「新しい明日を、新しい私を生きる。」逢田梨香子『Act 2』全曲レビュー
今週10/13(金)より、声優/アーティストである逢田梨香子さんの約3年ぶりの東名阪ツアーとなる『RIKAKO AIDA LIVE TOUR 2023「Act 2」』が開催されます。
彼女自身、ここ数年は東京:中野サンプラザ
を主な会場として1夜限りのワンマンライブを続けてきた印象がありますが、今回は1stライブ、1st LIVE TOUR 2020-2021「Curtain raise」以来の東名阪ツアー。
前回ライブが行動規制下で行われたこともあり、今回は声出しも解禁し、明確な逢田梨香子新章を意味する『Act 2(第二幕)』を冠するライブ。
今回は、その開催を祝うとともに、ツアーに先立って発売されたミニアルバム『Act 2』を読み解き、レビューしていきます。
ミニアルバム『Act 2』
収録楽曲
1.Act 2
2.My Trailer
3.プリズム
4.ハナウタとまわり道
5.ブルーアワー (another blue ver.)
6.うまれる
7.Brush Me Up!
1.Act 2(作編曲:田中隼人)
1曲目は1stアルバム「Curtain raise」を彷彿とさせるインスト楽曲。
再び「幕が上がる」今回のはじまりに相応しい一曲。
作編曲は逢田さんのアーティスト活動を初期から支えるサウンドプロデューサーの田中隼人さん。
インスト曲ながらも逢田さんの「声」が楽曲に使われており、ヒットソングを数々手がける巨匠だけあり、開幕一曲目からサウンド面のこだわりを強く感じます。
2.My Trailer(作詞:作曲:音布遊、編曲:PRIMAGIC)
「"そこ"から私の姿が見えてますか?」と
ライブハウスの暗がりから演者を見上げる光景が浮かび上がってくるような歌詞から始まるライブチューン。
My=私の、Trailer=予告編、宣伝映像のタイトルにぴったりな本アルバム開幕ソング。
「新しいドア」「次の私」「次の場所」といった今回の「Act 2=第二幕」のコンセプトを形作るキーワードたちが歌詞には散りばめられており、それと同時にライブツアーを象徴するロックなサウンドがたまらない新曲です。
今までバラード楽曲が多かったアーティスト:逢田梨香子としても新境地ですし、どこか彼女自身も敬愛するGirls Dead Monster(ガルデモ)や平野綾さんを彷彿とさせる00年代後半〜10年代前半のアニソンロックをど真ん中に行く曲調もまっすぐ刺さってきます。
3.プリズム(作詞:作曲:aio 編曲:aio × hiroo)
本アルバムのリード楽曲。
作詞、作曲はシンガーソングライターの大塚愛さん。
逢田さん自身も敬愛するアーティストの1人で、さくらんぼ、プラネタリウム、PEACH!など、00年代を代表する歌姫です。
サウンドプロデューサーの田中隼人さんが1st EP.「Principal」の時のインタビューから
「歌姫、逢田梨香子」というワードを出していますが、まさにアーティスト:逢田梨香子のサウンドイメージはTVが強かった時代、音楽番組やドラマ主題歌で話題となった「00年代の歌姫」。
そんな中で大塚愛さんの楽曲提供は、大きな驚きとともに、すごくしっくり来ました。
歌詞は、「今までの私から今の私へ」、
前曲「My Trailer」からも繋がる「新しい私へ」のコンセプトが軸になっています。
「新しい朝」とあるようにこの曲が彷彿させるのは「朝」。
本作『Act 2』には、このように一日のうちの時系列を感じさせるような楽曲も多く収録されており、この楽曲はどこか、前日の憂鬱を少しでも癒すプリズムの光がカーテンの隙間から差し込んでくるような、そんな朝に聴きたい楽曲となっています。
「うん 大丈夫」と自分に言い聞かせる言葉で締めくくられるところは大塚愛さん節がかなり効いてます。
4.ハナウタとまわり道(作詞:六ツ見純代 作曲:編曲:田中隼人)
TVアニメ「スキップとローファー」EDテーマとしても話題になった、デジタル配信シングルの「ハナウタとまわり道」がこの「Act 2」で初のフィジカルリリースです。
一日のはじまりの「朝」を歌う「プリズム」から続く「やさしい風と夕焼け」の「ハナウタとまわり道」。
「プリズム」で抱えていた朝の憂鬱も、
1日が終われば「何気にいい日だった」と振り返る、そんな帰り道が歌われます。
「ひと駅歩こう」も逢田さんファンからしたら聞き覚えのあるエピソード。
今作から参加している作詞家の六ツ見純代さんは、このような逢田さんの素の一面を映し出すのが非常に巧みで、思わず歌詞の中の主人公をそのまま逢田さんの姿で想像してしまうそんな楽曲になっています。
(MVも逢田梨香子役 逢田梨香子として本人役の逢田さんが登場するのもその効果の一つですね!)
作曲、編曲はサウンドプロデューサーの田中隼人さん。
こちらのアレンジは田中隼人さんの代表作とも言えるYUKIさんの「メランコリニスタ」のDNAを確かに感じるアレンジになっており、
これまた前曲の「プリズム」から通して聞くとかなり「00年代の歌姫」を感じる流れとなっております。
そして「ハナウタとまわり道」の最後のフレーズは、「また明日」。
この「Act 2」。歌詞の最後のフレーズに
「明日」とつく曲が歌詞付きの6曲中3曲。
「今日から、明日へ」もまた、このミニアルバムの大切なキーワードなのかもしれません。
5.ブルーアワー (another blue ver.)
