赤い公園ライナーノーツ集

主に現在読めなくなってしまった公式ホームページのライナーノーツ、レビューを掲載します。掲載に問題がありましたら直ちに消去しますのでご連絡ください。


●「透明なのか黒なのか」セルフライナーノーツ(https://www.jungle.ne.jp/artistvoice_post/%E9%80%8F%E6%98%8E%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B%E9%BB%92%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B/ より引用)

デビューミニアルバム・上盤 (通称:黒盤)『透明なのか黒なのか』津野米咲(G./Cho.)によるセルフライナーノーツ。
M-1「塊」。隠れてないで、でもこっちには来ないで、すりぬけないで、と歌ってます。対象は何なのでしょう。とにかく肩の力を抜いて聴いて下さい。
M-3「透明」。2本の線がうねっているのですが、交わらないまま延々とのびていくイメージです。
M-5「潤いの人」。これを綺麗にコーラスできると気持ちいので、お時間がありましたらやってみて下さい。
M-7「副流煙」。カーテンから忍んでくる夕日と、耳の遠くでバラエティー番組が鳴っているイメージです。いかに明るい気持ちで聴けるかが勝負です。
M-9「世紀末」。前曲との流れで聴く事をオススメします。噛み砕けない現状を、数分間だけ、アップテンポに吹っ飛ばします。

G./Cho.津野米咲


●「のぞき穴」ライナーノーツ(ひみつのサイト「のぞいちゃいな」(現在閉鎖)からの引用)

佐藤千明(さとうちあき)
のぞき穴
すっかりライブ定番曲ですが、音源はライブとは180度くらい違った感じに仕上げました。とにかくいろんな音が駆使されています。ひとつ注意したいのが、聴いてる最中は後ろを振り向いたら駄目ですよ。
何かを呼んでしまいそうな、背筋も凍る不気味な音になってますので。残暑厳しくて冷えたい人、是非オススメです!


個人的に、赤い公園初の破廉恥ナンバー!エロスというよりはえっちって感じ。少女というよりは、女という感じ。誰しもが経験ある、親にも言えないあのちょっと懐かしいトップシークレットが詰まっております。すましたレディーのように歌いました。是非、聴いてください!


津野米咲(つのまいさ)
のぞき穴
踊ってください。


あなたの娘が出来たとします。


藤本ひかり(ふじもとひかり)
のぞき穴
アゲアゲアッパーチューンです。朝起きてすぐに聴いてください。


これはねむる前に聴いてください、


歌川菜穂(うたがわなお)
のぞき穴
いつも誰かがあなたをみているよ…そんな歌です。聴いてください、のぞき穴。ドッドッドッドッ(曲始まる)


Dangerous Love...


●「公園デビュー」ライナーノーツ(特設サイト(現在閉鎖)より引用)

公園デビューライナーノーツ

佐藤千明 (Vox/Key)

1:今更
ギターロック。
サビで一気に景色が開けるところの、ポップ感がたまりません。

2:のぞき穴
ライブアレンジver。
マネージャーから「もっといける!もっといける!」と言われ続けた果ての「のぞいちゃいな!」、をぜひ聴いてほしいです。

3:つぶ
雨の日に、カッパをきてはしゃぐ5歳の我が子を見つめるお母さんのような気持ちで歌いました。みんなのうた というイメージ。

4:交信
イントロのピアノから涙、涙です。そっと心に寄り添ってくれるような、本当に美しい曲です。

5:体温計
ピアノとボーカルだけの曲です。
細かい息づかいや、曲を物語るかのような抑揚のあるピアノを感じてほしいです。

6:もんだな
前半の流れを一気に変える曲!
リズムが気持ちいいです。

7:急げ
最初からベースの轟音に思わず笑います。たくさんあるキメに注目です!

8:カウンター
個人的に活動再開を一番感じる曲。
テンポもノリもハチャメチャですが、歌詞がドラマチックで好きです。スカッとしたいときにもってこい!

9:贅沢
可愛い曲です。小学校4年生くらいの、好きな子を振り向かせるために計算をしだす女の子をイメージして歌いました。つぶに続く、「みんなのうた」感。

10:くい
アルバムの中で一番古い曲です。立川時代を思い出します。歌も演奏もエモーショナルで、聞いたあと、なんだか空っぽになったような気分になります。


津野米咲 (Gt/Pf/Cho)

1:今更
音数も少なく、シンセも入っていないので、コピーなんかしていただけたら嬉しいです。やっていてすっきりする曲です。

2:のぞき穴
ギターに関して言えばとても簡単で、でも他の楽器と混ざると複雑に聞こえるという不思議な曲です。とても私たちらしい曲です。

3:つぶ
音を削りに削りました。「枯れないものはない」とわかっているけれども日々をすごしていく、そんな歌です。

4:交信
小さい頃はなんだって出来るような気がしたけれど、社会の中に生きる今は忙しなくて、それどころではなくなってしまっています。でもいつだってもう一度始めましょう、ぼくらのよるを。

5:体温計
私達は低体温症に悩まされています。凍りついています。それは幼い頃にも少なからず持っていた病です。

6:もんだな
赤い公園流のストレートを投げてみました。スネアの音が気に入っています。

7:急げ
自信がなくて、羨んで、妬んで、女子は忙しない。しかし、信号は青です。進めと強要されるこの社会の中で。

8:カウンター
我々は未来から集合がかかっているのです。覚悟をきめなくては。

9:贅沢
家に帰ったらお母さんのご飯が待っています。不満とかではなく、ただ、あるものを壊してみたくなるのです。そんな事はなかなかできないわけで。でも、そうこうしている日常が贅沢だと噛みしめるのです。

10:くい
バイト帰り、午前二時、福生の方の空は米軍基地のライトで真っ赤に染まっていました。だだっ広い一人きりの部屋に帰ります。夢とバイトと過去は孤独を浮き彫りにします。そんな独り者が集まれる場所のような曲です。


藤本ひかり (Ba)

1:今更
サビで手を振ってくれたら嬉しいです!

