XL (Finland) part 1

あのPekka Pohjolaの後押しでデビューしたフィンランド産Jazz Rockバンド。第一作は1995年リリース。

XL - Xlent
(Ondine Octopus – Octo 404-2, CD, Finland, 1995)

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1. Milou  4:33
2. I.F.O. (Identified Flying Object)  6:12
3. The Kid = Pieni Poika  4:19
4. Balls = Pallot  6:13
5. Spellbound Princess / Dance Macabre = Noiduttu Prinsessa / Kalman Tanssi  8:16
6. A Sense Of Longing = Kaipaus  5:09
7. Olipa  7:17
8. Maid Of Dreams = Unten Neito  9:41
9. Eero  3:45

Jarmo Saari: Guitars
Arttu Takalo: Midivibes
Tuure Koski: Bass
Tomi Salesvuo: Drums                               

Jukka Hakokongas: Hammond, Accordion, Keyboards
Sonny Heinila: Tenor & Soprano Saxophone

Produced by Jukka Hakokongas
Recorded at YLE M 1, Finnish Broadcasting Company, Helsinki, Oct. 1994 

 XLの記念すべき第一作。残念ながら本作は所持してないのでコメントは無し。各種サブスクにも無い模様。後年(2012年)にリリースされたベスト・アルバムにTr.1と4が収録されました。


XL - Jukola
(Pohjola Records – PELPCD 10, CD, Finland, 1998)

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1. Helsinki 2000  2:23
2. A. S. P. (main Hall Mix)  4:14
3. Young Blood / Uuta Verta  4:09
4. The Dram Master / Unien Valtias  7:41
5. Milou II  4:29
6. The Palace Of The Great Vizir Of Angst  9:53
7. Marttyyri Humus  2:37
8. Markiisi Humus  4:18
9. Nocturne I: August /elokuu  4:41
10. Nocturne II: July / heinakuu  5:42
11. Jukola  8:56

Jarmo Saari: Guitars, Synthesizer, Vocals, Fretless Guitar, Programming
Arttu Takalo: Midivibes, Percussions, Vocals, Snare, Programming
Tuure Koski: Bass
Tomi Salesvuo: Drums, Percussions, Snare

Mongo Aaltonen: Percussions
Heikki Savolainen: Progrraming, Vocals
Jukka Hakoköngäs: Synthesizer, Snare, Vocals
Kie Von Hertzen: Vocals
Michael Brecker: Tenor Saxophone
Pentti Lahti: Sopranino Saxophone, Soprano Saxophone, Alto Saxophone, Tenor Saxophone, Baritone Saxophone
Sanna Kurki Suorino: Voice
Zagros Ensemble:
Kaisa Kallinen: Violin 1
Heidi Kuula: Violin 2
Petteri Poijarvi: Viola
Sami Makela: Cello

Produced by  Heikki SavolainenJukka Hakoköngäs

バンドはこのセカンドアルバムから彼等の後ろ盾となるPekka Pohjola自身のレーベルに移籍して、活動を終了する2003年まで作品を発表していく事となります。

本作は従来持っていたXLと言うバンドに対する個人的なイメージを端的に表しているような作品です。一応グループとしてはJazz Rockの範疇に属すると思われるのですが、このJukolaに収められた曲ごとのベクトルの向く方向が様々なことがあり、アルバムの持つ統一的なイメージが 掴みにくいです。パーカッシヴ+掛け声の若干プリミティヴなオープニングから、Genesisで最も怪奇な曲である"Mama"からオカルト風味を抜いた感じへと展開して、3曲目はMichael Breckerのテナーをフィーチャーしたお洒落系シティ・フュージョン・ナンバーが作品序盤のハイライト。 しかし、どういう経緯でMichael Breckerがフィンランドくんだりまで来て1曲吹いて帰っていったのか謎ですねぇ。続いての作品中盤では、やっとJazz Rock寄りのプログレッシヴロックが展開されるのですが、何やら魅惑のスクリーン・ミュージックになったりレア・グルーブ色の強いクラブ音楽風に日和ったりで、本当にじっとしていません。更に困った事に、色々と次々に展開する様々なジャンルの音楽の表現は、それ風の事が少々できますと言うようなイミテーションのレベルでは無くてかなり本格的なのです。この雑多さをPekkaは気に入ったのではと思います。考えてみれば彼の音楽もテクニカルなジャズロック~シンフォを基本として、シリアスなクラシックからビッグバンドジャズ、更にはコンチネンタルタンゴまで、振れ幅のレンジが非常に広かったものです。本作の終盤は、民族風ボーカルから弦楽4重奏入りのクラシカルなナンバーから静謐なパートを経て、最後は"イエスの錯乱の扉メインテーマ風+ストリングス・カルテット添え"で大爆発。そして作品は大団円を迎えるワケです。

