【創作】(仮)偏差値=寿命の世界
■1話 ヤンキー
「もうすぐ死ぬのか…」
晴天の空の下に、この世界では珍しい金髪にリーゼントの昭和の漫画でしか見たことがないような髪型をしたヤンキーが土手に座ってため息をついていた。
「勉強は好きになれないんだよなぁ…」
ヤンキーは新品の参考書を川に投げた。
キラキラと輝く水面に『猿でも長生きできる!』という参考書の文字が光の反射をしながら遠くに映る。
「俺も男だ!!腹くくるか!!勉強して少しでも長生きするなら、俺はバイク走らせて短い人生でいい!」
昨年の夏にヤンキーは親友を失った。
23歳という若さだった。死因は老衰。23歳という若さだったがヤンキーの親友の偏差値は23。勉強嫌いの親友の人生はこの時間しかなかったのだ。
23歳の誕生日と同時に親友は亡くなった。
最後の最後までヤンキーと共にバイクを走らせ、まだまだうだる熱さの夜、0時ちょうどにたまたまバイクを止めていた近くのコンビニの店の前でパタリと息をひきとった。
ヤンキーもその親友もいつどこで死ぬのか ということはおおよその検討はついていた。それでも、勉強をしても意味がない。勉強をしている時間に対して効果が少ないのだ…それは勉強法が悪いのか、はたまたただ頭が悪いだけなのか…
だったら好きなことをして太く短く生きよう。二人でそう決心し、ヤンキーの親友は一昨年に亡くなった。
そしてヤンキーの偏差値は25
25歳の誕生日まであとわずか1年。
彼はこれからの1年間を親友のない世界でバイクを走らせても虚しいことに気付いた。だったら少しでも長生きするために勉強するか…いやどちらにせよつまらない世界なんだ、、、長生きしてもしょうがない…
そんな葛藤を毎日毎日頭の中で巡らせていた。
そしてまた、ヤンキーはバイクを走らせた。晴天にバイクのエンジン独特の破裂音がひろがっていく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?