2:のぞき穴
シングルとの違いを何個見つけられるかがポイントです!

3:つぶ
ちーちゃんの優しい歌声に注目です!ひと息つきたい時に聴いてみてください。

4:交信
これは自信をもってオススメしたい曲です。
いつ聴いてもホントにいい曲です…笑

5:体温計
ちーちゃんとまいさの生々しい感じがたまらないです。

6:もんだな
手伝う男はもういない~
のメロディがすきです!

7:急げ
イントロのベースのぷぎゃー感に注目です!

8:カウンター
まーわーれー!!!

9:贅沢
きゅんと心臓を撃たれる曲です!

10:くい
昔を思い出す曲です。
赤い公園にとってすごく大切な曲です。


歌川菜穂 (Dr/Cho)

1:今更
再スタート!スタートダッシュ!気合いのこもった一曲!

2:のぞき穴
聞き所はラストの「のぞいちゃいな」!

3:つぶ
今までにないような曲。いろんな音がパラパラしてて、聞いてて楽しいと思います。

4:交信
赤い公園自信作!

5:体温計
唯一ピアノとボーカルだけの曲。一音一音緊張感漂ってます。

6:もんだな
後半戦スタート!縦にのれる曲

7:急げ
女子なら共感してくれる人も多いはず…

8:カウンター
元気になれる曲。この曲聞いて頑張ろう、と思える!

9:贅沢
せつなかわいい曲。リコーダーの音がイイ!

10:くい
昔からある大事な曲。ラストサビの孤独だ!を皆で叫ぼう!


●「猛烈リトミック」オフィシャルインタビュー、全曲解説、先生からのコメント(特設サイト(現在閉鎖)より引用)

NOW ON AIRについて

佐藤千明 (Vo)
新しい音楽に出逢わせてくれるラジオに、貴方と私達を出逢わせてくれたラジオに、
”ありがとう、これからも宜しくね”と魂入れて歌った曲です。
”日本中の耳に”届けこの音楽!

津野米咲 (Gt)
女の子は、ひどく日々の泡につまづきやすい。
そんな中、いつも見守ってくれているラジオに恋をするのです。
音楽ありがとう。
ラジオありがとう。
音楽家として気合いの一曲です。
我々にとっても、皆さんにとっても、新しい音楽讃歌になることを願って作りました。

藤本ひかり (Ba)
笑いあり涙ありのきゅんきゅんPOPソングです!
かなりドラマチックに仕上がったと思います!
電波と共に、飛んでいきたい気分になります!羽ばたけ!空へ!ぴゅーん!


歌川菜穂 (Dr)
女の子なら誰でも思ってしまう、言葉にできない気持ちがぎゅぎゅーーっと詰まった一曲です。
女の子って、素敵やん?

official interview by 三宅正一(ONBU)

赤い公園は無敵だなって こんないい曲が書けて、こんな素敵な音楽家たちに遊び方を教えてもらえる、こんなにカッコいいバンドはいないと思う

8月18日、都内某所。幸運なことに、ほんの数分前に完成したばかりの『猛烈リトミック』を、メンバーやスタッフとともにマスタリングスタジオの優れた音響で聴くことができた。津野米咲のリクエストでスタジオ内の明かりを落とし、目を瞑りながら全15曲を1曲1曲噛み締めるようにして聴く。

M1「NOW ON AIR」から広がる決定的なまでに大きく開かれたポップネスを浴びて大きく首肯していると、M2「絶対的な関係」の1分40秒で駆け抜けていくロックバンドとしての無軌道な迫力に思わず笑みを浮かべながらおののく。以降、楽曲ごとにめまぐるしく興奮や緊張や安穏や歓喜や恍惚や感動が押し寄せては、“おい、赤い公園、とんでもない大傑作を作り上げたな”という思いの確信が強まっていく。間違いなく津野にしか書けない“最強のラブソング”であるM3「108」。童謡のように優しく切ない歌心に心和むM4「いちご」。若さという今しか装備できない武器を手に、生気溌剌たる軽快なサウンドを鳴らすM5「誰かが言ってた」やM11「楽しい」。抒情だけに頼らないポップスをクリエイトする津野の作家性と、ロックバンドのフォーマットに身を置きつつ、方法論に捉われない音楽性を体現するアンサンブルの振り幅が光るM8「TOKYO HARBOR feat.KREVA」とM10「サイダー」。精神の深淵な闇を見たうえで、よくぞこんなに美しい歌を救い上げた、と強烈に胸を打たれるM6「私」、M7「ドライフラワー」、M14「風が知ってる」。初めて赤い公園を聴いたときの、まるでロックとポップの次元がひっくり返るような高揚感に満ちた驚きを鮮明に思い出すラスト「木」。津野自身は、指摘するまで無自覚だったが、本作にはさまざまな筆致で綴られたラブソングが数多く連なっていることも特筆したい。以前はあれほど“書き方がわからない”と言っていたラブソングを。

津野米咲の才能は最初から傑出していた。藤本ひかりと歌川菜穂のリズム隊は、いつまでも奔放なマインドで津野がクリエイトする楽曲を演奏できる喜びを放出する。そして、津野の楽曲を世界中の誰よりもフラットな姿勢で対峙し、飲み込み、まるで憑依型の女優のように底知れぬすごみを代弁する佐藤千明の歌唱は、いよいよそのポテンシャルを覚醒させたと言える。本作でバンドは、至極いびつで魅力的な四角形から成る音楽の遊び場に、積極的な姿勢でプロデューサーとして亀田誠治、蔦谷好位置、蓮沼執太、客演にKREVAを招いた。そう、大衆音楽の可能性と黄金律を知り尽くし、あるいはアカデミックな視点で音楽の本質的な自由度を理解しようとする探究心を持ち合わせている先人たちだ。バンドは、プロデューサー陣に自分たちが秘めている才腕の発揮方法を導いてもらい、またKREVAには「TOKYO HARBOR」という赤い公園流のシティポップとも言える楽曲にさらなる彩りと潤いを与えてもらった。制作に流れる豊かで刺激的な時間は、彼女たちにとってまさに『猛烈リトミック』だった。