まあ、何だか良く分かりませんが結構満足感はあります。各ピースの出来は前述した通りクオリティが高いですからねぇ。それでも、アルバム全体での方向性は、ある程度一定にした方が良さそうな気もしますけど。


XL - Jeti
(Pohjola Records – PELPCD 11, CD, Finland, 1999)

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1. In Dirt / Pohjalla  5:56
2. (Wish You Were) Mine / (Tytto Kuin) Toukokuu  5:33
3. NM  7:16
4. Precious / Kaunis  2:27
5. A Player's Prayer / Ukkorukka  5:15
6. Do You Have A Boyfriend? / Neiti Neilikka  5:08
7. Himalaya  7:34
8. Jeti  5:39

Jarmo Saari: Guitars, Synthesizer, Harp, Organ, Percussion, Fretless Guitar, Theremin, Soundscape, Programming
Arttu Takalo: Midivibes, Glockenspiel, Synthesizer,  Percussion, Soundscape, Programming, Sampler
Tuure Koski: Bass, Vocals
Tomi Salesvuo: Drums, Percussions

Kie Von Hertzen: Guitar
Heikki Savolainen: Percussions, Soundscape, Piano
Teppo Mäkynen: Gong
Katri Laitinen: Viola
Lotta Poijärvi: Viola
Anna-Leena Haikola: Violin
Meri Englund: Violin
Susanna Suorttanen: Violin
Maija Linkola: Violin
Minna Pensola: Violin
Ninni Poijärvi: Violin
Joel Laakso: Cello
Päivi Ahonen: Cello

Produced by  Arttu TakaloHeikki SavolainenJarmo Saari

サードアルバム。前作では作品の中に詰め込んだ音楽要素の多種多様っぷりに驚きましたが、それは見方に依れば彼等の音楽ボキャブラリーのカタログ化であり、つまりそれは自分たちに何が出来るかのメニューを示したとも言えるワケです。そしてそれは、その引き出しの多さ、またそれぞれの質の高さを見るに、なぜ彼らがPekka Pohjolaの眼鏡に適ったのかの理由も理解出来るのではと思われます。そんな意味で名刺代わりとして前作を見るのも楽しいのではありますが、まあ、それでも、いくら豪華な名刺を作ったとしても名刺だけでは事を為さないワケです。一本筋の通ったアルバムを制作する事とは意味が違うと言えましょう。で、本作では前作の一貫性の無さを取り敢えず修正し、より的を絞ったコンセプトの元にアルバムを制作した感があります。

本バンドはMidivibe奏者は居るものの、また必要に応じメンバーやゲストがシンセやピアノを扱いますが、元々は専任の鍵盤奏者が居ないバンドであります。考えるに、これは彼らにとって決してマイナスポイントにはなって無いと思われるのです。オールタイムのキーボードプレイヤーの存在はバンドにとって(特にプログレのジャンルでは)かなり支配的なモノと成り得ます。例えば、1980年代の英国ポンプ勃興時、ほぼ全てのバンドが2流のGenesisのようだった事を、また同年代のフランスでのMuseaレーベルのシンフォ系バンドでも3流Genesisの坩堝状態だったのを思い出します。つまり、強固なコンセプト無しで安易にKey, G, B, Ds, Voとかの編成でシンフォプログレバンドを組むと10中8、9はGenesis化します。勿論、Genesisの音楽が陳腐という事は絶対に無いのでありますが、シンフォニックロックでのキーボードの在り方のスタンダード化をGenesis(Tony Banks)は強く成し遂げてしまった罪があると言えます。その呪縛は現在も継続中。大方の出来の悪いシンフォ系グループは"出来損ないGenesis"の体を成す事が多いですな。まあ、それでもNeuschwansteinIvoryDeyss等のパイオニアであるGenesisのレベルに肉迫する素晴らしいGenesis Children達の作品も多数ありますが。

