【手内在筋拘縮に対する理学療法案】解剖学的知識から評価、アプローチ案まで解説|2022.11.24配信
はじめに
グーはできるのに、手を開くと指先が曲がらない、、、
手内在筋拘縮に関する知識がせんぜんない、、、
ちょっとした事を調べるために、参考書を買うのは高いし、
自分の持っている本や、職場にある本から勉強するのは、時間がもったいないですよね。
かといって何も調べず、知らない事をそのままにしていくと、
分からない不安が溜まり続け、
同僚に差をつけられない、後輩に指導出来ない、、
などなど、大きな問題になりかねません。
この動画では、手指の拘縮に関して、
最低限必要な知識と、評価、介入案を、
無駄な説明は省き、整理して詳しく説明していきます。
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ではでは、本編に進みましょう〜。
本編
手内在筋の解剖学的知識
手指の拘縮に関わる筋肉は大きく、
手外在筋と手内在筋に分けられます。
手外在筋は、手関節よりも近位に筋腹があって、それが腱になって手に付着する筋肉で、
手内在筋は、起始と付着部の両方が手に存在する筋肉になります。
手外在筋に該当する筋肉はこんな感じ。
長掌筋
橈側手根屈筋
尺側手根屈筋
長橈側手根伸筋
短橈側手根伸筋
尺側手根伸筋
総指伸筋
示指伸筋
小指伸筋
長母指伸筋
短母指伸筋
長母指外転筋
浅指屈筋
深指屈筋
長母指外転筋
手内在筋に該当する筋肉はこんな感じ。
短母指屈筋
短母指外転筋
母指内転筋
母指対立筋
小指外転筋
短小指屈筋
小指対立筋
虫様筋
掌側骨間筋
背側骨間筋
今回は、手指の拘縮の中でも
手内在筋の拘縮をテーマとして扱っていて、
(手内在筋の拘縮というのは、MP関節を伸展位にした時に、
PIP関節とDIP関節が屈曲しない状態のことですね。)
手内在筋の拘縮について話を進める時は、特に「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」がポイントになるので、
今日は、この3つの筋肉について説明を進めていきます。
それぞれの解剖学的知識はこんな感じ。
まずは、虫様筋について。
起始:深指屈筋腱
停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底
神経:尺骨神経 C8~T1
作用と特徴:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に作用する
第1掌側骨間筋腱は示指尺側を走行する
第2・3掌側骨間筋腱は環指と小指の橈側を走行する
次は、掌側骨間筋。
起始:示指中手骨の尺側、環指・小指中手骨の橈側
停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底
神経:尺骨神経 C8~T1
作用と特徴:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展、手指の内転に作用する
第1掌側骨間筋腱は示指尺側を走行する
第2・3掌側骨間筋腱は環指と小指の橈側を走行する
最後、背側骨間筋について。
起始:母指から小指の中手骨の相対する面
停止:総指伸筋腱から分かれた側束に合流し末節骨底
神経:尺骨神経 C8~T1
作用と特徴:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展、手指の外転に作用する
第1・2背側骨間筋腱は示指と中指の橈側を走行する
第3・4背側骨間筋腱は中指と環指の尺側を走行する
さて、なぜこの3つの筋肉が、手内在筋拘縮に関わるのか、
グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない症例に関わるのか、
疑問を抱いている事でしょう。
評価方法も含めて次の章で説明するので、安心して下さい。
この章では、
手指の拘縮には、手外在筋と手内在筋が関わり、
その中でも、内在筋に該当する「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」が、
手内在筋拘縮ではポイントになる。
ここまで、押さえられればOKです。
手内在筋拘縮の正体と評価方法
手内在筋拘縮の正体
まずは、手内在筋拘縮の正体について。
「指先が曲がらない=指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態(屈曲制限=屈筋群の筋緊張<伸筋群の筋緊張)」
「なぜグーはできるのに手を開くと指先が曲がらないの?」
この2点が押さえられると、手内在筋拘縮の正体が理解しやすいと思うので、しっかり確認していきましょう。
さて、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」、
これらの筋肉の共通点は、指伸筋腱から分かれた側束に付着する事、
そして、MP関節屈曲・PIP・DIP関節の伸展の作用を持っている事、
この付着部と作用が、グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない状態(手内在筋拘縮)に関係してきます。
まずは、MP関節が伸展位にある時の、これらの筋肉の様子をイメージしてみましょう。
「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」は、距離が遠くなっている状態、つまり緊張している状態になりますよね。
指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態ってことですよね。
さっき、でてきた「指先が曲がらない=指先を伸ばす筋肉の筋緊張が高い状態」、
この状態に当てはまります。
次は、MP関節が屈曲位にある時の、これらの筋肉の様子もイメージしてみましょう。
