見出し画像

【手内在筋拘縮に対する理学療法案】解剖学的知識から評価、アプローチ案まで解説|2022.11.24配信

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。


はじめに

グーはできるのに、手を開くと指先が曲がらない、、、

手内在筋拘縮に関する知識がせんぜんない、、、


ちょっとした事を調べるために、参考書を買うのは高いし、


自分の持っている本や、職場にある本から勉強するのは、時間がもったいないですよね。


かといって何も調べず、知らない事をそのままにしていくと、


分からない不安が溜まり続け、


同僚に差をつけられない、後輩に指導出来ない、、


などなど、大きな問題になりかねません。


この動画では、手指の拘縮に関して、


最低限必要な知識と、評価、介入案を、


無駄な説明は省き、整理して詳しく説明していきます。


ちなみに「りはメモ」の活動内容はこんな感じです。


Instagramでは、2000人以上の方に支持していただいています。


有益な情報を見逃したくない方や、時間を無駄にしたくない方は、


ぜひチャンネル登録して頂き、応援して下さると幸いです。


ではでは、本編に進みましょう〜。

本編

手内在筋の解剖学的知識

手指の拘縮に関わる筋肉は大きく、


手外在筋と手内在筋に分けられます。


手外在筋は、手関節よりも近位に筋腹があって、それが腱になって手に付着する筋肉で、


手内在筋は、起始と付着部の両方が手に存在する筋肉になります。


手外在筋に該当する筋肉はこんな感じ。


  • 長掌筋

  • 橈側手根屈筋

  • 尺側手根屈筋

  • 長橈側手根伸筋

  • 短橈側手根伸筋

  • 尺側手根伸筋

  • 総指伸筋

  • 示指伸筋

  • 小指伸筋

  • 長母指伸筋

  • 短母指伸筋

  • 長母指外転筋

  • 浅指屈筋

  • 深指屈筋

  • 長母指外転筋


手内在筋に該当する筋肉はこんな感じ。

  • 短母指屈筋

  • 短母指外転筋

  • 母指内転筋

  • 母指対立筋

  • 小指外転筋

  • 短小指屈筋

  • 小指対立筋

  • 虫様筋

  • 掌側骨間筋

  • 背側骨間筋


今回は、手指の拘縮の中でも


手内在筋の拘縮をテーマとして扱っていて、


(手内在筋の拘縮というのは、MP関節を伸展位にした時に、


PIP関節とDIP関節が屈曲しない状態のことですね。)


手内在筋の拘縮について話を進める時は、特に「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」がポイントになるので、


今日は、この3つの筋肉について説明を進めていきます。


それぞれの解剖学的知識はこんな感じ。


まずは、虫様筋について。

起始:深指屈筋腱

停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底

神経:尺骨神経 C8~T1

作用と特徴:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に作用する

第1掌側骨間筋腱は示指尺側を走行する

第2・3掌側骨間筋腱は環指と小指の橈側を走行する


次は、掌側骨間筋。

起始:示指中手骨の尺側、環指・小指中手骨の橈側

停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底

神経:尺骨神経 C8~T1

作用と特徴:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展、手指の内転に作用する

第1掌側骨間筋腱は示指尺側を走行する

第2・3掌側骨間筋腱は環指と小指の橈側を走行する


最後、背側骨間筋について。

起始:母指から小指の中手骨の相対する面

停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底

神経:尺骨神経 C8~T1

作用と特徴:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展、手指の外転に作用する

第1・2背側骨間筋腱は示指と中指の橈側を走行する

第3・4背側骨間筋腱は中指と環指の尺側を走行する


さて、なぜこの3つの筋肉が、手内在筋拘縮に関わるのか、


グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない症例に関わるのか、


疑問を抱いている事でしょう。


評価方法も含めて次の章で説明するので、安心して下さい。


この章では、


手指の拘縮には、手外在筋と手内在筋が関わり、


その中でも、内在筋に該当する「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」が、


手内在筋拘縮ではポイントになる。


ここまで、押さえられればOKです。

手内在筋拘縮の正体と評価方法

手内在筋拘縮の正体

まずは、手内在筋拘縮の正体について。


「指先が曲がらない=指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態(屈曲制限=屈筋群の筋緊張<伸筋群の筋緊張)」