XLのメンバー達は元々はジャズ色の強い出自を持った演奏家だと思われますが、本作品ではその表現の狙いをシリアス(クラシック)に寄せる事を選択しました。参加した演奏家を見ると、本気度の違いがわかります。なんと、10人ものストリングスセクションをゲストで呼んでおります。叙情感の強い旋律からコンテンポラリー色の強いところ迄、また、一般的なシンフォバンドとは違う彼等の楽器編成ならではのエレクトロからアコースティックへの振れ幅を伴いながら進行する楽曲は既存のシンフォニック・ロックを超えようとの気概を感じる事が出来るものと思われます。


XL - Live Ballet
(Pohjola Records – PELPCD 13, CD, Finland, 2001)

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1. Himalaya Introduction  3:14
2. Aziz  1:38
3. Milou II  6:58
4. The Palace Of The Great Vizir Of Angst / Angstin suurvisiirin palatsi  10:51
5. Young Blood / Uuta verta  5:01
6. Maid Of Dreams / Unten neito  4:52 
7. In Dirt / Pohjalla  6:34
8. Nocturne II  6:40
9. Mercury / Elohopeaa  1:23
10. Markiisi Humus  7:22
11. Toledo  7:24
12. Jeti  7:31
13. Longing / Kaipaus  6:17

Jarmo Saari: Guitars, Vocoder, Theremin, Sampler
Arttu Takalo: Midivibes, Sampler, Sequencer
Tuure Koski: Bass, Bass Pedal
Tomi Salesvuo: Drums, Sampler

DJ Bunuel: Denon CD, Treatments, Voice (3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12)
Pekka Pohjola: Bass (3, 7)
Petri Keskitalo: Tuba (12, 13)
Monga Aaltonen: Percussions (12, 13)
Maija Linkola: Violin (12, 13)
Sakari Laukola: Violin (12, 13)
Anna Tanskanen: Violin (12, 13)
Minna Pensola: Violin (12, 13)
Tanja Bruun: Violin (12, 13)
Paula Nykanen: Violin (12, 13)
Lotta Poijärvi: Viola (12,13)
Janne Ahvenainen: Viola (12, 13)
Päivi Ahonen: Cello (12, 13)
Joel Laakso: Cello (12, 13)

4作目にして初のライヴ作品。録音は1999年10月20日から2000年11月10日迄、計8回のライヴからの演奏が記録されています。アルバム別に収録ナンバーを見ると1枚目から1曲、2枚目が5曲、3枚目が3曲、そしてこの時点での新曲が4という内訳であります。クレジットにある通り計14名のゲストがライヴに参加しておりますが、その中でも次作(5th)から正式メンバーとしてXLに加わり主にサウンドエフェクトやボイスを担当する事となるDJ Bunuelに関しては、13曲中9曲で演奏に参加。どちらかと言えば、元々はプレイヤー志向の強い4人のオリジナルメンバーが演奏に専念し、その4人によって奏でられる技巧的なサウンドのトリートメントやアウトプットの際のエフェクト等のの付加の役割が彼に任せられるたものと思われます。従来この作業は、スタジオでの作品制作に於いてはArttu TakaloJarmo Saariが担ってきました。しかし、ライヴでの演奏作業とそれらを同時にこなすのは余りに難度が高いとの判断かも知れませんね。それで、今回のDJ Bunuelの大々的な参加となったと思われます。結果を見るに、これは良い方向だったように思えます。オリジナルメンバー4人は演奏のみに専念する事ができました。彼らの持つ高度な演奏技術が遺憾なく発揮されたものとなっております。例えるならそのレベルはBrand XやMats Morganを思わせる程と言えましょう。本作に於いてその準レギュラー格とも言えるDJ Bunuelのゲスト参加以上の話題と言えば、XLにとって色々な意味でボス的な存在であるPekka Pohjolaが2曲でベースを弾いている事でしょうか。特に3曲目は、いかにもPekkaらしい歯切れの良いジャズロックナンバー。彼も楽しんで演奏している様子が感じられます。そして、アルバムのラスト2曲では、10名の弦アンサンブルを含む12人のゲストが加わります。アレンジを含め、パフォーマンス的には前期XLの集大成と言える演奏となっております。

一般的に言われている事ですが、ライヴ作品の後には音楽性が変わると言われます。実際、多くのアーティスト側にとってもライヴ作のリリースは自身の音楽の一つの節目と考えているケースが多いようです。果たしてXLの場合はどうでしょうか。この後の彼らの音楽活動に関しては、続くPart 2で書きたいと思います。


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