「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」は、距離が近くなっている状態、弛緩している状態になりますよね。
弛緩している、つまりPIP・DIP関節の伸展作用が弱くなっている状態といえ、屈曲しやすい状況になります。
これが、「グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない」の正体ですね。
ちなみにこの肢位では、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」がPIP・DIP関節の伸展を行えないので、総指伸筋がその役割を担っています。
パパッと説明してしまいましたが、
「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」の筋緊張が亢進していると、
MP関節伸展位の時は、PIP・DIP関節が屈曲できなくなり、
MP関節屈曲位の時は、筋緊張が緩むためPIP・DIP関節が屈曲できるようになる。
これが、グーはできるのに手を開くと指先が曲がらない状態(手内在筋拘縮)の正体になります。
評価方法
ではでは評価方法を説明してきましょう〜。
ココでは、その症例の手指拘縮が手内在筋拘縮なのかどうか?を鑑別する評価方法と、
その手内在筋拘縮は、
「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」どの筋肉が一番原因になっているかのか?、
識別する評価方法を説明していきます。
✅ 手内在筋拘縮を判断する評価
✅ 手内在筋拘縮の原因筋を識別する評価
では、手内在筋拘縮を判断する評価について。
主内筋拘縮テストと呼ばれる、MP関節の肢位の違によるIP関節の屈曲角度の変化をみる評価を行っていきます。
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①MP関節屈曲位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
② MP関節伸展位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
判定:
手順①でPIP・DIP関節の屈曲が可能かつ、手順②でPIP・DIP関節の屈曲が困難な場合「陽性」
ポイント:
・手内在筋(虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋)は、MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展に作用する
・MP関節伸展位で手内在筋の筋緊張が高まるため、PIP・DIP関節の屈曲が制限される
・このテストが陽性の場合、大きなボールを把持する動作やギターのコードを押さえるような手の動きが難しくなる
次は、手内在筋拘縮の原因筋を識別する評価を説明していきましょう〜。
虫様筋の識別テスト
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①MP関節伸展位・手関節掌屈位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
②MP関節伸展・手関節背屈位で PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
判断:
手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」
ポイント:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展作用を有する
深指屈筋腱に付着しているため、背屈位で筋緊張が高まる
テストが陽性の場合、虫様筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える
掌側骨間筋の識別テスト
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①MP関節伸展位・内外転中間位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
②MP関節伸展・外転位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
判断:
手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」
ポイント:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に加えて、手指の内転に作用する
手指内転作用を有しているため、MP関節外転位で筋緊張が高まる
テストが陽性の場合、掌側骨間筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える
背側骨間筋の識別テスト
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①MP関節伸展位・内外転中間位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
②MP関節伸展・内転位で、PIP・DIP関節の屈曲を他動的に行う
判断:
手順①と比較して、手順②のPIP・DIP関節の屈曲角度が減少していれば「陽性」
ポイント:
MP関節屈曲とPIP関節・DIP関節伸展に加えて、手指の外転に作用する
手指外転作用を有しているため、MP関節内転位で筋緊張が高まる
テストが陽性の場合、背側骨間筋が手内在筋拘縮の原因であると疑える
以上2つのテストを使って、症例の手の拘縮が、
手内在筋による拘縮なのか、
もしそうなのであれば、
「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」のどれが、一番の原因になっているのか識別してみましょう〜。
