見出し画像

薄皮ってやつを剥くのが面倒なだけなんだ。

今回は「宿命」について。

農産物を生産して出荷していると、すべてが手塩に掛けたものではあるのだけど、悲しいことに「出荷されるもの」と「されないもの」に分けざるを得ない。その「されないもの」、いわゆる「ハネもの」とか「ハネ」と呼ばれるそれは、もったいないから捨てるわけもなく、やはり「自家消費」が基本。親類や知り合いに配ることもあるが、まずは率先して自らで食べる!

我が家ではその作物の収獲時期になるのと同時に、「ハネもの」たちが朝昼晩の食卓のレギュラーにもなる。それはトマトだったり、ナスだったり、キュウリだったり、トウモロコシだったり(さすがに梨はそうはいかないが)。とにかく最初のうちはいい。見た目が悪いとかの理由だけで、中身は旬の野菜だから、当たり前に美味しい。ただ、何事にも限度というものがある。過ぎたるは及ばざるがごとし。収穫したての新鮮なそれらは、最初は有難がられ、農家の特権だねと崇められてすらいるのに、徐々にその形態を、茹でられ、炒められ、煮込まれ、最後には大抵が肉で巻かれ…と変化させていく。あの手この手で調理されるものの、次第に疎まれていくその様は、少し可哀想に思えることも正直ある。だからなるべく、美味しく、心地よく、食べたい。食べてあげたい。これは云わば農家の使命でもあり、宿命でもある。

この問題に正面から立ち向かうのは、我が家では主に奥さんや母であり、僕ではない。ただし、「ソラマメ」だけは少し立ち位置が違う。その栽培作業のほとんどを僕一人でやっていることや、そもそもが僕の趣味で栽培を始めたという一面もあることから、そのハネものの扱いについても、他の作目と比べると、奥さんや母は一歩引いた位置に下がり、明らかに僕の手に委ねられている感がある。

もちろん、ソラマメは好きだし、莢を剥き、サッと塩茹でするくらいは僕にでもできるので、嬉々として作業をし、パクパクといただくし、どうぞどうぞと、家族にも大盤振る舞いする。他の野菜に比べて鮮度が重要であるソラマメは、塩茹でもなんでも、採れたてはハネものだろうととても美味しい。

ただ、今年から面積を増やしたこともあって、出荷量も劇的に増えた分、それに比例してハネものも同様に増えた。例のごとく、最初はまだいい。朝採りの新鮮ソラマメが、鮮やかな緑色で食卓の彩りに!お酒のお供に!なんつって(自分はお酒なんてめったに飲まないんだけど)。ただ、それが、毎日、毎食…となってくると、だんだんと手から伸びなくなってくる。「朝採り」も「彩り」も何もあったもんじゃない。それが現実。

とにかく責任者として、手は尽くす。「天ぷら」には少し前に挑戦してみて、なかなか美味しく出来た。砂糖で甘く煮付けてみる「甘煮」的なやつは前にもやったことがあり、これもいい感じに出来た。他にもいろいろトーストに乗せてみたり、チーズと合わせて炒めてみたり。その可能性は無限大!と思ったのと同時に、浮かび上がってきた問題。それは「手間」…最大の敵は「薄皮」だった。

どう調理しても、「薄皮」が邪魔だと気付いた。鮮度がいいうちや、調理してすぐならまだ柔らかいけど、それでも食べる時には、薄皮はない方がやはり断然食感がいい。気にならない人もいるのかもしれないけど、少し置いておいたり、そもそも熟し加減によっては、とたんに分厚く、固くなる、あの「ソラマメの薄皮」の野郎め!(ソラマメの薄皮好きの方がいたら本当に申し訳ありません…)。この件に関する科学的根拠は特に知らないまま書いてしまっているけど、ここ数週間の経験的なものとして、はっきり言いきれるくらいに、あいつらは固い!塩茹でしたりして、1個ずつ皮を剥きながら食べるなら全然問題ないのだけど、揚げるなり煮るなり、調理する際には、前もって薄皮を剥く作業が必要になる。これがまためんどくさい!天ぷらにする時も、甘く煮る時も、コツコツちまちま剥いて、そして美味しくいただいたけども、それでもハネは毎日毎日生まれてくる。一気に大量消費してしまいたいところだけど、そのためにはどうしてもあの「薄皮」が…!!

このまま引き下がるのも悔しいので、試しにぐつぐつ煮込んでみた夜もあった。多分、本当に時間をかければ、柔らかくなってくれるのかもしれなかった。ただ、そこまでの時間も気力も持ち合わせがなく、20分でギブアップ!それでも20分中火でグツグツ煮詰めてみた、「薄皮付きのソラマメの甘煮」、行けるんじゃないか…?とかすかな望みを託したその結果は…。

全然ダメ!皮はかったーいまんま。もっと長く煮込めばいいのかもしれないけど…結論は出た。やはり「皮は剥いた方が良い」。面倒だけどね。いやほんとに。

最後に、ここまであれこれ試行錯誤した結果、今シーズンで一番美味く、そして上手くいったやつをご紹介。「ソラマメの甘煮(やっぱり薄皮なしバージョン)」。数分砂糖で煮るだけ!色もきれい!甘くて美味しい!成熟具合にバラつきがあると、熟したものから実が崩れるので、なるべく同じくらいに熟したものでやるのがおすすめ。一皿くらい一気食いしちゃう勢い。でも、手軽さも込みだったら、これよりも塩茹でして薄皮剥いたソラマメとチーズをパンに乗せて焼いた「ソラマメチーズトースト」の方を個人的には推したい。絶妙な塩気がたまらない!

画像1

と、まぁこんな感じで、今年から秋まき・春まきと2段階で挑戦したソラマメ栽培も、前半戦「秋まき」の収獲を終え、一呼吸入れた後、後半戦「春まき」の収獲がぼちぼちまた始まり、そしてハネものとの宿命の対決も同様に。毎日塩茹でして乗り切るのか、大人しく薄皮を剥き続けるのか、それとも画期的な「楽ちん薄皮克服方法」を見出すのか…。結末はいかに!乞うご期待!…はしなくてもいいので、皆さんソラマメたくさん買って、たくさん食べてください。よろしくお願いします。とりあえず今回はこの辺で。それではまたそのうちに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?