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18.伝説④/ロレックスデイトナ アイボリーダイヤル化プロジェクト

※こちらは史実に基づいたフィクションです。
細かな点で創作箇所がございます。

前回からの続き
伝説③▶

伝説②▶

伝説①▶

今までの生産力を大幅に超える発注に、パンクしたゼニス

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実はオスカーにとっても、デザインで批判されるのは全く想定外でした。

「これは…どうすれば。」

ここで万が一、ロレックスによる組織的な買い占めが秘密裏に行われていた事実が明るみに出れば完全に終わりです。正に絶対絶命でした。

ここで追い討ちをかけるように、新たに全く想定外な問題が勃発します。
なんとエル・プリメロの納期ロット数がロレックスの想定を大きく下回り、デイトナの生産計画に大きな狂いが出てしまったのです。

ゼニスにとって、圧倒的な販売力を持つロレックスの発注数は、これまでの経験・想像を遥かに超えていました。さらにその中でも、要求品質レベルはかつて経験のない程の高さで基準外品は容赦なく突き返され、ゼニスには不良品の山が積み上がっていったのです。

結果、ゼニスはロレックスの発注規模に全く応えることが出来ませんでした。
もうオスカーとロレックスに打つ手は残されていませんでした。
この瞬間、ロレックスとゼニスのコラボレーションは完全に失敗したのです。

しかし。

市場の反応は失敗のそれとは全く違っていました。

中古デイトナ枯渇の中、図らずも新モデルが全く買えないという市場状況が生まれていました。

賛否の“賛”側の需要すら全く満たせない状況が長く続き、現行モデルでありながら常に店頭にないと言うおかしなモデルになっていたのです。

これがマーケットの飢餓感を煽り続け、ロレックスは逆に、かつて経験のないバックオーダー数を積み上げていくことになりました。程なく、新デザイン否定派はいつの間にかどこかへ消え失せていました。

そしてエル・プリメロ・デイトナはエクスプローラー・サブマリーナーなど他の人気歴代モデルを抑え、ブランドを代表する超絶人気モデル・つまりワイルドカードに変化していました。

そしてここから、今に続く一つの奇妙な現象に繋がりました。いわゆる現行品であるにも関わらずプレミアム価格で取引されると言う歪な現象です。この頃抱えたバックオーダーが引きずり、後継モデルまで市場供給量の安定化が困難であったのも事実です。(エルプリ時代に予約したのに,届いたのは次のモデルだった!みたいな感じです。)実はエル・プリメロ・デイトナからプレ値神話がはじまっていたんですね。

そして、デイトナ現象をきっかけに、ゼニス社にはロレックス以外からもエル・プリメロの発注が大量に舞い込みます。
ゼニスは1990年代、時計よりエル・プリメロ製造の方が主要ビジネスになっていくほどの大成功を収めたのです。
結果としてゼニスは、ロレックスへ10万個ものエル・プリメロを納品したと言われています。

こうして、クオーツショックから約20年後。この奇跡のダブルネームモデル「エル・プリメロ・デイトナ」によって、スイス高級機械式腕時計は復活しました。それを決定付けたシンボルとして、今も語り継がれる伝説のモデルとなったのです。

注意🚨

シャルル・ベルモのような話は、自分たちの周りでも良く起こりますよね。電子メール・LINEに馴染めない老害営業先輩が手書きでお礼状を書け!的な。
これは本物の人物にだけに許される暴挙だと思います。己の哲学・真理がある場合にだけ、美談になる訳ですからね。

そこらの凡人がやるとただの、はた迷惑ですから変に感化されて、真似しないようにしましょうね。笑

蜜月関係の終焉

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この2社のコラボレーションは想定外の要因により世界的大成功を収めました。

しかしそれを妬み、羨ましそうに見ていた悪の帝王がいました。
それはモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)を率いる、悪名高い帝王ベルナール・アルノーです。

「欲しいものはどんな手を使っても手に入れる」がモットーのアルノーは
1999年に、なんと突如ゼニスを買収。そして、一方的に他社へのムーブメント供給停止を通告してきたのです。その際、今後の供給はLVMH傘下の時計メーカーに制限すると言うものでした。(欲しければ傘下になりなさい、というメッセージ。)

【余談ですが、LVMHは現在もロレックスへの対抗意識が強くあるようです。バンフォードロンドンを買収したのもロレックスのカスタム人気が気に入らず(※LVMH傘下ブランドのカスタムは全く話題にならないから怒ったのでしょうね笑…)今後一切ロレックス・カスタムをさせない為の買収とも言われています。】

この事態を受けロレックスも急遽戦略を変更させられました。

ロレックスは自社開発クロノグラフムーブメント計画を同時進行していましたが、予定よりかなり早くドロップした感は否めませんでした。

その証拠に初自社開発クロノグラフムーブメント・Cal.4130の初期ロットはロレックスらしからぬ機械的マイナートラブルが頻発する事になりました。
こうして突然、最初で最後の奇跡のコラボレーションは後味の悪い幕閉じを迎えたのでした。

このモデルが残したもの

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このエル・プリメロデイトナ販売後から、ロレックスは供給量のコントロールというデマーケティング・プロモーション手法を確立しました。

今ではロレックスは一本作るのに1年掛けると言われています。これは品質・製品管理を徹底しているのと同時に、供給量を過剰に増やさないと言う二つの意味で機能しています。

そこに加えロレックス・ショップ体制の完成で、現行品のほぼ全てがプレミアム価格という今日の大成功へと繋がりました。(日本では2012/2/1から導入開始。どんなに不人気モデルであっても割引する事が契約上不可能になりました。発覚するとそのショップは契約解除のペナルティが課されます。)

ゼニスはLVMH傘下に収まった後、自社ブランド時計開発に力を注ぎ、今ではスイス時計業界・現存ブランドとして、「品質において最も厳格なロレックス社に認められた唯一のムーブメントを持つブランド」という圧倒的な地位を確立することに成功しました。

そして。

今、世界中でスイスメイドの機械式腕時計が「古臭い、時代遅れの腕時計」なんて言う人が誰もいない世の中を残してくれました。

それはある2人のスーパーヒーローが信念を貫いた、最大の功績だと個人的には思っています。

これがなければ、もしかしたらロレックスは今頃、質屋の片隅で埃をかぶるブランドだったかもしれませんし、“腕時計⁉︎あったね〜、懐かしい〜!”なんて未来もあったかもしれません。

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エル・プリメロ・デイトナを手に取ると、今でもそういったスイス機械式腕時計の狂気と熱気を帯びた不思議な魅力があります。もし機会があるなら、ぜひ一度腕に着けてみてください。

オスカーが信じたメカニカルへの普遍的価値。
シャルルが信じたスイス時計文化への純粋で強い祈りと畏怖。
その想いを世界へ突き刺すべく、厳しくそして丁寧に仕上げたロレックス。

それらの魂と気迫が宿った、間違いない世紀の逸品ですから。

🔴さてさて、今回の定点観測。アイボリー化の進捗はどの程度か?

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ここ数ヶ月は何も特にしていないので、変化は特に何もありませんが、アイボリーダイヤルで間違いです。あくまで参考画像ですが、現行デイトナとのツーショットだとこれだけアイボリーです。

※元々文字盤の白の色味自体が異なるので比較にあまり意味はありません。詳しくは過去の記事をご参考に。

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※このPDP、スピンオフ動画になりました。YouTubeで公開中。お時間あればご覧ください。

🔴またデイトナ2004年F番のパーフェクト付属品情報もYoutubeで公開中。

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