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理学の分野から水産の分野へ。新しい品種を世の中に届け、伝える挑戦(主任研究員 本田祐基)

「多くの品種を発表することがリージョナルフィッシュを知っていただく一番の方法だと思います。より良い品種を開発し、皆さんにお届けしていきたいです。」
そう話すのは、自身の研究分野に関する豊かな知見と、それらを分かりやすく相手に伝える工夫で、研究から出張授業まで幅広く活躍する本田 祐基。
社員インタビュー第十弾では、リージョナルフィッシュの研究開発を推進する本田さんに、同社への参画理由、仕事におけるやりがいや魅力を聞きました!
※取材当時の内容となるため現在の肩書・業務内容と異なる場合があります。

本田 祐基(ほんだ ゆうき)
東北大学理学部生物学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科に進学。東京大学大気海洋研究所にて、トラザメ生体機構の発生・発達に関する研究実績を持つ。2021年4月にリージョナルフィッシュに参画し、現在は主任研究員として、詳細な生体変化の観察や遺伝子発現解析等を行う。

「少年時代からのサメへの興味が、新たな発見を導く」

―――本日はよろしくお願いいたします!まずはじめに本田さんのご経歴を教えてください。

小さなころから生き物が大好きで、「どうぶつ奇想天外!」というテレビ番組をよく見ていました。動物園や水族館に連れて行ってもらう機会も多くありましたし、虫捕りをして遊んだ記憶もあります。小学校高学年のときに読んだ『歌う生物学』という本も大きな影響を与えてくれました。その中でもある時から、特にサメにとても惹かれるようになりました。

サメと一口に言っても色々な種類に分かれます。ちなみに、キャビアでよく知られるチョウザメって実はサメではないんです!サメは全身の骨格が軟骨でできている軟骨魚類ですが、チョウザメは硬骨魚類に分類され、生物としての系統がかなり違うんですね。脊椎動物はサメなどの軟骨魚類と硬骨魚類とで分岐したあと、チョウザメやフグなどの条鰭類、そしてヒトやその他の生物に分かれます。なので、フグとヒトとの関係性より、サメとフグの方が早く分岐していて関係性が遠くなるんです。他の脊椎動物とは異なる面白い特徴をいくつも持っているのがサメの魅力だと思います。

こういう話がきっかけで、中学高校時代からサメの研究をしたいと思うようになり、大学は、東北大学理学部生物学科に進学しました。サメの研究は大学院で行おうと思っていたので、大学では生物学全般について学び、3年生のときに、東京大学の大学院に進むことを決めました。そのため、学部で出ていくことを前提に研究室選びをしていたのですが、自身が興味を持っていた発生学の研究室に所属することができました。サメ以外の魚について研究したここでの経験が自身の視野を広げてくれ、その後の研究にも活かされていると思います。

大学での研究内容は、付属肢と呼ばれる、脊椎動物の手足や四肢、魚類のヒレなどの発生、再生を題材としていました。ゼブラフィッシュという小型魚類を使って、胸鰭の骨の発生過程を研究していました。
例えば、私たち人間の指の本数は5本だと決まっているのですが、魚のヒレの骨の本数は同じ種でも個体によって異なる場合があるんです。この本数は、どのようにして決まるのかという疑問からテーマを決めて、大学4年生の一年間をかけて色んな発生段階の魚の骨格染色標本を作製し、骨ができる過程を観察しました。

東京大学大気海洋研究所に進学してからは、サメ胚がどのようにして栄養吸収を行っているのかという研究をしていました。
栄養吸収器官といえば腸です。多くの動物の腸は細長い一方で、サメの腸は短く、腸壁がらせん状に立ち上がることで表面積を増やして栄養吸収の効率を上げており、「らせん腸」と呼ばれています。しかし、この独特な形状が発生過程でいつどのようにして出来ているのかは、まだ解明されていませんでした。
研究所では、トラザメという親でも50cm程度にしかならない、小型で大人しいサメを飼っていました。定期的に産まれる卵を親と別の水槽で飼いながら、発生の段階に応じて、体の中を観察し、腸の形がどのようにできあがっていくのかを見ていました。
この研究を通して、一本の管が出来上がってから、組織が立ち上がり、管の中でらせん状のねじれが完成し、その後はサイズが大きくなっていくという流れで、らせん腸が出来上がることがわかりました。

もう一つのサメの特徴として、発生期間の長さが挙げられます。例えば、ゼブラフィッシュは、卵が生まれてから3日間ぐらいで孵化して泳ぎ始めます。一方、トラザメは、水温など周りの環境にもよりますが、孵化までに半年以上かかるんです。サメの胚は、「人魚の財布」とも呼ばれる硬い卵殻で守られており、卵黄の栄養を使って、段々大きくなります。孵化するときには親と同じような形をして、卵から出てくるというのが、軟骨魚類の特徴になります。
らせんの形状が完成するのは発生し始めてから二ヶ月ほどなのですが、観察の結果、らせんの完成とほぼ同時に卵黄が腸に流入して、胚が腸を使って栄養吸収を行うことがわかりました。また、このタイミングで栄養吸収に関わる遺伝子が働き始めることも見出しました。サメ胚は、発生期間の途中から自分の腸を使って卵黄を食べているのです。大学院時代の自身の研究を通して、サメ胚の栄養吸収メカニズムの記載を推し進めることができたと考えています。


「新しい品種を作って、多くの方にお届けしたい」

―――アカデミアでの研究に力を注がれていた一方、リージョナルフィッシュに参画することを決めた理由は何だったのでしょうか?