(作詞:逢田梨香子、作曲:市川淳、編曲:PRIMAGIC)
5曲目は、これもデジタル配信シングルである「ブルーアワー」のリアレンジver.。
シネマティックなサウンドスケープとギターサウンドが特徴的だった原曲とはまた雰囲気の変わったジャジーなアレンジの「another blue ver.」。
原曲とはまた違う色彩の「青」が浮かび上がります。
作詞は逢田梨香子さんご本人。
2020年のコロナ禍の真っ只中、予定していた1stツアーの延期もあった中で、自身が作詞した大切な一曲。
外出自粛も叫ばれた時期に「この空は繋がっている」のメッセージを込めて作られたこの楽曲が、「Act 2」で生まれ変わって新しい物語を紡ぎます。
プリズムの「朝」、
ハナウタとまわり道の「夕焼け」、
そしてブルーアワー (another blue ver.)の
「夜」、「夜明け」。
1日の始まりからまた新しい1日の始まりまで、
そんな繰り返し一日の中で沈み浮く心情や、景色の情景を「Act 2」は巧みに描き出します。
この楽曲もラストフレーズにある「明日」。
そして「新しい私を生きる」の言葉は、
まさに今作「Act 2」の根幹。
このようにアルバムの軸となるメッセージが、アーティスト:逢田梨香子本人から出た言葉、歌詞であることは、アーティストとして理想とすべき姿だと思いますし、
2020年の8月に生まれたこの楽曲の歌詞が、
3年越しのこのアルバムにもしっかり軸として通ってくるところが、どこか予言で、
ラブライブ!サンシャイン!!、Aqoursにおける畑亜貴先生の歌詞の「予言」にも通ずるところを感じざるを得ません。
作詞家:逢田梨香子も、畑亜貴先生と同じ星の「予言の作詞家」なのかもしれません。
6.うまれる(作詞:逢田梨香子、作曲:編曲:市川淳)
2曲続けて、作詞家:逢田梨香子。
今までも、Lotus、花筵、ノスタルジックに夏めいてなどで「無常」を描いてきた作詞家:逢田梨香子ですが、「うまれる」はその中でも究極の「無常」を描く歌詞。
花筵で触れた「死生観」も垣間見れ、「生きる意味」にまで迫るような、そんな作品です。
前曲の「ブルーアワー (another blue ver.)」を「夜」、「夜明け」とするならば
この曲は、「まどろみの夢」。
夢の中でこそ現れる人間の深層心理みたいなものもこの歌詞からは伝わってきて、
どこか耽美な言葉遣いは逢田さんの好きなジャパニーズホラーの影響も、もしかしたら垣間見れるかもです。
「Act 2」全体に流れる「今日から明日へ」
「新しい私へ」というテーマのところから、
「生まれ変わるならどんな私がいい?」
「ここにうまれた意味は?」と問いかけるところまで堕ちていくところがなんとも、逢田梨香子節を感じてしまいます。
7.Brush Me Up! (作詞:六ツ見純代 作曲:編曲:田中隼人)
「うまれる」の「まどろみの夢」から醒めるように明るい曲調ではじまる、本作品最後の一曲。
「ハナウタとまわり道」コンビの作詞:六ツ見純代さん、作曲:編曲:田中隼人さんで贈られるこの曲は、すべての人に贈られる「応援歌」。
軽快なメロディに、言葉遊びのように踏んで行く韻が心地よく、前向きなメッセージを伝えてくれます。
ここも逢田さんファンは少しニヤッとしてしまうようなエピソードを感じる歌詞。
「会いたい」が「逢いたい」なのも逢田さん愛を感じます。
最後のフレーズも韻を踏みまくる一節。
「スキップで超えてまた明日」
「新しい明日を生きるよ」
そして、
「自分進化論!明日へSING A LONG!!」
最後はこれ以上ない明るい「明日へ!」で
『Act 2』の幕は下ろします。
最後に
今作「Act 2」は、
誰にでもある「憂鬱な今日」を「前向きな明日」に、そんなふうに、前向きに、でもネガティブや憂鬱にも寄り添ってくれながら、優しく背中を押してくれる、そんなエールソングが詰まったアルバムだと思います。
そして、今作を引っ提げたツアーである『RIKAKO AIDA LIVE TOUR 2023「Act 2」』も、きっと、そんな誰かの「明日」の背中を押すような、そんな素敵なライブになるんじゃないか、と思っています。
日々の憂鬱や抑圧を持ち寄って、
ライブハウスに入る前は「うんざりな今日」だった一日を「少しがんばってみようの明日」に変えてライブハウスを出れるような、
そんな「ライブハウスツアー」の醍醐味が詰まった素敵なライブ、「Act 2」を聴いた時からその光景が目に浮かび、本当に楽しみにしてます。
そして、そんなライブの醍醐味を、逢田さんが気になる人、この記事を読んで知りたくなった人にたくさん来て欲しいな!と思います!
最後にライブ情報を載せて、
お別れとさせていただきます。
長文を読んでくださりありがとうございました!
RIKAKO AIDA LIVE TOUR 2023「Act 2」
愛知公演:10月13日(金)
会場:愛知:名古屋ボトムライン
大阪公演:10月15日(日)
会場:大阪:松下IMPホール
東京公演:10月22日(日)
会場:東京:豊洲PIT
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