赤い公園・津野米咲さんと僕⑱

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虚無感だらけの毎日を送っていたある日、とあるバズり中のツイートが目に留まった。

「何もない人は、自分の人生を終わらせる前に、自伝を書いたらよい。そして、それを国会図書館に納本する。これがお墓になる。生きた証しが保管される。もっとも、誰ひとり閲覧する者はいないと思うが、もしかしたら、ふと、誰かが読んでくれるかもしれない。 続)」
(キジバト(鳩通信班)@kijibato_hato)

推しを失った自分はまるで何もない人だったので、なるほど、と思った。

同時期に劔樹人さんのコミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を読んで、それを原作とした映画も観た。ハロプロのファンが、ハロプロを通じて出会ったファンと成長していく物語で、原作者の劔さんはつのさんとも親交があった人だ。彼のツイートを読んでるうちに、また気になるものがあった。

「多くの方が #映画あの頃 を知って、「〇〇ヲタの場合も作って」「俺らの話も映画になってほしい」と言ってるのを散見しますが、自分で何かしら書いて発表したらいいんですよ!20年後映画になるかもしれない。」

またしても、なるほど、と思った。

それらのツイートがきっかけで、(更新途中とは言え)事実を並べた津野年表を作ったんだから、だったら次は自分の主観を思いっきり入れて、あるがままを記して、つのさんという人を文章に残したらいいんじゃないかと思うようになった。いいことも、悪いことも、クソみたいなこともありのまま全部書こう。そしていつか勝手に本にまとめて、国会図書館に納本しよう。今なら誰でも自費出版できるし、同人誌だって納本できる。もし友人でそんなことを言い出すやつがいたら絶対バカにするけど、バカでもいいじゃん。それだったらつのさんが消えない。つのさんを残そう。そんなバカみたいな話が、新たな、小さな夢になった。こんなの書いたところで誰が読むんだろう。絶対にそんな面白くないし、賛否両論だろうけど。

でも、物語としてはバッドエンドではあるし、こんな追っかけ方をしていたのも間違いだったかもしれないけど、追っかけ続けて残ったいろんな思い出だけはバッドでも間違いでもないよなと思った。

例え間違ってても〈間違いだらけの答えになれ〉だ。〈バッドエンドのエンドロールでも今はどうでもいいよ〉だ。赤い公園の曲を、久しぶりに口ずさんだ。


36 最後に

つのさんは書く歌詞からも分かるように、自分よりも年下なのに、自分より何年も人生経験があるような、すごく尊敬できる考えを持っている人でした。そういう考えを持てるのは、きっと辛いことも経験しているからだろうとも思うけど、でもその辛いことを超えるくらいのポジティブさとか優しさとか愛情も持っていました。

noteを書いてる途中に、「あのnote、クライマックスに向かう感じが『100日後に死ぬワニ』っぽいな」って言ってる人がいるよ、と友人に教えられて、最初は〈なんて失礼なやつがいるんだ。俺にはいいけど、つのさんに対して失礼だろ〉と思いました。いや、違う違う。本当に赤い公園が好きだったら、そんなやつにコンロのつまみを渡してはいけない。そういう時は〈仕方ないから君に愛を分けてあげるわ〉だ。俺のこと嫌いだろうにいつも気にかけてくれてんのな、いつも読んでくれてありがとう!こんな感じで、つのさんの考え方は、いつも大事なことを思い出させてくれて、困った時や負の感情に陥りそうになった時の道しるべみたいになっています。

つのさんは、そういう人間愛に溢れた人だからこそ自分を含めた誰とでも仲良くなれたんだろうし、いつも「友達はそんなにいない」なんて言っていたけど、実際は友人や知り合い、そして見守ってくれる人がたくさんいる人でした。少なくとも、自分にはそう見えました(そして、そういういろんな人から連絡が来てもあまり返事を返さない、猫みたいな人だよ。そう言ってのはうたこすでした)。

なので、きっといろんな人にいろんな部分を見せてきたはずで、自分が見てきたのもつのさんのうちのごくごく一部分だったと思います。ましてや、それをファンという枠に広げたら、人それぞれ思うところがたくさんあると思います。「まいさちゃんはそんな人じゃなかったよ」と思う人も、それはそれで間違ってないと思います。ここに書いたものは、ファンであり、友人(だったのかなあ。でも自称友人です)でもあった自分というフィルターを通して見た、つのさんの人生のごくごく一部分ではありますが、彼女がどんな人だったのか分かるための手掛かりに少しでもなればいいなと思っています。

