赤い公園全曲考察66「出鱈目」(KOIKI)

「出鱈目」という曲は、tricotのキダさんがデモバージョンを聴いて衝撃を受けたと言っていて(そのツイートは消しちゃったみたい)、だから存在自体は相当昔からあったはずで、コアなファンはずっと音源化を心待ちにしていた曲でした。そのデモバージョンはだいぶ狂ったことになっていたみたいだけど、こちらも蔦谷さんのプロデュースですごく美しい曲になりました。

津野さんの発言→「これは、音楽的にやってみたいことを全部盛り込んだ、って感じですかね。5年前ぐらいに作った曲なんです。もともとバンド・サウンドではないアレンジだったんですが、打ち込みの魔神「蔦谷さん」に頼んで、ちょっとホントに、海を渡りたい、みたいな感じで、思い切って」

上のインタビューでは、メンバーみんなで歌詞について絵画的とか、森っぽいとか霧がかかってるとか言ってますね。赤い公園の歌詞に何度か共通して出てくる「色」「気体と液体」「身体の部位」「街の風景」みたいなものが、何かの象徴的に出てくるけれど、結局それが何なのかは分からない。家から明かりがこぼれているのに外にいるっていうことは、主人公は一人で誰かを待ってるのかな。「気体の彼女」が誰を指すかも分からないけれど、彼女と言われて想像するのは自分自身か、それともお母さんを待ってるのかなって気もします。「帰りなさいな」と言ってるのに「内の内までもうちょっと」って言ってるところなんかは「塊」と似てる。

別のインタビューでは、19歳の時に駅で電車を待っている時、自分の顔の前の空気を見ていたら「ここには目には見えないものがいっぱいいるんじゃないか」と考えだして、おえっとなって、体を持ってる自分の方を「出鱈目」だと思ったことで出来た曲だと言っている。ちーちゃんは、この曲を最強だと思っていてずっと取っておいたとも言っている。

「KOIKI」との落差がすごいあって、物悲しくて、でも美しくて、こういう表現ができるからシングルCDっていいなって思います。配信シングルだったらこういう曲は聴かれないでしょ。


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