「なぜグーはできるのに手を開くと指先が曲がらないの?」


この2点が押さえられると、手内在筋拘縮の正体が理解しやすいと思うので、しっかり確認していきましょう。


さて、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」、


これらの筋肉の共通点は、指伸筋腱から分かれた側束に付着する事、


そして、MP関節屈曲・PIP・DIP関節の伸展の作用を持っている事、


この付着部と作用が、グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない状態(手内在筋拘縮)に関係してきます。


まずは、MP関節が伸展位にある時の、これらの筋肉の様子をイメージしてみましょう。


「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」は、距離が遠くなっている状態、つまり緊張している状態になりますよね。


指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態ってことですよね。


さっき、でてきた「指先が曲がらない=指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態」、


この状態に当てはまります。


次は、MP関節が屈曲位にある時の、これらの筋肉の様子もイメージしてみましょう。


「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」は、距離が近くなっている状態、弛緩している状態になりますよね。


弛緩している、つまりPIP・DIP関節の伸展作用が弱くなっている状態といえ、屈曲しやすい状況になります。


これが、「グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない」の正体ですね。


ちなみにこの肢位では、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」がPIP・DIP関節の伸展を行えないので、総指伸筋がその役割を担っています。


パパッと説明してしまいましたが、


「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」の筋緊張が亢進していると、


MP関節伸展位の時は、PIP・DIP関節が屈曲できなくなり、



MP関節屈曲位の時は、筋緊張が緩むためPIP・DIP関節が屈曲できるようになる。


これが、グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない状態(手内在筋拘縮)の正体になります。

評価方法

ではでは評価方法を説明してきましょう〜。


ココでは、その症例の手指拘縮が手内在筋拘縮なのかどうか?を鑑別する評価方法と、


その手内在筋拘縮は、


「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」どの筋肉が一番原因になっているかのか?、


識別する評価方法を説明していきます。


✅ 手内在筋拘縮を判断する評価

✅ 手内在筋拘縮の原因筋を識別する評価


では、手内在筋拘縮を判断する評価について。


主内筋拘縮テストと呼ばれる、MP関節の肢位の違によるIP関節の屈曲角度の変化をみる評価を行っていきます。


肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①MP関節屈曲位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

② MP関節伸展位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

判定:

手順①でPIP・DIP関節の屈曲が可能かつ、手順②でPIP・DIP関節の屈曲が困難な場合「陽性」

ポイント:

・手内在筋(虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋)は、MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展に作用する

・MP関節伸展位で手内在筋の筋緊張が高まるため、PIP・DIP関節の屈曲が制限される

・このテストが陽性の場合、大きなボールを把持する動作やギターのコードを押さえるような手の動きが難しくなる


次は、手内在筋拘縮の原因筋を識別する評価を説明していきましょう〜。


虫様筋の識別テスト

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①MP関節伸展位・手関節掌屈位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

②MP関節伸展・手関節背屈位で PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

判断:

手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」

ポイント:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展作用を有する

深指屈筋腱に付着しているため、背屈位で筋緊張が高まる

テストが陽性の場合、虫様筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える


掌側骨間筋の識別テスト

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①MP関節伸展位・内外転中間位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

②MP関節伸展・外転位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

判断:

手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」

ポイント:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に加えて、手指の内転に作用する

手指内転作用を有しているため、MP関節外転位で筋緊張が高まる

テストが陽性の場合、掌側骨間筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える


背側骨間筋の識別テスト

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①MP関節伸展位・内外転中間位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

②MP関節伸展・内転位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う

判断:

手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」

ポイント:

MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に加えて、手指の外転に作用する

手指外転作用を有しているため、MP関節内転位で筋緊張が高まる

テストが陽性の場合、背側骨間筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える


以上2つのテストを使って、症例の手の拘縮が、


手内在筋による拘縮なのか、


もしそうなのであれば、


「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」のどれが、一番の原因になっているのか識別してみましょう〜。


次の章では、各々のアプローチ案を説明していきます。

アプローチ案

全体的な介入の流れは、靭帯や関節包への介入→原因筋への介入になります。


✅靭帯や関節包への介入

✅原因筋への介入


まずは靭帯や関節包への介入について


手内在筋拘縮は、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」のどれかが原因になっている事が多いですが、