赤い公園というバンドについても一緒です。聴いた人、観た人の数だけ赤い公園というバンドの印象があり、「赤い公園はそんなバンドじゃないよ」と思う人も、「お前が言ってることはおかしい」と言う人も、それはそれで間違ってないと思います。もし自分の文章を読んで気分を害された方がいらしたら申し訳ないと思いますが、嘘は書いていないですし(細かい記憶違いはあるかも、間違ってたら訂正しますのでコメントください!)、そういう方はぜひ、違う視点での赤い公園についての文章にして読ませてください。

「否定的な意見は読むのが辛い」という方もいたのでそこも申し訳なく思いますが、そういうあなたこそ俺に対する否定的な意見を言ってるじゃないですか、そういう意見だって読むの辛いですからね!(笑) いやいや、もう妄想だ嘘つきだと言われ慣れてるし、全然構わないです。そういう人には最近ハライチ岩井さんが言ってた言葉を贈りたいです。「何かを肯定することも誰かにとっての否定なんだよ」。そんなこと言ったら、赤い公園ってもともとはダメダメでグズグズなところばっかりのバンドで、Twitterをやってた頃の自分はよく否定的なことも言ってたんです(誰も覚えていないと思いますが、ラジオでリスナーに電話して、アソコを風呂に付けさせて、その音を電波に流して喜んでたバンドですよ!そんなとこまで全肯定しろってか笑!)。良いところは全力で好きになるし、これはちょっと…と思うところは否定するし、そういうところも全部全部ぜーんぶひっくるめてファンでした。

このnoteの更新中に、Twitterではいろんな意見や議論が出ていました。歌詞や曲は分かりやすい方がいいのか、複雑な方がいいのか。バンドとファンの距離感は近い方がいいのか、ある程度あった方がいいのか。考察なんてする必要ないよ、いや読み解くのって面白いんだよ。もうそっとしておけよ、いや思い出を語るのはいいことだ。私はあのアルバムが好き、自分はあっちのアルバムの方が好き。……そのどちらにも良いところがあって、正直どれも正解だと思います。このnoteは、そうやっていろんな人に赤い公園のことを語るきっかけになってほしくて始めたようなものです。過去のライブの感想や思い出を書いた文章なんかも以前より増えた気がしています。赤い公園というバンドは解散という道を選びましたが、そうやって、いろんな人が〈赤い公園はこういうところが良かったんだ、すごかったんだ〉という事実を語って残していけばいいんじゃないかなと思っています。(でも、事実と妄想は分けましょう!そして〈お手軽なnote見つけた、引用ペター〉じゃなくて、参照元の雑誌やネット記事の方を読んであげてください。このnoteこそ妄想だ嘘つきだ言われてますから信用できないですよ!)


以前、友人が熱烈な野球ファンで、会話中何でも野球に絡めてくるのでうっとおしいことがありました。でも誰かを推すとか応援することって、それだけですごく人生が楽しくなる。やっぱり辛いこともたくさんありますが、手帳やカレンダーに好きなアーティストのリリースやライブの予定を記入するだけで、あと何日だ、その日までは頑張ろうなんて前向きに思える。赤い公園のファンになって、そういう当たり前のことを知りました(ファンの方の中には、赤い公園が縁で出会い、お付き合いして結婚して、お子さんと一緒にベンチをお参りしていたカップルもいました)。僕にとってアーティストのみなさんは、存在そのものが希望です。ましてやバンドなんて、複数人が一堂に会して演奏をして、その誰が欠けても困ってしまう存在。もし会社やバイト先、団体に所属していたことがあるなら、想像してみてください。同じチームで誰も辞めず、病気や怪我にもならず、トラブルも起きずに10年も続くなんてまずないじゃないですか。バンドとバイトを単純比較するなよって話ですが、でもやっぱり、バンドが何年も続くなんて奇跡だと思います。

そんな危ういものだからこそ、奇跡がいつまでも続かなくて、ある日突然希望が無くなることもあります。……いや、ある日突然無くなってしまうのはアーティストだけじゃなく、自分かもしれない。どんな物事でも、枯れないものはない。例え好きなアーティストも自分もずっと健在で続いていたとしても、たった数か月で生活スタイルが一変してしまい、今までのような応援ができなくなることだってありうることが分かりました。だったらそんなアーティストのみなさんに、できれば会えるうちに会いに行って、できればリアルタイムで拍手や応援を届けて、希望をくれたお礼をするべきなんじゃないかと僕は思います(もちろん直接会いに行くのが難しいこともありますが、お礼を伝える方法なんていくらでもあります。このnoteも、赤い公園とつのさんへのお礼みたいなものです)。だからこそ、日々、後悔のないように生きなきゃな、と今は当たり前のことを思っています。もし、行くか迷ってる、買うか迷ってる、やるかどうか迷ってる物事があるなら、ぜひ後悔のないように!(特に、CDはこれまで永遠にショップに並んでると思っていましたが、意外とあっさり廃盤になりますよ!)


