脳画像の見かた~基本編~



① なぜ脳画像は難しいのか?

脳画像って、なぜか苦手な印象が強いですよね?
これって実は"ある理由"があります!それは….

▶ 2Dと3Dの視点の切り替えが難しい
▶ 溝がいっぱいでよく分からない
▶ 何を指標にすればいいか分からない
▶ ぶっちゃけ授業が分かりにくい…(笑)

などこのような状態ではないでしょうか?
ちなみに私は学生時代の脳卒中系のテストでギリ6割でした..
そんな私でも今では"脳画像講師"としてやっているのです!

② CT・MRIを見極める

国家試験で『あれ?この画像なんだっけ?』と思う事も多いと思います!
そうなると焦りますよね…けど、脳画像ごとの"特徴"を知っていれば、慌てる事なく攻略する事ができます!

▶ CTは頭蓋骨をみろ!

CTは脳出血を検出するのに優れていて、
特徴は頭蓋骨と脳出血が"白く"なるところですね!

また、短時間での撮影が可能という事もポイントですね!

▶ T1強調画像(MRI)は"ほぼ"CT!?

CTと同様に頭蓋骨は白く見えてますが、CTより"細い"ですよね!
さらにやや2重に見える事も特徴です!

脳溝が一番見やすい画像なので、脳梗塞・脳出血を確認したあとに、
T1強調画像を見る事が多いです!

▶ T2強調画像(MRI)はT1画像の"逆"!?

T2はT1の逆のイメージであり、特に脳脊髄液がT2では白く描出されます。
なので、脳梗塞だと脳溝の脳脊髄液も白く描出されてるので、やや境界が分かりにくい点がデメリット。

脳出血は急性期(1-3日目)では著明に黒く描出されるので、T2強調画像を見る事で"時期"がある程度判断できる事があります!

▶ 意外と重要なT2*強調画像(MRI)

この画像は臨床でも見る方が少ないかもしれません。
しかし私は、脳卒中の方だけでなく絶対にみる画像です!

実は以下のような報告がされています

実行機能障害の有病率にはグループ間に顕著な差があり、微小出血患者では60%にみられたのに対し、非微小出血患者では30%にみられた(P=0.03)。

Werring DJ, Frazer DW, Coward LJ, Losseff NA, Watt H, Cipolotti L, Brown MM, Jäger HR. Cognitive dysfunction in patients with cerebral microbleeds on T2*-weighted gradient-echo MRI. Brain. 2004 Oct;127(Pt 10):2265-75. doi: 10.1093/brain/awh253. Epub 2004 Jul 28. PMID: 15282216.

このT2*強調画像では"微小出血"の検出に優れています。
ただ、この出血自体は無症候性であることが多いとされています。
しかし、この報告によると認知機能障害の有無を調べると、微小出血が確認されたグループに多いという結果です。

しかも微小出血の"数"も関連しているそうです。
脳卒中における認知機能障害を鑑別するポイントになるかもしれません。

▶ FLAIR画像(MRI)

FLAIR画像は脳脊髄液などの"液体のみ"を無信号にしたT2画像です。
では何をみるための画像なのか?

くも膜下出血は脳溝に沿った形でCTで高吸収域として描出されます。
日数が経過すると、いわゆる"血腫が引いた"状態になります。

例えば数日後に、T2強調画像で確認すると血腫が確認できない状態になるとします。しかしFLAIR画像では、高信号として描出される事もあるのです。

血腫が完全に引いた状態なのかを確認する上でも
FLAIR画像は重要と言えますね!

▶ 脳梗塞といえばDWI画像(MRI)

『脳梗塞といえばDWI(拡散強調画像)』と言われていますね。
なぜならDWI以外は1-24時間でも所見がない事が多いからです!

ただ、正確にはDWIで画像確認→ADCmapの順で確認する必要があります!
※DWIで高信号→ADCmapで低信号で脳梗塞と診断されます。

"拡散強調"なのでややこしいですが、簡単にいうと"拡散できない部分(水分子が動けない)"を強調する画像になります!

③ 皮質~脳幹の脳画像同定

▶ 頭頂レベル

基本的に脳画像(水平断)においては、"上前頭溝"をみつける事ができれば
かなり読みやすくなります!(私見です)

側面像からみると、上前頭溝は前頭葉の下方から中心前溝に
向かって走っている溝です。

つまり水平断においては大脳縦列に対して"並行に"走っている溝となります
これが何となく理解できれば、他の溝も分かりやすくなります!

▶ 放線冠レベル

特に角回・縁上回(下頭頂小葉)に関する問題は定番といえます。

ここでポイントなのが"右半球or左半球"の事を問われているか?

【下頭頂小葉の機能】
① 縁上回:体性感覚連合野から感覚・視覚情報を受け取り、物体を認識
② 後頭葉から言語に関する視覚情報を受け取り、読み・書き・計算など一連の行為に関わる
【障害による症状】
▸ 左縁上回:観念運動失行、伝導失語
▸ 左角回:失読失書、ゲルストマン症候群、観念失行
▸ 右角回・縁上回:半側空間無視や着衣失行など

病気がみえる 脳・神経 p28より引用


【ゲルストマン症候群】
手指失認、左右失認、失書、失算の4徴候
"左角回"の障害で起こるとされている

▶ 松果体レベルはよく出るので、要チェック!!

臨床で最も見るスライスではないでしょうか?

【このスライスで問われる事】
▸ 視床出血:①運動失調②感覚障害③視床痛④失語などあるが、過去問では②が答えになる事が多い。
▸ 被殻出血:被殻単独の症状というより、出血の範囲によって"+αの症状の可能性"を問われる事がある。よって被殻周囲の機能を知る必要がある。
▸ このスライスの各名称:過去に3点問題として出題

▶︎ 視床出血のポイント

視床出血の画像は基本的にワンパターンな事が多いです。
ただ、注意して欲しいのは“視床出血=感覚障害”ではない事です!

▶︎ 被殻出血のポイント

被殻出血は視床出血と違い、被殻に関する症状を問われる事が少ないです。
なぜなら“大脳基底核ループ”に関わっており、複雑な症状が考えられます。
そのため、問題にしにくいのです…

▶︎ "被殻・視床=運動麻痺"は危険!!内包後脚をしっかりみよう!

図のように、内包後脚は錐体路(皮質脊髄路)だけではありません!
学生の時は簡易的に覚えてもらうために、そう習っているのだと思います!

しかしそれだと
『何でこの出血でこの症状!?』
みたいな事が1億回くらい起こります

国家試験において、ここまで細かく問われる事は少ないと思いますが、脳卒中の方を担当することになったら思い出してください!

▶ 脳幹レベル

▶︎ 中脳


▶︎ 橋

このレベルは脳幹出血・梗塞でよくみるスライスですね!
少し複雑に感じるかもしれませんが、真ん中より上に皮質脊髄路
通っていると覚えておきましょう!

MLF症候群やらPPRFと、医学用語は難しいですね…
ざっくり機能を覚えましょう!

PPRF(傍正中橋網様体)
同側の目を外側に対側の目を 内側に向ける役割を持つ。
➡両目とも同じ方向を向かせる

MLF(内側縦束)
左右眼球の水平方向に関わる。
➡特に内転方向

▶︎ 延髄

延髄といえば“ワレンベルグ症候群”ですね!
ここは画像よりも文章問題で出されている印象です…


さて皆さんいかがでしょうか?
ざっくり脳画像に関連する部分を私なりにまとめました!


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