長期にわたって可動性が制限された結果として、


関節周囲の靭帯や、関節包の伸張性が低下している事が多いです。


そのため、ウォーミングアップも兼ねて、


最初に靭帯や関節包に対する介入を軽く行いましょう。


訓練方法はこんな感じです。


肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①対象者の手を把持もしくは、テーブル等の上にポジショニングする

②対象の指のPIP・DIP関節を、セラピストの指で両脇(もしくは上下)を把持する

③軽く圧迫を加えながら、多方向に軽くスライドさせる

ポイント:

1つの関節に対して、10秒程度実施する

圧迫の強さは痛みを感じない程度で、強くなりすぎないように注意

PIP・DIP関節の周囲には、「側副靭帯・輪状靭帯・関節包・伸筋腱膜」などが存在する


ではでは、


それぞれの筋肉に対する介入案を説明していきましょう〜。


最後にもお伝えしますが、全体的な流れとしては、


ダイレクトストレッチ→スタティックストレッチ→筋促通 


の順番になるので、押さえておきましょう。


虫様筋[MP関節屈曲・PIP+DIP関節伸展・(手関節掌屈)]

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①手関節軽度背屈位かつMP関節軽度伸展位で、中指骨頭周囲に存在する虫様筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える

②手関節背屈位かつMP関節伸展位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う

③ 手関節背屈位かつMP関節屈曲位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう

ポイント:

・[手順①]手関節軽度背屈位かつMP関節軽度伸展位にする事で、触診がしやすくなる

・[手順②]手関節背屈位かつMP関節伸展位にする事で、伸長されやすくなる

・[手順③]手関節背屈位かつMP関節屈曲位にする事で、収縮が促しやすくなる


掌側骨間筋[MP関節屈曲+内転・PIP+DIP関節伸展]

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①手関節中間位かつMP関節軽度伸展・外転位で、手掌の中指骨間に存在する掌側骨間筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える

②手関節中間位かつMP関節伸展・外転位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う

③ 手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・外転位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう

ポイント:

・[手順①]手関節中間位かつMP関節軽度伸展・外転位にする事で、触診がしやすくなり虫様筋との誤認も防げる

・[手順②]手関節中間位かつMP関節伸展・外転位にする事で、伸長されやすくなり虫様筋との誤認も防げる

・[手順③]手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・外転位にする事で、収縮が促しやすくなり虫様筋による代償も防げる


背側骨間筋[MP関節屈曲+外転・PIP+DIP関節伸展]

肢位:

座位もしくは背臥位

手順:

①手関節中間位かつMP関節軽度伸展・内転位で、手背の中指骨間に存在する背側骨間筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える

②手関節中間位かつMP関節伸展・内転位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う

③ 手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・内転位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう

ポイント:

・[手順①]手関節中間位かつMP関節軽度伸展・内転位にする事で、触診がしやすくなり虫様筋との誤認も防げる

・[手順②]手関節中間位かつMP関節伸展・内転位にする事で、伸長されやすくなり虫様筋との誤認も防げる

・[手順③]手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・内転位にする事で、収縮が促しやすくなり虫様筋による代償も防げる


評価によって、原因筋を特定し介入を進めていくのが良いでしょう。


全体的な介入のイメージとしては、


関節周囲の諸組織を軽くリラクセーションして、


次に原因筋に対するダイレクトストレッチで軽く緩めて、


さらに次に、スタティックストレッチで筋緊張を緩和させて、


最後に、筋促通を行う事で、拘縮予防効果も期待する。


こんな感じになりますね。

おわりに

目の前の症状は突然やってきます。


対象者の症状を目の前にして、「ちょっと調べるので30分くらいお待ちください、、、」


なんて事は言えないですよね。


もちろん事前に調べることも大切ですが、


ちょっとの知識を積み上げる習慣をつけておくと、


どんな症例でも、少しは分かる状態になり、


そうすると、何を見れば良いか、何をすればいいか、


評価・治療が全然変わってきます。


そんなところで、今日のまとめです。


この資料が欲しい方は、概要欄に受け取り方を載せているので、


ご確認ください。


また概要欄のリンクをクリックしても、


ページに飛べない💦なんて時は、期限切れの可能性がありますので、


あらかじめご了承ください。


このチャンネルでは、リハビリの基礎知識を整理して詳しく、


分かりやすいオリジナルイラストを使って説明しています。


応援してくださる方や、有益な情報を見逃したくない方は、ぜひフォローして下さい。


ではでは、次回の動画でまたお会いしましょう〜。

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?