それとも今のままがいい?どうしたいか自分で決めてね!」といっても、あなたの顔色をみながら、あなたの望みそうな答えを返すのみで、それはAさんの自由な決断とはいえないかもしれません。

なので、その話を始める前に、あなたとAさんの間では、なにを話してもいいのだ、という安心感のある関係性を作る必要があります。

Aさんを尊重した言葉をかけ、Aさんの答えを待つことが、「選択するスペース」を作ることになります。

そののち、あなたからAさんに思うことを、自分の意見として伝えていくと良いと思います。

この、尊重する、本人の意思表示を待つ、というプロセス抜きで、「それモラハラでしょ!逃げなきゃダメだよ!」と言うのは、むしろその行為じたいがモラハラともいえるのではないでしょうか。

以前、相談員をしていたときに受けた相談で、以下のような内容のものがありました。

「私は夫と別居したが、本当は夫とは別れたくなかった。でもカウンセラーが別れなさいというのでそうした。今は後悔している。癪に障るのは私に別居をすすめたカウンセラーは別居も離婚もせず夫婦で暮らしていることだ。私の気持ちなんかわかるわけがない」

これはそのプロセスを踏んでいれば、避けられたかもしれないと思います。

大切なのは、先を急がないこと、結果だけを求めようとしないことです。こうしたプロセスを経て、Aさんも、あなたも、あなたとAさんの関係性も、少しずつ成長していくのです。

そして、、、。

あなたがAさんを尊重しようとするとき、あなたがあなた自身を尊重していなければいけないということにも直面するでしょう。

つまり、Aさんを尊重することは、あなたがあなた自身を尊重することを学ぶために起こったできごとだとも言えます。

出会う人はすべて自分の姿を映す鏡ですから、丁寧にAさんやあなた自身と向き合う機会を作っていただきたいと思います。

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