次の章では、各々のアプローチ案を説明していきます。
アプローチ案
全体的な介入の流れは、靭帯や関節包への介入→原因筋への介入になります。
✅靭帯や関節包への介入
✅原因筋への介入
まずは靭帯や関節包への介入について
手内在筋拘縮は、「虫様筋・掌側骨間筋・背側骨間筋」のどれかが原因になっている事が多いですが、
長期にわたって可動性が制限された結果として、
関節周囲の靭帯や、関節包の伸張性が低下している事が多いです。
そのため、ウォーミングアップも兼ねて、
最初に靭帯や関節包に対する介入を軽く行いましょう。
訓練方法はこんな感じです。
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①対象者の手を把持もしくは、テーブル等の上にポジショニングする
②対象の指のPIP・DIP関節を、セラピストの指で両脇(もしくは上下)を把持する
③軽く圧迫を加えながら、多方向に軽くスライドさせる
ポイント:
1つの関節に対して、10秒程度実施する
圧迫の強さは痛みを感じない程度で、強くなりすぎないように注意
PIP・DIP関節の周囲には、「側副靭帯・輪状靭帯・関節包・伸筋腱膜」などが存在する
ではでは、
それぞれの筋肉に対する介入案を説明していきましょう〜。
最後にもお伝えしますが、全体的な流れとしては、
ダイレクトストレッチ→スタティックストレッチ→筋促通
の順番になるので、押さえておきましょう。
虫様筋[MP関節屈曲・PIP+DIP関節伸展・(手関節掌屈)]
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①手関節軽度背屈位かつMP関節軽度伸展位で、中指骨頭周囲に存在する虫様筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える
②手関節背屈位かつMP関節伸展位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う
③ 手関節背屈位かつMP関節屈曲位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう
ポイント:
・[手順①]手関節軽度背屈位かつMP関節軽度伸展位にする事で、触診がしやすくなる
・[手順②]手関節背屈位かつMP関節伸展位にする事で、伸長されやすくなる
・[手順③]手関節背屈位かつMP関節屈曲位にする事で、収縮が促しやすくなる
掌側骨間筋[MP関節屈曲+内転・PIP+DIP関節伸展]
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①手関節中間位かつMP関節軽度伸展・外転位で、手掌の中指骨間に存在する掌側骨間筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える
②手関節中間位かつMP関節伸展・外転位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う
③ 手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・外転位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう
ポイント:
・[手順①]手関節中間位かつMP関節軽度伸展・外転位にする事で、触診がしやすくなり虫様筋との誤認も防げる
・[手順②]手関節中間位かつMP関節伸展・外転位にする事で、伸長されやすくなり虫様筋との誤認も防げる
・[手順③]手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・外転位にする事で、収縮が促しやすくなり虫様筋による代償も防げる
背側骨間筋[MP関節屈曲+外転・PIP+DIP関節伸展]
肢位:
座位もしくは背臥位
手順:
①手関節中間位かつMP関節軽度伸展・内転位で、手背の中指骨間に存在する背側骨間筋に対して20〜30秒程度圧迫を加える
②手関節中間位かつMP関節伸展・内転位で、PIP・DIP関節の屈曲を20〜30秒程度行う
③ 手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・内転位で、PIP・DIP関節の伸展を10回×3程度行ってもらう
ポイント:
・[手順①]手関節中間位かつMP関節軽度伸展・内転位にする事で、触診がしやすくなり虫様筋との誤認も防げる
・[手順②]手関節中間位かつMP関節伸展・内転位にする事で、伸長されやすくなり虫様筋との誤認も防げる
・[手順③]手関節軽度掌屈位かつMP関節屈曲・内転位にする事で、収縮が促しやすくなり虫様筋による代償も防げる
評価によって、原因筋を特定し介入を進めていくのが良いでしょう。
全体的な介入のイメージとしては、
関節周囲の諸組織を軽くリラクセーションして、
次に原因筋に対するダイレクトストレッチで軽く緩めて、
さらに次に、スタティックストレッチで筋緊張を緩和させて、
最後に、筋促通を行う事で、拘縮予防効果も期待する。
こんな感じになりますね。
おわりに
目の前の症状は突然やってきます。
対象者の症状を目の前にして、「ちょっと調べるので30分くらいお待ちください、、、」
なんて事は言えないですよね。
もちろん事前に調べることも大切ですが、
ちょっとの知識を積み上げる習慣をつけておくと、
どんな症例でも、少しは分かる状態になり、
そうすると、何を見れば良いか、何をすればいいか、
評価・治療が全然変わってきます。
そんなところで、今日のまとめです。
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ではでは、次回の動画でまたお会いしましょう〜。
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