ラストライブ後になるといろんな感情が沸き起こってきてこんな文章は書けなくなると思ったので、これを書いている今現在はラストライブの前ですが、今は理子さん、ひかりさん、うたこすの今後を見守って、応援したいと思っています。もちろんちーちゃんのこともです。みなさんそれぞれ素晴らしい技術と表現力とキャラクターを持った人だし、誰よりもつのさんと一緒にいた人だから、何かしらつのさんの良いところや遺志を受け継いでいる人でもあるはずです。なので彼女たちが今後、音楽活動を続けるでも、裏方に回るでも、アイドルに戻るでも、一般人になるでも、別の道に進むでも、行方が分からなくなるでも、どういう道を選ぶにせよ、今度こそずっとそれを応援していきたいと思っています。これを読んでる方々も、もし良かったら3人(+1人)のこと、いやそのうちの誰かでもいいので、ずっと忘れずに応援してもらえたら、同じファン仲間として嬉しく思います。(応援の仕方、距離感の詰め方はくれぐれも参考にしないでください……)

(メンバーのことはもちろん応援するけど、私はバンドが好きなんだよ!とか、つのさんみたいなソングライターを推したいんだよ!という方は、つのさんに教えてもらったり、引き合わせてくれたりしたたくさんのアーティスト、バンド、アイドルを始め、さまざまな個性的な人たちを探してネットの片隅で紹介しています。それがつのさんから引き継いだ自分のやるべきことかなあ、と思うので。赤い公園の代わりなんてどこにもいないけれど、でも世の中にはまだまだたくさんの良い音楽がありますので、そういう方はぜひ僕のことをこっそり探して見付けてみてください。「レッパーさんですか?」と聞かれても、「違います」と答えますが…。)


最後に、noteを書き始めて、こんな長文にも関わらず非常にたくさんの方に読んでいただき、たくさんのメッセージをいただきました。中には懐かしい人もいたし、ビックリするような人からもメッセージが来たし、全く知らない人からもたくさんメッセージをいただいて、全部読ませていただいています(不思議と文句はまだ1つも来ていません)。Twitterなどにこのnoteのリンクを貼ってくれた人や、そこで感想を書いてくれた人もたくさんいたし、これらのnoteを受けて別のブログを書いてくれた人もいました。サポートを贈ってくださった人もたくさんいました。皆様ありがとうございました。テンポ感を重視して省いたこともたくさんあるし、書かなかった・書けなかったこともあるし、書いているうちに思い出してきたこともあるし、ラストライブの感想もあるし、それらを加筆・修正して形を整えて、いつか本当に本にできたらなと思っています。途中酷いことも書いたし、うまく書けたかどうかは分かりませんが、どんな形であれ〈赤い公園というすげーバンドがいたんだぞ〉という事実がずっと残っていけばいいなと思います。(「こんなの本にするんじゃない!」という方、こんな文章よりももっともっとすごいやつをぜひ読ませてください。一緒に国会図書館に並べようぜ!)

そして、以前まとめた未発表曲の有料記事もたくさんの人に購入していただきました。本当にありがとうございました(こちらも驚くようなアカウント名の人にも購入していただきました。どうせこれも読んでるんでしょ?最後まで頑張ってね!)。あの記事には「買ってくれた人には何かおごる」なんて書いたけど、それも叶わない状況になってしまいました。あの記事の売り上げと、サポート機能でいただいた代金は、自分がいただいたままでいいものではないので、いつかつのさんのお墓(なんてどこにあるか知らないけど、得意の調査力で探します)にお備えするお花代にでもしたいなと思っています。かなり豪華な花束が作れそうだし、つのさんはお花が好きな人だったのできっと笑ってくれると思います(迷惑だったら別の方法を考えます)。これまでこれらの記事に勝手に登場させた赤い公園のメンバーを始めとするみなさま(ちーちゃんからだけは「好きに書いて!」と許可が出ました)、ファン友達のみんな、事実確認のチェックをしたり、間違いをいち早く指摘してくれたりしてくれた友達もありがとうございました。ネットでさんざんディスってくれてた人たちも、傷つけてくれてサンキュー。これらの話も年表も、更新や修正は気が向いた時にまだまだ続けようと思いますが、とりあえずこのお話はここまでです。あと2・3記事、書き記しておきたいこともあるのですが、レッパーとしてのファン活動もぼちぼち、今度こそ本当に終えようと思っています。今までどうもありがとうございました。

おわり

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