1stアルバム『公園デビュー』が、赤い公園という音楽の遊び場における出口なき広大な敷地と基礎構造を示した作品とするならば、本作『猛烈リトミック』ではその敷地内にブランコや滑り台や砂場だけでなく、ジェットコースターもおばけ屋敷も洗練されたカフェテラスまでも設置している。それらの遊具やアトラクションは一風変わった形状や趣があるけれど、誰もが快哉を叫ぶほど遊べ、ひっきりなしに感情の機微を揺さぶられる。彼女たちは、こんなにも童謡も歌謡曲も前衛的なポップスも同時代のロックも愛し、愛されている。アバンギャルドとポピュラリティが均等に溶け合い、本当の意味で革新的なポップミュージックとは、こういう音楽を指すのだ。今作の制作でバンドが得たポップミュージックの希望と真理は、僕らリスナーにとってのリトミックとしても機能する。決して消えない童心の光と影を胸に、赤い公園はあまりに幸福な音楽の遊び場になっていく。


津野米咲  (Gt)

大人が知ってる自由はもっと自由だった

やった! ついに完成しましたね! 2ndフルアルバムでこんなにいい作品ができちゃっていいんですかね?って自分でも思います(笑)。でも、これから先どうしようというよりも、さらに楽しく音楽と付き合っていけるなって思うんですよ。すべての面においてちゃんと進化しましたね。楽曲もそうだし、メンバー1人ひとりもそう。1stフルアルバム『公園デビュー』はセルフプロデュースで作って。それまでライブでやってきた曲を忠実に音源化しようと思ってあまり音を足したり引いたりせず、ライブハウスを主戦場にしている自分たちのいい音源集にしたいと思ったんですね。今作もセルフプロデュースで作ろうと思えば作れたとは思うんです。でも、普段の私たちを見てもらえばわかると思うんですけど、このバンドは楽しそうな人たちや場所があるとホイホイついていくので(笑)。それくらい純粋な気持ちでプロデューサーのみなさんに会いに行って、門を叩いて、扉を開けてみたら、発見や学べることがいっぱいあったんですよね。私たち自身はずっと自由に音楽を作ってきたつもりだったけど、亀田さん、蔦谷さん、蓮沼さん、客演でラップしていただいたKREVAさんも??大人が知ってる自由はもっと自由だった。

10教わったことが、何も損なわれずにキラキラと曲に表れてる

今回、プロデューサーのみなさんを“先生”と呼んでるんですけど、制作を思い返すと彼らがOBのようだったなって思うんです。10年、20年、30年前に、今の私たちが過ごしている日々を卒業した方たちなのかなって。粋な音楽の遊び方をたくさん知っていて、遊びに行くときの持ち物も気持ちのもっていき方も帰るべき時間も熟知してる。繰り返し学習ってあるじゃないですか。何回も書いたり、口に出したりして覚える作業。だいたいは1回10教わったら、次の日の朝には8まで覚えてる。残りの2を補うためにまた次の日に同じことを学ぶんだけど、今作の制作を通してみなさんに10教わったことが、次の日も鮮度はそのまま損なわれずに、キラキラと鮮やかなまま自分たちのフィルターを通して曲に出てるなって思うんです。ちゃんと学べて、ちゃんと遊べてるなあって。ホントに幸せな『猛烈リトミック』でしたね。

ズバ抜けて華やかでグッとくる曲がほしかった

全15曲、確かにすごい振り幅ですよね。今まで作ってきた曲だって方向性が違う曲だらけだったけど、シングルとしてリリースされた「風が知ってる」、「ひつじ屋さん」、「絶対的な関係」だけでもさらに違うベクトルに向いてる曲だなって。だから、自分でも“この3曲が入るアルバムってどうなるんだろう?”って全体像が想像つかない時期もありました。でも、その3曲の共通点を考えたら、すべてがそれぞれの方向に行ききってるんですよね。まさしく猛烈に。そうなると、3曲だけ行ききってるのも癪だから、全曲行ききってるアルバムを作ろうと思ったんです。そのなかで、ズバ抜けて華やかでグッとくる曲がほしかったんですね。言い換えれば、純粋にJ-POPとして素晴らしい曲を作りたいって。1曲でもそういう曲がないとこのアルバムは成り立たないと思った。そうやってできたのが「NOW ON AIR」だったんですよ。

自分の好きな音楽のためにラジオを守りたい

この1年でメンバーと一緒にいる時間も増えて、みんなそれぞれいろんなことを考えるようになって、やっとちゃんとバンドになってきたなって思ったんですよね。今だったら「Joy!!」(津野がSMAPに提供した楽曲)のように素直にJ-POPとしていい曲ができたら赤い公園で鳴らしたいと思えるようになった。それで、1人でスタジオを借りて、1つずつ楽器の音を重ねていって、最後にマイクを立てて、テキトーな歌詞で歌ってみたら出てきた言葉が〈レディオ〉だったんですよね。なんで〈レディオ〉って出てきたかわからないんですけど、ラジオは学生のころから大好きで、私はラジオで未知の音楽と出会うことをずっと大切にしてきたから。ラジオは邦楽も洋楽もときにはアマチュアバンドの音源にも突然出会えたりするじゃないですか。ラジオを通して聴こえる独特の音質も大好きだし。だから、世の中の人たちに向けて“ラジオ離れするな!”っていう思いが出たんじゃないかなって。でも、それって結局、自分のためなんですよ。自分の好きな音楽のためにラジオを守りたいと思ってる。大勢で歌えるようなメロディを持っているこの曲が音楽の素晴らしさも伝えられる曲にしたい??。〈レディオ〉というキーワードと一緒にそういう使命感が湧き出てきたのかなって。“私がやならきゃ誰がやるんだ!”っていう。だから、普段は絶対に書かない〈他愛もないヒットチャート〉とか〈ぱっとしないヒットチャート〉っていうフレーズも出てきたと思うんですよ。

