赤い公園全曲考察36「くい」(公園デビュー)

実は、赤い公園の曲をここまできちんと読み解こうと思ったのは、この「くい」という曲がきっかけでした。「公園デビュー」リリース時に放送されたNHK FM「サウンドクリエイターズファイル」で、津野さんが幼少期について語る時「ピアノ教室で劣等感を感じてて、ずっと窓の外のラブホテルを(そうとは知らずに)眺めてた」と言っていて、「あ!これって「くい」の景色のことだじゃん!」って。「一見ワケ分かんない歌詞もきっと思いがこもってるはずだから、もっとちゃんと読み解かなきゃ!」って思ったんです。だからこの曲は、個人的には赤い公園沼によりハマるきっかけになった大事な曲です。

ちなみにライナーノーツでも、藤本さん「赤い公園にとって大事な曲」、歌川さん「昔からある大事な曲」、佐藤さん「アルバムの中で一番古い曲。立川時代を思い出す」と語っています。みんなにとって大事な曲だね。

この曲に関しては、津野さんのライナーノーツにかなり歌詞を読み解くヒントがあります。けどまんま載せるわけにもいかないので要約すると、バイト帰りに一人きりの部屋に帰ってきて、過去を思い出して孤独を噛みしめる、ということ。孤独な時、今のこと以上に過去の景色がいくつか思い出されるというのがすごくすごく心に沁みます。あの頃は良かったね、でも帰ってこないんだね…。そんな自分を「出る杭」に例えるなんて、なんだか聞くたびに胸がグググってなります(タイトルがひらがななのは「悔い」ともかかってるのかな、なんて)。

でも、この曲も工夫があって、一番は津野歌川のコーラスとベースのみの暗めの曲なのに、二番はバンドの音になって力強い。これって最初は孤独感を表しているけど、二番でそこから立ち上がる様を表している気がする。もはやネガ→ポジを言いたいがためのこじつけみたいになってるけど、でも一番は暗いのに二番は強いって他に何か理由あるかなあ?最後にちーちゃんが「孤独だ!」って歌う時、もうそれは孤独じゃない気がする。だからみんなにとって大事な曲なんだと思う。

それにしても、一番と二番でベースとメロディーはほぼ同じなのに、これだけ表情ががらっと変わるなんてすごい。受験勉強の時使ってた暗記用の緑と赤の透明なシートみたい。ドラムとギターをかぶせると隠れていた文字が見える!みたいな。

ライブでは、アルバム収録前からやってた古い曲で、最初は一番を佐藤津野が歌い、歌川さんは笛を吹いていました(ひかりちゃんはベース)。でもいつからか一番を津野歌川が歌うという音源と同じ体制になった(って話をちーちゃんにしたら「そんなことよく覚えてんね」って言われた笑)。最後はよく佐藤津野藤本の順に並んで「Choo Choo TRAIN」のグルグルダンスをやってました笑。それから津野さんの大好きな長澤知之さんのライブで一緒にやったこともあったらしい(シークレットゲストで出たから見てないんだよ…)。

「ランドリー」や「くい」で描かれた景色については津野さんのこの赤い公園スポットについてのツイートも必読。 

その後の聞き取り調査と現地調査により、きらきらしてるホテルは「キャメルイン(おそらくウエスト)」ということが2019年になって判明します。立川の新たな聖地です笑。

復活する気概に溢れた「今更」で始まった「公園デビュー」は、この曲のおかげでアルバム全体の読後感がなんだかスッキリすると思います。「孤独だ!」って歌ってるのに。

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