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読書録「若い読者のための宗教史」

リチャード・ホロウェイさん著の書籍「若い読者のための宗教史」を読了。
個人的な備忘録として、簡単な感想とまとめを記載しておく。

1.経緯
近所の書店が全面リニューアルしており、紀伊國屋書店になっていた。せっかくなので、ぶらりと本棚を漁っているときに見つけた本で、興味が出ていた宗教史を知る初めての一冊にチョイス。

2.概要
ユダヤ教、ヒンドゥー教に始まり、仏教、キリスト教、イスラム教など主要な宗教に限定せず、ジャイナ教、ゾロアスター教、儒教、道教、神道、ヨーロッパにおける宗教の歴史(プロテスタントとカトリック)、アメリカ史との関連などなど幅広い分野で紹介されている良書。物語調になっているため、飽きることなく読みすすめることができる。宗教史を知る最初の1冊には丁度よい内容であった。

3.個人的な要点
宗教史に関しては何も知らなかったレベルだったため、まずは各宗教の成り立ちから学ぶことが多かった。特に、キリスト教とイスラム教の2つが1つの宗教の派生であることも知らなかったので新鮮であった。
 ヒンドゥー教→仏教(派生:ジャイナ教)
 ユダヤ教→キリスト教/イスラム教
また、ユダヤ教系列の歴史では、偶像崇拝を否定することから始まった宗教だが現在は偶像崇拝をしていること、偶像崇拝のビジネスを否定する形で始まった宗教がビジネスや政争の種になってしまったくだりは、人間の本質に迫るものを感じた。

4.個人的な深堀り
同書には様々なことが書かれているため、記録したいポイントを絞っていきたい。1つ1つの宗教ごとに特徴があり、繋がっている部分の面白みがある。ヒンドゥー教は輪廻転生を掲げたが、これを否定したのが仏教であり輪廻転生から解脱することを掲げている。大元は、アブラハムという偶像崇拝を商売とする店の子供が、偶像を否定するところから始まる。神は偶像に宿るのではなく各々に宿るという思想のもと、「アブラハムの宗教」が生まれ、ここから「ユダヤ教」、「キリスト教」、「イスラム教」へと昇華していった。

それぞれは創始者(最初の預言者)となる人物がいなくなったのち、時代を経るに従い、考え方の違いから分派していった宗教たちである。考え方や認識の違いによって、異なる集団が生まれ、ときには争いの種になってしまう部分は、宗教に限らず現代社会の至るところで発生していることを考えると、昔から人間の本質は変わらないのだろうなと感じた内容であった。

創始者たちは、その時々で苦しい人々を本気で救うために活動を進めたのだろうが、後世においてその言葉が拡大解釈されたり、誤って伝わったり、歪曲された結果、(おそらく)創始者の考えとは異なる形で継承されて行った部分もある。

似ているなと思ったのは、創業者が圧倒的な存在を放つ大企業。先日の読書録「ホンダイノベーションの神髄」でも、本田宗一郎という存在が大きいがゆえに不在になったときのインパクトが会社を良くない方向に導きつつあると指摘があった。これだけ記録媒体が進化した現代ですら、創始者の意図を正しく継承するのが難しい中、過去の人々の考えがどんどんとずれていくのは仕方ないことかもしれない。

5.所感とまとめ
宗教史の本であり、入門として申し分ないほどわかりやすい本であった。それぞれの宗教がどうであったかというより、宗教の成り立ちや経緯は、人間の性質に引っ張られた結果であり、性質が過去と現代で大きく変わらないのだなというのをより強く認識できた書でもあった。

宗教史も人間とは何か?幸福とはなにか?を突き詰める上では、重要な要素が多いのかもしれない。深堀りして他の本も読んでみようと思う。

※同書の行き先:自宅保管。いつか子供に読ませたい1冊。