リスナーにとっても『猛烈リトミック』が楽しい教材になればいいな

去年、活動を休止して再開して『公園デビュー』を作ってリリースするところまで急ピッチで仕事に戻ってきた感覚があったんですけど。あれから1年、休止前よりもいろんなものを見て、いろんなことを知って、ライブも数多くやって、いままで以上に音楽を好きになった自分がいるんです。例えば亀田さんと一緒に制作することで、以前の自分ならどんなに頭を捻っても思いつかなかったアイデアが出てきたり。そんなに神経質にならなくてもいいんだなって思えたり。絶え間なく発見と勉強が続いてる感じなんですね。そうなれた自分のこともすごく好きになれた。今まではどこかで“自分は作曲家としてこうありたい”という枠組みを決めていたと思うんですよね。それを壊そうとするものを避けたり、逃げていたことに気づいて。究極的には本当にいい曲って、誰が演奏して、誰が曲を書いて、誰が歌って、誰が編曲してるなんて関係ないはずじゃないですか。私は『猛烈リトミック』というアルバムを作ったことで、赤い公園という無敵のバンドで音楽をやっていることに誇りを持ちつつ、作曲家としてそういうシンプルな考え方に立ち返れたんですよね。それは今後の赤い公園にとってもすごく大きいです。リスナーのみなさんにとっても『猛烈リトミック』が楽しい教材になればいいなって。何かを発見してもらうことって、すごく素敵な勉強だから。


毎日1曲づつ解説を公開予定!!お楽しみに!

① NOW ON AIR
とにかく私たちの音楽に対する純粋な愛とメッセージが詰まった曲です。そのひとことに尽きますね。

② 絶対的な関係
お母さんのような気持ちになって言うと(笑)、ここまで思いきった曲が書けてよかったと思える曲ですね。ちゃんと挑発的にロックできてる。この挑発的な曲に、私たちはたくさんの出会いをもらいました。

③ 108
言ってもらったように、私が書ける最強のラブソングだと思います。ライブでやるのが大変だと思いますけど、がんばって練習します(笑)。

④ いちご
私、この曲が大好きで。自分もこういうラブソングが書けるようになったんだなって。好きな男の子がいて、その人とこれからどうなっていくんだろう?って想像して、ドキドキしながら待ってる女の子の気持ちをショートケーキのいちごにかけてみました。

⑤ 誰かが言ってた
この曲は、具体的に言うと坂本九さんみたいな曲が書きたかったんです。私なりの「上を向いて歩こう」みたいな。何もかもうまくいないときもあるけれど、〈「素直になりなよ」と誰かが言ってたなあ〉っていう。そう言ってもらえるのも音楽のいいところだと思うので。

⑥ 私
オリジナルを作り始めて3曲目にできた曲ですね。1、2曲目は音源化してないので、実質、最も古い曲です。どうしてもこのアルバムに入れたかった。今の自分たちがこの曲を鳴らしたらどうなるか知りたかった。

⑦ ドライフラワー
活動休止中、精神的にもうなかなか行けない地獄の底みたいな場所に滞在している時期に書いた曲です。でも、すごく美しい曲なんですよね。本気でどん底を見たからこそ書けた、救いの光みたいな曲だと思います。

⑧ TOKYO HARBOR
2年くらい前に“大人っぽい曲を作りたいね”っていう遊び半分の気持ちで書いた曲なんですけど、どんどん愛着が湧いて、どんどんいい曲に育っていって。最後は背伸びしても届かなかった大人の部分をKREVAさんのラップが広げてくださいました。KREVAさんのおかげで、この曲に見合うような大人になりたいと思う素敵なラブソングになりました。

⑨ ひつじ屋さん
アルバムに入ったことで気づく方もいると思うんですけど、実はこれもラブソングなんですよね。みんな音に騙されすぎ!(笑)。ひつじ屋さんという、架空の職業の添い寝屋さんに対する隠しきれない気持ちがあふれている超かわいい曲です。

⑩ サイダー
この夏、初めて夏っていいなって思えたきっかけの曲です。レコーディングしながら、ライブしながら、経験した青春の日々も経験してない想像のなかの青春の日々も閃光みたいにパーッと光って。学園モノのキラキラしたラブソングですね。

⑪ 楽しい
ただただ楽しいまま始まって、楽しいまま終わる、ホントに楽しい曲です。

⑫ 牢屋
売れないバンドマンと付き合ってる女の子を想像して書いた曲です。女の子ってどうしても男の人に尽くしちゃう部分があって。自分でもバカだなって思うんだけど、“おいでよ”って言われたらその人のところに行ってしまうような。それって抜け出せない牢屋みたいな日々だなって。

⑬ お留守番
これも古い曲ですね。私、小さいころから留守番がすごく苦手で。この場合は算数ドリルなんですけど、何かをしてもすぐ終わって暇になって眠れない時間がやってくる。そうなると考え事をするしかなくて。そうしてる間に眠りに落ちて白昼夢を見るような瞬間を表現できたらいいなと思って。蓮沼さんの力をお借りして、見事に表現できたと思います。

⑭ 風が知ってる
ひとことで言わせてもらうと、いい曲ですね。すべてが最高にいい塩梅で成立している名曲だと思います。アルバムを聴いてこの曲のファンがまた増えるといいな。サウンドも終わりが近づいてくることを予告するような音で。だから、最後の1つ前の曲にするって迷いませんでした。

⑮ 木
赤い公園が演奏して、歌ってカッコいいと思うものをストレートに表現した曲です。本を閉じるときって、パタンって無機質な音が鳴るじゃないですか。それを表せたらなって。あと、熱心なファンの方は気づくかもしれない“ある秘密”が隠されてます。


亀田誠治先生より

② 絶対的な関係
この曲は2分間マジックです。
ぼくの音楽人生の中で出会ったいちばん短くて、いちばん強い曲。
気がつけば、千明ちゃんの歌に手品ように翻弄されているのです。

④ いちご
「泣ける曲だね」といいながら気がついたら、ほんとうに泣きながら作ってました。
こんなメロディーと言葉が紡げるのは赤い公園だけだよ。
「このいちごって僕みたいだ!」って言ったら「かめださんカワイイ」とメンバーみんなキャアキャア笑っていました。

⑤ 誰かが言ってた
たとえば絶対的な関係のようなカミソリのような「刹那感」とこの「誰かが言ってた」のようなマシュマロのような「優しさ」が同じ空気で吸い込めるのが赤い公園のカッコよさだと思う。
菜穂ちゃんとひかりちゃんのリズム隊かっこいいぞ!