リージョナルフィッシュが一番面白そうだと感じたからです
元々はアカデミアに残るつもりだったので、民間企業、ましてや水産業界で就職することになるとは想像もしていませんでした。ドクター3年の時に、今後の進路をどうしようかと考えながら、JREC-INという研究者用の就活サイトを見ていたときに、たまたまリージョナルフィッシュを見つけました。博士研究員やその他企業など色々な選択肢がある中で、同社が一番面白そうだと思いました。
学生時代は、水産ではなく理学分野でしたし、研究に関しても応用研究ではなく基礎研究を行っていました。この会社に入るまで、ゲノム編集は一度もやったことがなく、バックグラウンドとしてはかなり異なるのですが、動物個体を扱った研究を行うという意味では、ある程度共通する点があったので、挑戦してみようかなという気持ちになりました

―――現在リージョナルフィッシュでは、どんなお仕事をされてますか?

新規魚種の品種改良をメインで行っています
卵にゲノム編集のためのマイクロインジェクションと呼ばれる注射をして、それらを育てていき、変異が起こったものをスクリーニングして、また育てて、交配して…ということを繰り返していきます。毎日水槽を覗き、卵を産みそうかどうかを確認して、産みそうなものがいればホルモン注射をして卵を産んでもらって、研究を進めています。

また、研究とは少し毛色が違いますが、アウトリーチに関連した仕事もしています
学生向けの出張授業や、会社にいらっしゃるお客様に対して、ゲノム編集のマイクロインジェクションについての説明を行っています。一部体験もしていただきながら、分かりやすくお伝えできるよう工夫をしています。

―――そのようなお仕事をされている中で、どんなところにやりがいを感じますか?

品種改良をしていて、自身が予想した通りの特徴が見られたときには、非常に嬉しいですし、達成感を覚えますね。自身が作った魚が、将来的に多くの人が口にするようなことがあれば、それも非常にやりがいにつながると思うので、そうなる未来を目指して、頑張っていきたいと改めて思います。

「多くを学べる環境で、さらに良い品種作りを」

―――働いている中で感じる、リージョナルフィッシュの魅力や強みはなんでしょうか?

色々なことを学べる環境だということだと思います。
私自身、元々理学分野を歩んできたということもあり、水産に関する知見は少なかったのですが、岸本(リージョナルフィッシュ研究開発部長)やハットリ(リージョナルフィッシュ・魚類グループリーダー)など、水産業界でキャリアを積まれてきた方々からみっちり水産の育種研究について教わったことで、実験技術や考え方などを学ぶことができました。

リージョナルフィッシュはベンチャー企業ですので、皆さん全員がビジョンに向かって一生懸命働いています。なので、目標に向かってガツガツ働く姿勢も、身につけられた気がしますね。研究員はそれぞれに異なるバックグラウンドを持っているので、それぞれの強みを活かして働くことができるのも魅力だと思います。

また、研究者の目線でいうと、非常に多くの種類の生物を扱えるというのは、大きな魅力です。遺伝子の機能に関する研究では、1種類の動物を対象にして様々な角度から調べて掘り下げていくことが多いです。そういった研究内容でありながら沢山の魚を見ることができるのは、リージョナルフィッシュならではだと思っています。

あとは、ビジネスチームが近くにいて、会社の経営に関わる業務をしている様子を隣で見られているのは、とても面白いと感じます。アカデミアにいたら絶対に経験できないことですし、研究だけでは知ることのできない範囲なので、とても新鮮です。

―――日々研究に没頭されている本田さんのリフレッシュ方法はなんでしょうか?

お酒を飲むことですかね(笑)
あとは、大学時代にジャズ研に所属してトロンボーンを吹いていたので、楽器を触るのも気分転換になります。

―――今後リージョナルフィッシュで成し遂げたいことはありますか?

とにかく良い品種を作ることです。作って、きちんと世に出せるようにしていきたいです。
現在は、トラフグやマダイがメインになっていますが、それらにとどまることなく、魚種を増やしたり、新たな特徴を見出したりしたいです。リージョナルフィッシュが、色んな魚を作ることができるとアピールできれば、私たちが何をやっているのかがお客様にも伝わると思いますし、研究者側にも魅力を伝えることができると思います。
会社として研究を行っていると、研究結果を気軽に公開することはできません。だからこそ伝わりにくい部分もあると思うので、外に出せるものをもっと増やしていきたいと思っています。

―――今後はどんな方と働いていきたいですか?

熱意をもって働ける方がいいですね!
やはりベンチャー企業ということもあって、ガンガン開発を進めていかなくてはいけないという面はあると思います。ただ、リージョナルフィッシュに参画するためには、魚のゲノム編集を経験していないといけないという訳ではないと思っていて、色んなバックグラウンドを持っている人がいた方がいいと思います。私自身、水産業にもゲノム編集にも携わっていませんでしたが、リージョナルフィッシュに参画してから、色々吸収してやっているので、新しいことでもどんどん取り組めるような方がいいなと思います。

―――リージョナルフィッシュの育種研究促進に貢献する本田さんの仕事にかける想いをうかがえる貴重な機会となりました。本日はありがとうございました!

いまリージョナルフィッシュは人材採用を強化しています。

是非私たちと日本の水産業界を変えていきましょう!

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