⑩ サイダー
「かめださん。この曲、けいおん。女子高生、胸キュンだから。」
米咲ちゃんの言葉はいつも的確だ。
夏、音楽、友達、今を精一杯生きている人に届けたい、
大切なものが全部詰まっている
素敵な音楽飲料です。

⑭ 風が知ってる
赤い公園とはじめてレコーディングした曲。
そして、僕が今までの人生で出会った中で、最も美しい曲。
この曲に出会えてよかった。
棺桶まで連れて行きたい曲です。
僕が死んだ時はこの曲をかけてください。


蔦谷好位置先生より

① NOW ON AIR
僕がプロデュースした曲の中では一番最初にレコーディングしました。
技術的なことよりとにかく「(魂を)入れろ!」と、これを連発していましたが、非常にいい雰囲気の中、メンバー入魂の演奏が録れたと思います。

③ 108
僕が参加した曲の中でこの曲が一番好きです。
最高のラブソングだと思います。
まさに釈迦に説法な歌詞ですが、これってまさに真理ですよね。

⑦ ドライフラワー
津野米咲の作曲家としての才能が遺憾無く発揮されたとんでもない名曲だと思います。
ストリングスの弦一徹さんが「(作曲の)センスがうらやましい」と言っていたのが非常に記憶に残っています。


蓮沼執太先生より

⑬ お留守番
新米先生の蓮沼執太です。
「お留守番」はちょっと哲学的に、赤い公園の新しい引き出しを作りました。
よりリトミック的に。

嶋津央先生より

⑥ 私

この曲に出会ったのはもう2年前になります。
その時に夢想した理想が今ここに実現した事が本当に嬉しく、運命的にさえ感じられ、感慨深いです。
すごいぜ赤い公園!

⑪ 楽しい

タイトル通りのおもちゃ箱をひっくり返して爆破したような曲です。
コーラス参加してくれた爆弾ジョニーがとにかくうるさかったのが思い出です。


●「純情ランドセル」オフィシャルインタビュー、全曲解説(特設サイト(現在閉鎖)より引用)

やっぱり赤い公園は音楽に誠意を示して、音楽に褒めてもらうことしかできない
そういう意味での“純情”でもあるんです

そもそも筆者は最初から赤い公園という存在自体が、発明のようなバンドだと確信している。まず、津野米咲という誰よりも音楽を愛し、音楽に愛されようとする傑出した音楽家がいる。彼女がクリエイトする、バンドミュージックとしてあまりに一筋縄ではいかない構築美を追い求めポップの真理に手を伸ばす楽曲を、なんとも天真爛漫に体現する佐藤千明というボーカリスト、藤本ひかりというベーシスト、歌川菜穂というドラマーがいる。そのバンドのあり方に覚えるある種の違和感こそが、デビュー当初の赤い公園の中毒性を担保していた。
彼女たちはそういった中毒性を損なわずに、作品を重ねながら音楽的なコミュニケーション能力をいかに高めるかという命題と向き合ってきた。それを結実させたのが、前作『猛烈リトミック』であるのは間違いない。あるいは、赤い公園は『猛烈リトミック』で、真の意味で大衆にコミットする切符を手に入れたとも言えるだろう。
『猛烈リトミック』から約1年半ぶりにリリースする3rdアルバムに彼女たちが冠したタイトルは『純情ランドセル』。『公園デビュー』に始まり、『猛烈リトミック』を経て、彼女たちはここで“真っ赤なランドセル”を背負った。本作に収録されている全14曲を聴いて、赤い公園を評するにあたって“複雑で難解だけどポップ”みたいな前口上はもう不必要だと思った。それほど、赤い公園の独創的かつ純真なポップミュージック像は、スタンダードなものになった。津野米咲が綴る歌詞も本当に素直な筆致になった。それと同時に本作で獲得したのは、赤い公園の音楽像はどこまでも、いつまでも、自由であれるという確証だ。
赤い公園のオルタナティブ性が成熟していることを示す「ボール」。東京という街を擬人化し、そこに生きる市井の人々の暮らしを、西東京で生まれ育った赤い公園なりの視点で切り取る「東京」。情感豊かなポップミュージックの地平に立ち桜の季節とその刹那的な記憶を紐解く「Canvas」。「東京」のアンサーとして地元をレペゼンしながらノイズを撒き散らし疾走する「西東京」。ジャジーなフィーリングを擁したアーバンポップで切実な恋愛模様を描く「ショートホープ」。現行のUSインディにも通じるサウンドプロダクションで白昼夢のなかで浮遊する歌をサビで解放するワルツテイストの「デイドリーム」。無邪気にして狂気の和製アヴァンポップとも言うべき「喧嘩」。小粋な音楽共同体でありたいという赤い公園のバンドイズムを決定的に形象化した「KOIKI」。その「KOIKI」で見いだした他者のために捧げる歌の尊さを、ダンスクラシックを彷彿とさせるアプローチで開花させた「黄色い花」。深淵なひずみを抱えた静謐な歌を、まるで賛美歌のように差し出す「おやすみ」——。 
亀田誠治、島田昌典、蔦谷好位置という日本を代表するJ-POP マエストロと會田茂一、PABLO a.k.a. WTF!?というロックバンドのエッジを存分にきかせる強者がプロデューサーとして顔をそろえているアルバムはなかなかないだろう。しかし、それが必然的に思えるのは赤い公園の音楽性がまったく底知れないからだ。また本作はニューヨークでマスタリングを実施。マスタリングエンジニアは、多数のグラミー受賞作品を手がけているトム・コイン。メンバー全員で渡米し、マスタリングに立ち会った。津野いわく「ミックスの時点で完璧な状態なんだけど、トム・コインさんのマスタリングでさらに想像もつかない素晴らしい音像の世界に連れて行っていただきました」。
赤い公園がひっくり返すロックとポップの次元は、リスナーをあらたなポップミュージックのスタンダードへ導く通学路にもなった。それが、この『純情ランドセル』というアルバムである。


津野米咲インタビュー

心を込めて作ることができた

この2月にデビュー4周年を迎えました。デビューから4年経過して、現実の課題の多さがすごく愛おしく思えるんですよね。個人的にバンドの状況であれ、評価であれ、その都度見えていないことを不安に思うという“結末を早く知りたがる女の子っぽさ”みたいなことから、このアルバムを作って脱却できたと思うんですよね。それはバンドの4分の1である自分をちゃんと認めることができたからで。私は彼女たち(3人のメンバー)に“しっかりしろよ”と思いつつ、彼女たちに憧れていた部分があって。“この3人はすごいんだ”ってアピールしたい気持ちのなかに私自身もやっと4分の1として入り込むことができたと思うんです。そのうえで赤い公園というバンドの魅力をしっかり気持ちを込めて示したいと思ったんですよね。
『猛烈リトミック』がしょっぱいものも甘いものも食べられるバイキングのようなアルバムだとするならば、今作はコース料理をしっかり堪能できるアルバムだと思います。今までどうやったらそういうアルバムを作れるのかわからなかったけれど、ようやくそこに着手できたなと思いますね。『猛烈リトミック』が日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞いただいて、その次のアルバムでここまで音楽に対して忠実で素直なコース料理のようなアルバムを作れたことが誇らしいです。メンバーみんな口をそろえて“心を込めて作ることができた”と言っています。それがすごくうれしかったです。
何より歌が変わりましたよね。特に歌詞が変わったと思います。苦手としていたラブソングが書けるようになった『猛烈リトミック』から、さらに歌詞を素直に楽しく書けるようになったんです。たとえば1曲目の「ボール」みたいな、いかにも赤い公園らしい曲も“これがポップなんだ!”と信じ、心を込めて届けたいと思える。歌詞も含めて無理やり書いた曲はひとつもないです。自分が勝手に難しいと捉えていた思い出や情景や心情って、難しい言葉でしか表現できないような気がしていたけど、それって実は意外と普遍的なものだなということに気づいたんですよね。
それぞれが個性的な音楽観を持っている5人のプロデューサーに参加していただけて赤い公園はホントに幸せなバンドだなと思います。プロデューサーとの作業はどんなときも勉強になるから、発見ばかりあって。そして、みなさんからの愛情のこもった“売れてくれ!”という気持ちを受け取ってます。だから、甘えっぱなしではいけないし、絶対にちゃんと結果を出すぞと思ってます。
赤い公園はハタチのときにデビューして、当時から年齢的には大人だったんですけど、それでもずっと子どもっぽさを武器にしていたところがあったと思うんですよね。でも、このアルバムでランドセルを背負って大人の世界に入学するような気持ちもありますね。それに、このアルバムは“小粋でいたいのだ”と歌うことから始まってますから。腹が決まりましたね。やっぱり赤い公園は音楽に誠意を示して、音楽に褒めてもらうことしかできないんだと思うから。そういう意味での“純情”でもあるんです。とにかく多くの人に聴いてもらいたい――今一番言いたいのは、シンプルにそれだけですね。


津野米咲による全曲解説

1「ボール」作詞/作曲:津野米咲 編曲:島田昌典、津野米咲

この曲のコード感は私の得意としているところだし、赤い公園の王道と感じてもらえるような曲を1曲目にもってこようと思いました。黒盤(『透明なのか黒なのか』)から聴いてくれている人は特に王道を感じてもらえると思います。歌詞はあたりまえのことを書きたかったんです。“あとちょっとのところで上手くいかないことってよくあるよね”ということだったり。アクティブな神様がサッカーをするように、私たちは運命を転がされてるなって思うんですよ。よくも悪くも、それには逆らえないという曲ですね。


2「東京」作詞/作曲:津野米咲 編曲:亀田誠治、津野米咲

西東京で生まれ育った私たちには、くるりの「東京」のような地方から上京した切なさを歌うことはできないわけで。そこで思ったのは、東京は何かをがんばるために存在している街だから、東京に対して“ただいま”って言う人って少ないんじゃないかなって。そんなことを思ってクルマに乗りながら首都高から東京タワーを見たらすごく切なくなったんです。東京タワーは高いところから、それぞれの故郷に帰って“ただいま”と言う人たちを見守ってるんだなって。メロディは素朴で、“AメロBメロAメロBメロサビサビ”という構成も挑戦でした。最後にちーちゃんが〈東京〉と歌うボーカルがすごくカッコよくて、いい曲を作れたなと思いましたね。


3「Canvas」作詞/作曲:津野米咲 編曲:亀田誠治、津野米咲

この曲は2014年の亀田さんのお誕生日プレゼントとして、いつもお世話になっている感謝を込めて私が勝手に書いた曲なんです。でも、歌詞は原曲とは全然違っていて。もともと〈僕のキャンバスに消しゴムはいらない〉というフレーズがあったから「Canvas」というタイトルだけ残ったんですね。結果的に桜の曲になったんですけど、私にとっての春の風景って音が一切ないんですね。風が吹いて桜の花びらが舞い散る風景って、ちょっと苦手だなとさえ思っていた。それはなぜだろうと考えたときに、春って自分の都合をよそにやってくる季節なんだと思ったんです。だから、今までの自分の人生で個人的に春だなと感じた瞬間をそのまま歌詞にしようと思って書きました。リズムは4つ打ちなんですけど、アルバム全体的に跳ね系のビートが多いなか、「Canvas」は日本人が“イチ、ニ、イチ、ニ”って気持ちよく歩けるようなテンポ感にしたいなと思ったんですよね。


4「西東京」作詞/作曲:津野米咲 編曲:會田茂一、津野米咲

私たちの地元の“西東京あるある”を曲にしました(笑)。西東京を知らない人たちには意味がわからないと思うんですけど(笑)、自分たちならでは言い回しで、自分たちの青春をバーッと歌ってる曲があってもいいじゃないかと思ったんですよね。アルバムタイトルに“純情”という言葉を付けるなら、これを書かずにして何が“純情”だと思って(笑)。「KOIKI」もデモの段階ではもっとテンポが遅かったし、長らくBPMがここまで速い曲を作る気になれてなかったんですよ。でも、唯一これは速い曲にしなきゃいけないと思ったのが「西東京」でした。メロディと歌詞が迷いなく一緒に出てきたんです。ちーちゃんはテンポが速くなるとボーカルが自然とハスキーになり、巻き舌にもなるんですけど、そのカッコよさが遺憾なく発揮されてますね。


5「ショートホープ」作詞/作曲:津野米咲 編曲:蔦谷好位置、津野米咲

無自覚なんですけど、私が打ち込みで作るデモのリズムって難しいらしいんですね。それで、シンプルなリズムの曲を作ろうと思って、スタジオに入って自分でドラムを叩くところから始めて。「NOW ON AIR」もそうやってできた曲なんです。自分でドラムを叩いて、ベース、ギター、キーボードを重ねて、最後にメロディを付けて。どういう歌詞にしようか考えながらとりあえずタバコを吸ったんですね。でも、ショートホープだから歌詞のアイデアが思いつく間もなく吸い終わってしまって。“ホントに短いタバコだな、ホープなのにショートだな”って思った。それがそのまま歌詞のアイデアになったんです。私自身、ついつい先のことを考えてしまう性格だけど“今だけでいい”って思うことってたくさんあって。恋愛でも“今だけでいいから一緒にいたい”って刹那的な感情になることもあるし。でも、それはきっと私だけではないですよね。サウンドとしては「TOKYO HARBOR feat.KREVA」にも通じる、私のコアにあるブラックミュージックしかりアーバンな音楽性を滲ませられたなと思います。アウトロはみんなでジャムって作ったんです。蔦谷さんのピアノソロがめちゃくちゃカッコいいですよね。


6「デイドリーム」作詞/作曲:津野米咲 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?、津野米咲

私自身、何回もリピートするくらい大好きな曲です。これは活動休止中に作った曲なんです。2012年の大晦日にデモを作って、2013年の元日にみんなにデモデータを送ったんですよ。デモはもっと暗くて切ない感じでした。PABLOさんと一緒に歌詞の推敲とアレンジを考えて。その作業の高揚感は特別なものがありました。自分が作るこういうワルツっぽい曲がすごく好きなんですよね。曲の折り返し地点がない感じがして。メロディもシンプルで大好きです。


7「あなたのあのこ、いけないわたし」作詞/作曲:津野米咲 編曲:島田昌典、津野米咲

歌詞のポイントとしては嫉妬に狂った危ない女の歌をポップに書いてることですね(笑)。でも、女の子ってそもそもそういう生き物だから。それをわざわざドロドロ書く必要もないなって。学生時代に好きだった人の彼女って、だいたい私とは逆で背が低くて、性格もふんわりした感じの子が多くて。どうがんばってもそのシーソーがひっくり返らない感じにモヤモヤしたりすることが多かった。生々しい内容の歌詞ではあるんだけど、サウンドがポップだから許されるというのもあると思いますね。そのあたりはaikoさんを見習ってるところがあるかもしれない。aikoさんって重たい内容の曲であればあるほどアップテンポにしていると思うんですよね。


8「喧嘩」作詞/作曲:津野米咲 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?、津野米咲

これも活動休止中に作った曲です。デモの段階ではリズムは付けてなかったんですけど、軍歌や民謡みたいな2拍子の曲がいいなと思って。右側から聴こえるギターは私が弾いていて、左側から聴こえるギターはPABLOさんが弾いてます。“よっしゃ、喧嘩しようぜ!”って言いながら適当に弾くみたいな。PABLOさんいわくこの曲は“猫の喧嘩”。じゃれあってると思っていたら、いつの間にか本気で殺しあってるみたいな(笑)。でも、それってすごく赤い公園らしい無邪気なえげつなさがあるなと思って。途中に入る語りの部分でみんなの喧嘩の売り文句があまりにヒドくて、ピー音がいっぱい入ってます(笑)。


9「14」作詞/作曲:津野米咲 編曲:赤い公園

人の曲を聴いて“そんなに難しくなくていいのにな”と思うことがいっぱいあるんですけど、いざ自分が作る曲では恥ずかしくてシンプルに作れないクセがあって。それが私の強みでもあり弱点でもあると思うんですけど、この曲では“赤い公園ってどんなジャンルですか?”と問われたときに“J-ROCKです!”ってスパっと答えられるような、シンプルなロックサウンドを鳴らしたかったんです。いざそういう曲を作ってみたらすごく気持ちよかったですね。セルフプロデュースで、ストレートに中二病のロックを表現してみました(笑)。


10「ハンバーグ!」作詞/作曲:津野米咲 編曲:亀田誠治、津野米咲

今作のなかでは一番『猛烈リトミック』のムードに近い曲かもしれないですね。いかにも赤い公園らしく“おもちゃ箱をひっくり返したような曲だね”というサウンドで、そこに私のマザコン感が満載の歌詞が乗っていて。バンドのリーダーでもなく、ギタリストでもなく、ただのお母さんの娘である自分がこの歌詞にいますね。エレピも私が全部弾いていて、アウトロのギターも気に入ってます。


11「ナルコレプシー」作詞:津野米咲、藤本ひかり 作曲:津野米咲 編曲:亀田誠治、津野米咲

デビュー前の合宿で作った曲です。当時は全然違うアレンジでライブでもやっていたんです。そもそも、ひかりが書いてきた歌詞にサビを付けたことから始まって。身内からの人気がずっと高い曲だったんですよ。“純情”というタイトルとリンクして、やっと曲を入れる場所が見つかったという感じですね。


12「KOIKI」作詞/作曲:津野米咲 編曲:蔦谷好位置、津野米咲

赤い公園というバンドの“宣誓”のような曲ですね。今後の代表曲になったらいいなと思ってます。私の人間としてのあり方を正直に書いた曲であると同時に、バンドとしてもこういう存在になりたいという願いを込めてます。私は人に傷つけられることも人を傷つけてしまうことも重要だと思っていて。その経験をバネに人に優しくできるバンドでありたいと思う。このニュアンスって日本人にしか書けないんじゃないかとも思うんですよ。時間をかけてでもいいから、ひとりでも多くの人のなかに残っていく曲であってほしいと願ってます。“赤い公園は何から聴いたらいい?”と訊かれたときに勧めたい1曲ですね。


13「黄色い花」 作詞/作曲:津野米咲 編曲:亀田誠治、津野米咲

去年の頭に私の大切な人にとっての大切な方が亡くなって。遺された大切な人を元気づけたい一心で書いた曲です。お葬式で亡くなった方に手向けられるいろんな種類の花の色が、全部黄色だったんです。私の大切な人はお葬式でもすごく気丈で。一緒に悲しむのも申し訳ないし、笑わせることもできない、かける言葉もない、でも、その人のために曲を作ることはできると思って。それで曲を作ってデータをDropboxにアップして、そのURLをその人に送ったんです。サウンドがダンスクラシックテイストになったのは、自分が元気を出したいときに聴くのはジャクソン5やジャクソン・シスターズだなと思ったからで。最後のコーラスは、SAKANAMONのメンバーにも来てもらって、亀田さんもうに(井上うに/レコーディングエンジニア)さんもミッツ(赤い公園のマネージャー)も亀田さんのマネージャーさんにも歌ってもらいました。


14「おやすみ」 作詞/作曲:津野米咲 編曲:島田昌典、津野米咲

高校生のときに書いた曲です。私にはずっとなんらかの形で音楽の仕事をしたいという夢があって。明日はその夢に少しでも近づけたらいいなと思う毎日のなかでこの曲を書いたんですよね。でも、その音楽に対する強い思いは今も変わってなくて。だから、私は恋のことを考えながら眠りにつくことは一生ないんだなって思うんです。ずっと音楽に対する夢があり、目標があり、こういう気持ちを持ち続けてるんだと思います。この曲を最後にすることで、アルバム全体が折り返し点のない円のようにすることができると思ったんです。

取材・文/三宅正一(Q2)


●「赤飯」アルバムレビュー(特設サイト(現在閉鎖)より引用)

ALBUM REVIEW by TOMOKO IMAI

ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』でデビューして5年、赤い公園が初のベスト・アルバム『赤飯』をリリースする。小豆の入った赤飯は古来より祝い事に欠かせぬもの。赤い公園にとって大きな節目となる作品のタイトルに、これ以上相応しいものはない。 高校の軽音楽部で藤本ひかり(B)と歌川菜穂(D)、佐藤千明(Vo)が組んでいたバンドに、脱退したギターの代わりに1年先輩の津野米咲(G)が加わり、2010年に赤い公園はスタートした。地元のライヴハウスを拠点に活動を開始し、1年後にはデビューのチャンスを手にいれる。ハイスピードで進んだのは彼女たちが若くて可愛い女の子バンドだから、というだけではなくて、傑出した才能と可能性を持っていたからだ。 津野米咲が作詞・作曲・アレンジも手がける楽曲は、キラッキラのポップさとサブカル度満点の複雑さを持ち合わせ、強がりや不安が入り混じる繊細な感情を歌にする。この5年の間に津野は次々と新たな試みに挑み、そこで生まれたハードルの高い楽曲が赤い公園というバンドを鍛え成長させてきたのだが、ゆるふわリズム隊の藤本と歌川はニコニコと空気をほぐし、素晴らしく伸びやかな声を持つ佐藤が曲の間口をぐっと広げてきた。『赤飯』収録の22曲は、ストイックかつ大胆にバンドを進めてきた彼女たちの足跡である。
初期の楽曲「透明」「ランドリー」は、初々しさのあるポスト・ロックだが、次いでライヴを発熱させたパンク・チューン「のぞき穴」から緊張感のある「今更」「風が知ってる」のシングル3部作は、挑戦的なメロディや曲構成で一筋縄ではいかないこのバンドの個性を、しれっと見せつける。バンドへの注目が高まる中、”窮屈なヒットチャート”も悪くないけどと(「NOW ON AIR」)自分たちの立ち位置を探り、”小粋でいたい”(「KOIKI」)と洒落てみせた。そして足元が固まったところで、アグレッシヴな「闇夜に提灯」、ロマンチックな「恋と嘘」、スケール感たっぷりの「journey」とシングル3連発で攻めたのが、最新作『熱唱サマー』までの足取り。実にいろんなことやってくれたなあと改めて感心したくなるというものだ。

『熱唱サマー』リリースを待たず佐藤が脱退を表明したことも、このベスト・アルバムに繋がっているのだろう。この4人で作ってきた赤い公園は、ここで一つの区切りをつける。22曲入りCDのほか、この4人で臨んだ最後のライヴ「熱唱祭り」を完全収録した映像、全MV集とのパッケージも用意された。『赤飯』は、新しい門出へのお祝いだ。

TEXT BY 今井智子(音楽ライター)


●「消えない - EP」オフィシャルインタビュー
https://www.akaiko-en.com/kienai/ に掲載中


●「THE PARK」セルフライナーノーツ
https://www.akaiko-en.com/thepark/ に掲載中

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?